イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dimension W:第12話『辿り着いた未来』感想

巨悪をぶっ飛ばし、過去に決着を付け、可能性を掴み未来に走りだす!
ムッツリおじさんと可愛いポンコツが不思議な未来を駆け抜けるアニメも遂に最終回、色んな物に決着がしっかり付いて、非常に気持の良い終わり方でした。
キョーマさんとミラだけではなく、登場キャラ全てに見せ場と結末がちゃんとあって、やっぱ見せたいものをちゃんと把握して的確に配置できるアニメは最高だなぁ……という感慨にふける。
良いアニメだった、掛け値無しに。

とりあえず、開幕三十秒で『PCの大事なものを徹底的に蔑する』『グロテスクで露悪的な手段で、悪意を発露させる』というヘイトアーツ奥義を二連発し、『こいつ許せねぇ……ぶっ殺そうぜ!』という気分を最高潮に盛り上げるシーマイヤーをまず褒めたい。
やっぱ最高にムカつく悪役は、最高に盛り上がるクライマックスには必要だなぁと、今回のアツい展開を見ながら思い知った。
ジェネシスぶっ壊された後の発狂演技といい、お前は話を盛り上げる良い敵役だった……だがやってることは外道すぎるので、結構無様な感じで死ね!!
GN百合崎博士に頭なでられて綺麗に成仏してたけど、あれ現象としては肉塊に押しつぶされてんだよね……綺麗なイメージ映像とエグい死に様の対比が、ダンデヴィのラスボスみてー。


そんなクズ人間を他山の石として、可愛いポンコツに支えられつつ自分と向かい合うキョーマさん。
一旦自分のエゴイズムに愛想を尽かして折れることで、ミラにトス上げのチャンスを作って株を上げさせるところとか、非常に巧い。
変に自力で悟っちゃうと他人がいる意味が消滅しちゃうし、物語的に盛り上がりに欠けるわけで、適度に悩み適度に自暴自棄になるのは主人公の大事な仕事ですね。
過去回想で使った『生命線の特殊な手相』を、ミラが雅の意志の継承者だと認める足場に使ってるところとか、過去が無駄になっていない感じで素晴らしい。

『過去と可能性を掘り下げる次元Wを活かして、過去回想に独特の重さを出す』というのはこのアニメの得意技なのですが、ジェネシスコイルと雅の真実はそれを最大限に活かした、とても良いシーンでした。
世界を犠牲にして願いを掴むことも出来たけど、そうではない可能性をわざわざ選びとり、哀しい希望を選択した過去ってのは、自分の望みそのままに他者を踏みにじり、イースター島も滅茶苦茶にしたシーマイヤーとうまく対比になってんだな。
ラスボスと同じことが出来たけど、二人で決めて別の道を選択したっていう主人公力の見せ方は、凄く納得力が高くて好き。
こども好きなところもそうなんだけど、キョーマさんってぶっきらぼうな割に倫理性高いよね……そこが好き。

今回はポンコツのヒロイン力……というか相棒力が最大限に高まっており、コイルの申し子故の事象操作能力もしっかり駆使して、自分にしか出来ないことを沢山やっていました。
アクション担当のキョーマさんが記憶という精神的な要素を鍵にして物語の突破口を作ったり、頭脳労働担当のミラにもしっかり肉体的危機を用意してあったり、各キャラクターの得意分野だけで見せ場を作らず、多角的に光を当てる殺陣の作り方も、このアニメの良い所だったな。
何よりアニメが始まった瞬間からずっと強調されていた『こいつはロボットだけど、誰よりも人間らしくて、誰よりも可愛いんですー!!!!!』という強みが最後の最後まで貫かれていて、過去に迷ったキョーマさんを説得したり、コイルの暴走で自己犠牲勝利を掴もうとしたり、あざとかったり、最後までミラらしかった。
ほんとなー、ミラが可愛くて頑張っていて、キョーマさんに足らない(ように演出されている)人間味を溢れるほど補っていたのは、このアニメ最強ポイントだよなぁ。
そこで終わらず、イカすアクションとか、キョーマさんの強さと弱さとか、未来世界のワクワク感とか、武器が沢山有るのがこのアニメの強みやね。


主人公たちが自分を見つめなおし、さて最終決戦だ! というタイミングになって、ちゃんと他のキャラクターが必要な作戦が立案されているのも良かったです。
せっかく縁がつながったんだから、主役二人で独善的に解決するより、モグラの穴掘り能力とか、ショタの飛行能力とか、色んなパワーが必要な作戦にしたほうが過去の物語に意味が出てくるし、何より盛り上がるからな!
最初から最後までモグラ兄妹は優秀であり、彼女らが好きな僕としては最終決戦の物理的決着の仕方は、非常に良かったですね。

裏の主役といえるルーザーは、自分のクエストを完全に達成して叙情死。
まぁ生きていてもお話的にやることがないというか、過去に生きてきたルーザーの死と、過去を乗り越え前に進むキョーマさんとの対比でもある。
色んな意味でキョーマさんの影としてお話をシメてくれたルーザーは、ほんと良いキャラだったなぁ。
インチキ性能が印象的だったスピンダーツが、まるで伝説の聖剣のように全てに決着をつける演出は、雅の手相と同じく過去を活かしたいい演出やったね。
流石に最終話だけあって、過去に印象付けてきた様々な要素を活かし、お話の奥行きを強調する構成がしっかり出来ていて、満足度の高いエピソードでした。

最終話はこれまでの物語を決着させると同時に、その先にキャラクターが何を見るのか、これまでのお話でキャラクターが何を手に入れたのかも見せなければならない話数だと思います。
コイル嫌いの男が、コイルで動くポンコツアンドロイドを生命として、相棒として認め、これまでと同じ日常に満足気に帰還する今回のエンディングは、非常に簡勁にお話をまとめた、良い締めでした。
『少し表情を変えた毎日に戻ってくる』エンディングは定番っちゃあ定番なんだけど、定番は効果が上がるからこそ定番であり、それを陳腐ではなく必然とみせるためには物語の地力を積み重ねておかないと行けない部分でもある。
最終話で確認された『過去との決着と、前向きな決意』という要素も含めて、凄くオーソドックスなお話の盛り上がりを大事にし、視聴者に伝わるように整形して使ってくれたこのアニメらしい、『フツー』の終わり方でした。
控えめに言って最高だったね。


というわけで、Dimension Wも終わりました。
最初はミラのポンコツ可愛さに引き寄せられていたんですが、ジワジワと抑えた演出から滲んでくるキョーマさんの魅力も伝わってきて、まず主役たちを好きになれるアニメでした。
アクション良し、世界の見せ方良し、人情味良し、サブキャラクター良しと、強みがたくさんあったのも素晴らしい。
そういう強みに振り回されるのではなく、武器として必要なタイミングで使いこなし、一個のアニメとしての魅力が全体的に高まるよう的確に配置してくれた見通しの良さこそ、最大の魅力でした。

お話全体を見返してみると、虚無的な過去に苛まれていた男が可能性と決断を思い出し、優しい機械生命が命と絆の意味を掴みとるという、主役二人の人間的成長が主軸としてしっかり機能していました。
ふたりとも可愛いし信頼できる存在なので、自分らしさや人間らしさを取り戻す動きを思わず応援しちゃいたくなっちゃうのよね。
そういうふうに視聴者を惹きつける存在が主役だったのは、とっても良かったと思います。
バディものなので、成長が個人の内部で終わらず、ミラとキョーマさんの間で呼応して大きくなっていく構造がしっかり作れていたのも、非常にグッド。

事件屋というアウトローを主役に据えることで、ピリッとスパイスの効いた未来世界の闇を切り取り、刺激的で退屈しないエピソードが矢継ぎ早に繰り出されたのも、とても面白かったです。
コイル世界というバックグラウンド自体がとても魅力的で、かつ背景として埋没させず、主役を食うほどには活躍させずと、間合いを見切った良い使い方をしてました。
ここでも要素を的確に使いこなす、冷静な制作管理が光っていて、冷静でロジカルな部分と、熱く感情的な物語進行を両立させるという、基本なんだけどすげー難しいことを、ちゃんとやってました。

しっかりと語るべきことを語りきり、見せるべきものを届け、見たいと思ったものをしっかり映像にしてくれた、良いアニメでした。
このハンドリングの巧さと、巧妙さに溺れていない情熱の両立は、なかなか出来ないことだと思います。
Dimension W、良いアニメでした、とても面白かったです。
ありがとう。