イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

灰と幻想のグリムガル:第11話『生と死の間で』感想

遂に作監人数が20の大台に乗った、色んな意味での死闘アニメ、今週は戦闘戦闘また戦闘。
メリイの旧パーティーとの情が絡んだ重たい戦いあり、デッドスポット率いるコボルド軍団との追撃戦あり、戦いの色んな表情を見せる回でした。
街でのまったりした時間と同様、義勇兵にとってはこの死地もまた日常なわけで、少しの休息をはさみつつも矢継ぎ早にアクションが繋がる展開は、息を付かせぬ勢いと同時に、妙なリアリティがあって良かったです。
事態をグルグルと回しながら、前回あまりのウッゼマンぷりに『……死なねぇかな』と正直思ってたランタの機転と絆をしっかり見せて、『あ、死なないで、マジ死なないで』という気持ちになるのも面白いね。

コボルド軍団から逃げ出した場所はメリイの運命の場所であり、マナトの死から張っておいた伏線を活かし、やって来ましたアンデッドパーティー(旧)
過去に直面してパニクってるメリイにはキツいイニシエーションとなりましたが、過去を精算しハルヒロたちと前向きに生きていく上では、どっかで乗り越えなきゃならんからな。
新旧のパーティーを対決させることで、アクションの中でメリイの感情的しこりを解すことも出来るし、各々の役割が有機的に機能しあうチームものとしての見せ場にもなるしで、なかなか面白い戦いでした。

ここの殺陣はとにかく浄化魔法の設定を軸に組み立てられていて、動く死体とはいえ(死体だからこそ?)後味の悪い『殺し』を『癒やし』に帰る感情的な要としても、至近距離でしか発動できないので死者を抱擁する格好になるところも、この戦闘に特殊な味をつけていました。
アバンで生前のやり取りを見せることで、戦闘に漂う濃厚なヤダ味を強調し、それを非常に綺麗で叙情的なメリイのハグ殺でカタルシスに変えるところとか、よく計算されてたなぁ。
戦闘の中に漂う感情をしっかり切り取れているからこそ、それを乗り越えてメリイとパーティーが辿り着いた場所の意味や、やり残したことをやり切った達成感や、意にそぐわない『殺し』を共用される死体を開放してあげた清涼感やらが伝わってくるわけで、みっちりとドラマの詰まった、このアニメらしいアクションです。


後半のコボルド軍団大追跡も、単純なアクションとしての気持ちよさを存分に発揮しつつ、ランタのキャラ性にクローズアップする面白い作りでした。
死体を浄化して『はー、一仕事終わった、良かった良かった』と作中のキャラクターも視聴者も落ち着いたタイミングで、おもいっきり横殴りする始まり方がまず良い。
そしてデッドスポットの巨大感・規格外感が伝わる作画に、数で押してくる相手にチームワークで撤退戦を仕掛ける全体の構図、アクロバットや足場破壊といったバラエティ豊かなアクションで見せる構成。
足を止め、わりかし平面的なパーティーVSパーティーだった死体戦と、常時場面を動かし賑やかに進む追跡戦との対比がよく効いていました。

そしてとにかくランタが良い。
『そりが合わなくても俺たちパーティーだろ、役割果たすのが第一だろ』という自分の言葉を裏打ちするように、『お前はお前だ、マナトじゃねぇ』という言葉でハルヒロの迷いをさらっと打ち払い、シホルのカバーに入ったモグゾー(ここも巨漢故の頼もしさが最大に生きていて、最高だった)の大剣を何も言わず確保し、足場を崩されたハルヒロを引っ張り上げる。
アホで性格最悪で言わなくてもいい事わざわざ口にして空気最悪にするアンポンタンだけど、ずっと一緒に戦ってきた仲間で、ポンコツ駄目人間から少しずつ成長し、義勇兵として頼れる存在へと変化してきたパーティーメンバーなのだと、失って良い人間ではないのだと、最小限に抑えた台詞の中でしっかり表現してきました。

僕達がお話を楽しむ時、それは嘘っぱちのフィクションを読むと同時に、作中に流れるキャラクターたちのナマの人生を追体験してもいます。
だから、彼らが生きている瞬間がどういうものなのか考え、伝わる形式を選び抜き、物語として組み立てることは、作品に対して前のめりになれるかどうか、結構大事なところだと思います。
勿論台詞で現在の状況や心情を説明し、描写を補強していくのは大事ですが、そればっかりだとフィクションが視聴者の心を上滑りをしていき、食い込まない。
今回ランタを見せるアングルは凄くストイックかつ的確に、彼らが追い込まれている苦境と、それを突破しようと足掻く彼らの心情、そこでランタが果たす役割を伝えてくれました。

この食い込み方は勿論今回、血沸き肉踊るアクションと同時に展開しているからこそ実現できているものなんだけど、同時にランタをこれまで切り取ってきた多角的なアングルが活きている部分でもある。
アクション要素が殆どない、夜の宿を舞台にした前回の言い合いの中で『ウゼーなこいつ』『でもウゼーなりに色々考えてやがるな』『義勇兵稼業、色々大変だな』と視聴者が色んな事を考え、モヤモヤした気持ちを増幅できたからこそ、鉄火場でまず体を動かし、仲間と生き残るために必死になってる彼の姿が、頼もしく気持ちよく見えるわけです。
静と動、アクションとドラマを対立させるのではなく、対比させたり同時に使ったりして視聴者の心を動かす展開を作る製作者の手管を、今回は強く感じました。

一時期の底値加減から計画的に描写を積み上げ、複雑なキャラ性を維持したまま好感度を上げたランタですが、状況はまるで地獄みたいです。
救出に向かう残りのメンバーも一切予断を許さない厳しい状況であり、視聴者的には『マナトの悲劇再び……か?』と怯えざるを得ない状況。
また良い具合に矢が飛んで組んだ、マナトをぶっ殺した矢がな……『どんな演出が視聴者に刺さっていて、再利用するとどういう気持になるか』をよく考えて演出してんなぁ。
今回灰にまつわる思索の中で言っていたように、どんなに面白い奴でも死んでいなくなってしまう厳しい世界ではあるんですが、巧妙な感情誘導の結果『やっぱ、ランタは生きていたほうが面白い』と思わされてしまってる以上、彼の生存を願わざるを得ません。
正念場の来週、一体どうなるのか、非常に楽しみです。