イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第86話『つかめ、春のグランプリ!』感想

『プリパラは一時お休みして、プリリズADとDMFの特別編を始めます!!』って感じの、ぶっちぎりに菱田正和コンテな春グラ本番。
各キャラクターの成長とか、心残りの始末とかを凄まじい圧縮率と勢いで展開する、マジでいみわからんが何となく分かる、プリズムのきらめき濃厚な回でした。
ぶっちゃけ菱田監督にストーリーの舵を任すと、理屈を蹴っ飛ばして高密度・高速度の脳直結系ストーリーを必ず展開するので、今までのテイストと違いすぎねぇ? と思わなくもない。
この圧縮率とロジックの飛ばしっぷり故に、一気に春ドリ終わらせてプリパラ崩壊まで辿りつけたのは、間違いないんだけどね。

最終的に鐘を鳴らしたのはらぁらでしたが、第84話で差し伸べた手を払われてから実は彼女不調でして。
それは『みんなトモダチ、みんなアイドル』という幼い理想を正面から拒否されたり、『ボーカルドールはあかん!』と思っていた気持ちがファルルとすれ違っていたり、幼いままの彼女では解決できない問題が大量に発生したからであります。
幼い万能感だけでは解決できない問題を前に足がすくんでしまったからには、どんな形であれ成長するしか無い。

ここでらぁらの問題を整理し、道を整えてあげる仕事を凡人みれいがやるのは、常に天才の影に追い込まれしんどい立場にいた彼女の見せ場としても、感性の天才にに足らないロジックを補う意味でも、良い掛け合いでした。
お姉さんで、理屈っぽくて、才能のないみれいだからこそ、子供で、直感的で、考えなくても正解にたどり着けていたらぁらには見えないモノが見える。
そして二人はこの物語で一番最初に生まれたトモダチだから、見えないモノを共有して、新しい価値観を生み出すことも出来る。
何かと悩みがち、泥をかぶりがちだったみれいが、らぁらの迷いを晴らす決定的な役割を果たす逆転劇は、彼女らが好きな自分にとっては嬉しかったな。

らぁみれはお馴染みのコンビですが、接点ない所を強引に乗り付けて、最適の答えを引っ張り出してたのが怪盗ナチュラルとプリンセス・ファルル。
『パルプスのマーガレット』という、ボーカロイドになってしまえば一生触れることのできないモノに全てを託して、ファルルの自発的な変化を見守ったふわりの人間力がやべぇ。
『花』がキーアイテムになるのは、のんちゃんから貰ったアネモネをよすがに、人間の心を知っていった一期の展開を彷彿とさせ、ちょっと懐かしくもありましたね。

ファルルがひびきのボーカルドール化に唯一賛成していたのは、自分の同類が生まれ寂しさが埋まる喜びに、凄くイノセントに素直だったからだと思います。
しかしふわりが『パルプスのマーガレット』という活きた存在に託したメッセージを受け取り、自分の寂しさと、ひびきが一線を越えてしまう重たさを天秤にかけ、『自分とおなじになるな』という願いを届ける側に回る。
そこには葛藤と決断があったはずなんですが、今回いろんな事やり過ぎるのでそこは省略でした。
まぁ赤崎さんの熱演と、必要な要素をしっかり選別する選球眼が相まって、ファルルがどういう決意で自分の願いを取り下げたのかは、ちゃんと伝わる展開でしたが。

自分を拒絶する相手を受け入れることを学んだらぁらにしても、自分の寂しさを呑み込んだファルルにしても、幼くて無垢な女の子が成長するお話でした。
子供が何かを学び成長するということは、つまり物語に残されている余白がなくなっていく、ということでもあります。
自分の身勝手な願いが叶わないこともあること、そのために変化することは恐ろしくないということ、自分ではない誰かを認め思いやるということ。
『カオスアニメ』『狂気のネタアニメ』と呼ばれ、実際そういう側面も大量に含むプリパラですが、今回二人の女の子が見せた成長の柔らかさは、やっぱこのアニメが未来に進む存在にしっかりメッセージを伝えようとしているアニメだという、結構確かな証明だと思います。
そういう部分がちゃんとあるの、僕はとても好きです。


その上で。
ぶっちゃけた話、今回終盤のメイキングドラマ(と言うかプリズムアクト)は、あまりにも抽象度の高い演出すぎて戸惑った。
レースという形態で追いつき追い越すライバル関係とか、高め合うことで別の次元に行ける競技性とか、どんなに邪険にされてもひびきを思いやる女の子たちとか、一纏めに出来はするんだけど、色々かっとび過ぎだろ正直。

あえてプリリズと比較して話しますが、『アイスダンスをしていたはずがフルーツが召喚された』という、原因と結果が繋がらない(原義に近い意味での)シュールレアリスティックな論理で物語を展開させてたプリリズを尊重しつつ、『アイドルテーマパーク』というよりコンパクトで身近な舞台設定に移し替え、トンチキなことを時々(けっこう?)起こしつつ、『アイドル』という軸足を外さずに表現してきたのがプリパラだったと思います。
芸術や創作の存在意義とか、人生の痛みとかを女児アニのフレームの中で表現するために、あえて意味論的跳躍を果たしていた結果、『プリズムジャンプは心の飛躍』というキャッチフレーズに繋がったわけで、プリリズ内部においては原因と結果の飛躍は発想のスケールを担保する、肯定するべき動きだった。
んだけど、プリパラは凄く小さく、小学生らぁらの感情をはみ出さず、彼女が出来ることをお伽話で補強しつつ、少なくとも価値観の面ではコンパクトな話を展開していたからこそ、『みんなトモダチ、みんなアイドル』というキャッチフレーズにテーマが集約したと思っています。

とは言うものの、エアリーで空飛び始めた辺りから、ジャンプの浮遊感を人格的跳躍とシンクロさせるプリリズの方法論に接近していくのは、ある意味運命だったのかなぁ……。
個人的な嗜好としては(ネタ方向の表現はぶっ飛ばしつつも)、感情の地面に足をつけて『飛び過ぎない』スケールがプリパラらしさだと感じていたので、アイドルやってたら急にエアレースになっちゃった今回の飛躍は、ちとやり過ぎだった気もします。
飛んだからこそ圧縮し、熱を高め、同時並列的に様々なことを入れこむ多面取りができてるってのは、間違いないんだけどね……難しい。
最終的にらぁらが仲間たちの後押しで最強の羽根にたどり着き、ひびきが一度感じた『自分にとって最強の敵』という予感を実現しちゃう流れとかは、きっちり伏線をもぎ取るパワーが有って好きです。


これはテーマ設定や表現から離れたストーリー展開の部分ですが、今回跳躍に跳躍を重ね、力と才能でひびきを打ち負かしても、彼女は自分の落ち度を認めはしませんでした。
戦いに勝とうが、超レアコーデをゲットしようが、彼女の歪みとその原因である傷は、らぁらには直せなかった。
そういう意味では、ひびきがプリパラに与えた影響や彼女が積み上げてきた感情、それを受けてひびきを呼び戻そうとする友たちの姿を上手く総括しつつも、レースそれ自体が直接的に事態を解決するわけではないのです。
ここら辺、アーティストではなくあくまでアマチュアアイドルである、プリパラらしい展開だと思います。
まぁまほちゃん助けたかったのらぁらだけではなくて、あの場にいた九人全員そうだからな……ひびきが拘っていたステージでの勝敗が、ひびき自身を変化させる決定打足り得ないってのは、皮肉だし面白いところだ。

『勝敗が全て、才能が全て、勝ち負けが全て』というセレパラ主義がひびきの真実ならば、今回の負けを彼女は受け入れ、話は収まるべきところへ収まっているはずです。
しかし、そうはならなかった。
それはひびきが求めているものが、これまで彼女が口にしていたものではない(『全てが偽り』という彼女の言はまさしく本当であった)ことの証明な気がします。
勝ち負けではない、才能でもないものを求めている彼女に、本当に必要な物を与えられるのは、今回主役たちにステージを譲ったふわり……とあじみ……? でしょう。

ファルルの魂を無言で救ったふわりさんの人間力は疑いようもねぇんだが、あじみちゃんに関してはことここに至っても、製作者がコントロールしきれるか、どうしても図りかねる。
『唐突にシリアス顔して、キャラ壊して謝罪』って収め方はまぁしないと思うのだが、ではどうやってあのぶっ壊れ方を維持したまま、自分がひびきに与えた痛みを認識させ、乗り越えるのかは、観客してんだと相当難しそうだ。
そこをすっ飛ばして終わっちゃうと、あじみというキャラに関しても、お話全体に関してもあんましっくりこない気はするんだが……どっちにしても待つことしか出来ねぇな、俺には。
パルプス転地療法で復調し、人間力を極限まで高めたふわり先生に期待しよう……今回も最高のトス上げしてたしな。


そーんなわけで、本当にいろんな事がギュッと濃縮され、キャラもお話も跳躍を果たした回でした。
怒涛の対決の余韻にひたる間もなく、地味に積み上げてきたシステム負荷の伏線が炸裂し、セレパラは消滅っぽい。
今回で白黒付いた勝ち負けをどう活かすかも含めて、プリパラ二年目最終版、どう転ぶのか一切読めませんね。
楽しみです。

……一番幼いがゆえに正解にたどり着いてきたらぁらと、機械故に無垢だったファルルが両方大人になる(≒変化や理不尽、痛みを認識し、対応する手段を学ぶ)展開だったけど、こんなに子供を成長させちゃうと、三年目何やんだろホント。(二年目終わってないのに三年目の心配マン)
お話が広がる余白を作るために成長をリセットすると、色々徒労感凄いしなぁ……。
先週のドロレオ話にしても、完全に燃やしきる勢いで燃料使ってて、色々心配になる。
んだけどまぁ、そういう心配を飛び越えてお話を展開してきたシリーズでもあるので、三年目は三年目で新しいモノを見せてくれるんだろうとも思うのだ。