イマワノキワ

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アクティヴレイド -機動強襲第八係-:第10話『姿なき征服者』感想

帝都の治安を守る鋼鉄の衛士たちのお話、前回裏切り者を氷漬けにして気勢を上げたロゴスが、本格的に牙をむくエピソード。
坂を転がり落ちるようなスピード感でバードが自首し、ダイハチが解体され、ロゴス本命の作戦が発動するという、いろんな事が起こる回でした。
色んな話をバラエティ豊かにやりつつ、巧みに伏線を積み上げていくアニメなので、今回の怒涛の伏線回収は非常に気持が良かったです。

正直もうちょっとゆったり進めると思っていましたが、会長だけではなくミュトスも自分の地金を曝け出し、ロゴスという組織そのものが最後の勝負に出てきたのは、意外である面白くもありました。
早過ぎる会長の自主と真相暴露は『え、そんなにあっさり?』という驚きがあって、それ自体がミュトスの本命を通す煙幕として機能する展開と、巧くシンクロしてました。
『ウィルウェア犯罪を煽っていた事自体が、情報インフラを抑えるための煙幕』ロゴスの思惑が公開されることで、ここら辺の展開に奥行きが生まれてました。
『愉快犯集団のロゴスだが、しかし侮れない敵でもある』というロゴスの立ち位置を、巧く強化する、視聴者も巻き込んだ美味い詐術だったと思います。

ビルと同時に過去の幻影を消し飛ばし勝負に出るミュトスは、今までのキモさをひっくり返す
良い出陣でした。
悪夢の回想とか交えつつ、今回一話で『あ、なんか色々あったんだな……』と思えてしまう情報の出し方は、流石に巧い。
ここで感情の地金を見せずに冷静なインテリ野郎のままだと、話も盛り上がんないわけで、同じようにメロウになってる黒崎さんと交流を創ってるとこも含めて、キャラの立場に必要な足場をしっかりシーンにしてる印象です。

今回開示されたのは『ロゴスの狙いが何なのか』『これまでの物語はどういうモノだったのか』という『WHAT』の部分であって、ミュトスが『何故ロゴスとして活動していたのか』『情報から日本を制圧して何がしたいのか』という『WHY』の部分はまだ不明。
ミュトスのキャラが見えてきた≒彼に少し共感出来てきた現状だと、一番見たいのは『WHY』に宿る感情なわけで、『擬似家族ビル』とか『デジタル妹』とかインパクトの有るネタでなんとなくの形を見せつつ、肝心なところはきっちり引く作りが良かったですね。
……あの黒沢ともよ声のマルウェアが日本征服のキモっぽいんだが、『仮に生きて成長できていたとしたら、そうなってであろう妹』なのかなぁ。


勝負に出てきたロゴスに対し、ダイハチはあくまで警察組織としてお行儀よく対応というか、組織の枠に縛られて有効打が出ない感じ。
彼らを縛る縄張りと法規の足かせも丁寧に描写してきたものなので、組織の荒波に飲まれてみすみす解散させられ、ロゴスにみすみす王手をかけられてしまう展開にも納得です。
まぁデカいカタルシスの前には、デカいストレス与えないとイカンからね、ダイハチ潰すのは上手い展開ですな。

ダイハチ解散を前に見せる顔がそれぞれ違うのが僕は好きで、意識高い系のポンコツとして物語に入ってきたあさみちゃんが凄いショックを受けたり、いつもの様に軽妙に大人の判断しているように見えて結構グッサリダメージ受けてる黒崎さんとか、それぞれのキャラに合ったリアクションしてたのが良かった。
あさみちゃんはやっぱ第1話の見せ方が良いキャラで、あの時ノリノリでスパイに意識高かった姿が面白く印象に残っているからこそ、今回自分がダイハチ切り崩しの手駒になっちゃった哀しさが、対比でよく刺さる。
他のキャラクターが比較的大人で、つまり変化よりも完成のドラマが主軸になる中、あさみちゃんは根っこは素直な可愛いキャリアとして、変化のドラマを担当してるなぁという感じ。
ロゴスの日本征服計画が加速し、ショック受けてる場合じゃないと思うので、あさみちゃんの復活と逆襲にも来週以降は期待だ。

一方これまで個別エピソードがなかった黒崎さんも、大人しく因果を飲み込みつつ本音が口をついてくるムーブで、秘めた情熱をアピール。
あの人ガサツな部分強調されてたけど、もしかしたらダイハチで一番真っ直ぐな正義漢でして、スマートに生きつつも自分の芯がはっきりとある部分は、これまでも強調されていた所。
ウィルウェア犯罪という新しい脅威に正面から立ち向かい、誰かの平和を守れるダイハチって場所が彼にとって大事だったことが、スマートに辞令を飲み込むスタイルからはみ出していて、なかなか良かったです。
ミュトスもそうなんだが、やっぱクールガイの奥にいる人間が見えてくると、キャラが好きになれるわな。

そんな二人が廃業した銭湯で出会うシーンは、名エピソード第6話でも見せたノスタルジーの巧みな扱いを感じさせ、いいムードでした。
色々積み重ねておとなになって、でも正義の見方を諦めきっていない黒崎さんと、どうやらいろいろあってネジ曲がり、リアルではコミュ障な顔を見せつつパブリック・エナミーと化したミュトスが邂逅するのは、お互いの譲れない部分をうまく匂わせていて良い。
この出会いが巧く生きる決戦への期待も高まるし、高速で事態が滑り落ちていくクライマックスの中で、こういう情感がある場面を作れるのは見事なコントロールやね。

正義と悪、それぞれの組織が追い込まれ勝負に出る、良いクライマックス開始でした。
積み上げてきた物語的ドミノを一気に崩す意外性と勢いの楽しさもあったし、スカした奴らがアツさを見せてくる感情の気持ちよさもあって、このアニメの持っているオーソドックスな楽しさが、良い回転を始めたと思います。
エンジンはかかった、さあどこまでいくんだって感じの機体が、非常に高まってきた。
来週も楽しみです。