イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツ!:第175話『叶えたい未来たち』感想

あかりジェネレーション一年半の総決算、SLQC二日目のアイカツでございます。
己の戦いを終えたもの、これから戦場に挑むもの、それぞれの肖像を捉えつつ、彼女たちを支える誰かを濃厚に描く回でもありました。
『これでこのアイカツで描ける百合は最後だ……悔いは残さない!』とばかりにクリティカルな描写が乱発され、酸欠なったわマジ……ていう人は多かったと思う……マジ酸欠なったわ……。
終わるからこそ終わらない未来に視線を据え、真っ直ぐに歩こうとするお話でした。

二日目のチャレンジャーの前に、前回挑戦を終えたリサと珠璃の顔がしっかり描かれたのは、とても良かったと思います。
現状一位でも一切満足することなく、自分に出来ることをやり続ける珠璃は彼女らしい前向きさにあふれていたし、『SLQCはあくまで過程である通過点だが、全力でやり切る意味のある通過点である』という主張、もっと言えば『この通過点に価値がないのであれば、全てがどこかに向かう途中であるアイカツ全てに価値がなくなる』という主張をも、感じ取ることが出来ました。
ラストソングとなるlucky trainの中で"今日の自分にもさよなら あすはきっとまた先へ 原石のジュエルのように 磨き続けてくの"と歌っているように、珠璃のアイカツはSLQCの舞台で終わりじゃ無い。
アイカツ先生を思いっきりやって、それがまた何かに繋がっていって、カメラが彼女を追いかけるのを止めたとしても、元気で楽しい、少し影を宿してそれを乗り越える紅林珠璃として、輝いていてくれるだろうという、希望と期待を抱くことが出来る、ありがたい描写でした。

そして久々の情ハラ。
天才すぎて理解されにくい珠璃と、抜群の言語化能力を持つひなきの組み合わせは、単純に仲が良いとか、幼なじみだったとかを飛び越し、人生を歩いていく上で必要なパーツをお互い補いあうような、強い絆を感じられます。
いや単純に、危なっかしいひなきにベストフィットする相方過ぎてありがたいってのあるんだがな、ひな珠璃を見ていると嬉しくなるのは。
お互いの口癖を真似し合い、リスペクトを素直に表現する真夜中の逢瀬は、彼女たちの繋がりがはっきりと見えて良かったです。


既に自分の武器を獲得し、自分の道を走っている珠璃に対し、リサはまだまだ駈け出したばかり。
ののの気遣いを暖かく受け取り、悔しさを滲ませつつ『これから』のことを考えるリサと、『なりたいじゃなくて、なる!』という一歩進んだ気持ちを表に出したリサの関係が、明確に勝敗を付ける形で一つの終わりに辿り着いたのは、なかなか面白いところです。
半年間の主人公として駆け足で自分たちの物語を作ってきたののリサですが、最後の最後で魂の双生児である甘えから抜け出し、別個の人格として、一人のアイドルとして、個別の夢と願いを抱くことが出来た気がします。
のの単独の"lucky train!"は少し分厚さが足らなくて、その分澄んだ感じが出ていて、聞き慣れたののリサの音楽とは違う表情をちゃんと持っていました。

彼女たちもまた、それぞれ別のものをこのSLQCから受け取り、"もっとその先"を目指して歩き続けていくのだろうという、成長と希望を込めた描き方でした。
アイカツは3月で終わるわけですが、それを前にした物語はこれまでの足跡をまとめ、関係性を再確認する描写を含みつつも、少女たちの人生が先に伸びていく余地を丁寧に描いている。
これまで描いてきた少女たちの夢を、カメラが追いかけなくなったとしても、まるで僕達が歩いている現実のように止まることなく時間は過ぎ去っていくし、アイドルたちは立ち止まることはしない。
永遠に先に進み続ける、希望の物語としてのアイカツを、ラストエピソードにしっかり刻印する気概を、僕はここ最近そこかしこに感じます。

二日目のチャレンジャーたちが全員、アイドル・キャリアで珠璃に劣る挑戦者たちというのは、なかなか面白いなと思います。
走っている時間が少ないからこそ結果を出すことは難しいし、伸びしろもたくさんある。
一年前は3Dステージすら割り振られなかった珠璃が、これほどの強さを発揮して壁として機能することで、ののリサの、まど凛が描かれることはない一年後のSLQCでどういう飛躍を見せるか、想像する余地を残しているかのようです。
描かれることのない物語に手を伸ばすのは、あるいは無様であるいは残酷かもしれないけど、僕はむしろ、創りだしたキャラクターがそれぞれの人生を歩き続ける信頼と確信を感じ取れて、とても好きです。
彼女たちはこれまでちゃんと歩いてきたし、これからも歩いて行くと信じられるから。
まるで手に触るように、描かれることのない物語を想像できるから。
痛いほどの名残惜しさを刻み込まれつつ、僕はアイカツ!にありがとうを言う準備を、ちゃんと出来ている気がします。
それは、とても有り難い物語の終わりなのでしょう。


並んでの挑戦となった天羽と黒沢ですが、二人でしか見せない表情を彩り豊かに切り取りつつ、第171話ではすくい取れなかった関係性に踏み込んだ、良いエンドマークでした。
天羽はアイカツ!世界で許されるギリギリの範囲で黒いというか、柔らかい自分を容易には曝け出さず、ナチュラルに他者と距離を取れる冷静さを持っているキャラだと思います。
今回自室で行われたしりとり会話と、負けん気競争で幼い表情を見せることで、クレバーで自信家でスマートな天羽まどかの地金が、ようやく見えた気がしたわけです。
SkipSの組み合わせが好きな自分としては、それをあかりちゃんの前でも見せて欲しかった……正確に言うと、今回の凛ちゃんのような受け止め方を、あかりちゃんもして欲しかった。

第127話で出会って以来、1年生コンビでありルームメイトとして、セットで描かれることの多かったまどかと凛。
今回彼女たちが見せた柔らかなじゃれ合いは凄く自然で、肩の力が抜けていて、一年間の時間を経て二人の関係性が行き着いた所を、自分的には第171話よりも真摯に切り取れていたように思います。
それはやはり、どんな形であれ優劣がつくシリアスな勝負を前にして、それでもお互い励まし合い、ぶつかり合う関係性が浮き彫りにされたからだと思います。
SLQCという場が用意してくれるシビアさは、少女たちの関係から上手く水気を抜いて、"仲間だってライバル 時には真剣勝負よ(From アイドル活動!)"という理想論に、上手く体温を宿してくれている気がします。
いや、湿気たっぷりのラブラブ三十分もごちそうさまって感じだったけどさ……描写される時間が少ない分、クリティカルなエピソードをコンパクトに打ち込まれたってのは、確実にあるな。

今回一位になれなかった、『負けた』キャラクターの表情が、では『勝った』珠璃に劣っていたのかというとそうではないし、現在一位にいる珠璃の価値がないかといえば、そうではない。
戦いの価値とそこを超えた価値、両方を描くSLQC二日目でした。
アイカツが少女たちの人生を切り取ることをやめても、彼女たちの歩みは続きます。
それは多分、あの子たちが一瞬一瞬を全力で走りきり、真っ直ぐに輝いているからこそでしょう。
紆余曲折ありつつも、あくまでその光を愛し続けてきたアイカツの、ひとまずの終わりに相応しいエピソードでした。

来週は遂に、あかりジェネレーションの核たる二人、スミレとひなきのSLQCです。
ここに至るまで説得力を積み上げてきたステージがどう終わり、何を与え、どのような姿勢で歩き続けて行くのか。
コミュ障の超絶美人と、自分を信じられない秀才が何を見つけたのか。
見守りたいと思います。
正直なことを書くと、『ひなき……お前はもうそろそろ、勝っていいし、自分を好きになっていいだろ……』という気持ちですが、それはひなきが好き過ぎて気持ち悪いオッサンの主観的寝言であります。
イヤでも実際、ひなきは勝っていい、つうか勝って。(結局推しの活躍を望む面倒くさいマン)