イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

12歳。:第1話『キス・キライ・スキ』感想


大人とも子供とも言えない青い季節に足を踏み入れた少女たちが、欲得抜きで異性にDOKI☆DOKI出来る聖なるお年頃と真っ向勝負するアニメ、第1話。
非常に真面目に恋とか成長とかを取り上げつつ、肩の力の抜けたコメディもテンポよく交えて、非常に気持ちよく見ることが出来ました。
タイトルのN倍無駄歳を食らったオッサンが見るには、ちとピュアピュアすぎる部分もあるけど、むしろそういう人こそ、見てて楽しく元気になれる、そんなアニメだと思いました。
非常にストレートなパワーの有る、恋の快作春アニメ戦線に殴りこみであります。


生の小学生と接触がある時代なんぞとうに過ぎ去ってしまってますから、この作品で描かれる『12歳。』が現実とどれほど近しいかは判別しかねます。
しかしアバンのナレーションで言っているように、そして作中でも描写されるように、『子供』kら『女の子』になり、『女』に差し掛かる柔らかな時代に、凄く寄り添って描いているとは感じました。
そのアプローチの上から目線で『これが正しい』と示すわけではなく、時に笑いを交えつつ、時に少し嫌なことも起きつつ、『普段より少しだけ楽しそうな日常』を舞台に、ラブコメディとして楽しめます。
この『現実よりもちょとだけ上』のリアリティの出し方は、なかなか面白いなと思いました。
親近感と憧れのバランスが上手いというか。

お話の方は自分を子供っぽいと感じているちびっ子・花日ちゃんがスーパー素敵ボーイ・高尾くんをふとしたきっかけから意識するようになり、あれよあれよというまに『恋人』というこれまでとは違う関係になる、というもの。
大人の恋愛に当てられてのキスに始まり、友人の初潮に、デリカシーのない男子との対立、女子の同調圧との対決、堂々の恋人宣言と、イベント詰まりまくりでテンポの良いお話でした。
配慮の無さに傷ついた友人のために怒れる花火ちゃんも、賢くて優しくて落ち着いていて恥じらいまである高雄くんも、凄い真っ白な魂をしていて、オジサンニフラムされるかと思った。(体が半分消えつつ)
日常の描き方が丁寧なので、ただの良い子ではなく、色々考えたり怯えたりしつつも他人の痛みを考えられる『選択の末の良い子』が主役だと感じられるのは、お話を好きになる大事なポイントだと思います。

キスや恋人になることが第1話に来ていることからも、このお話しは恋愛を成就させることそれ自体がゴールなのではなく、12歳というあやふやな年齢の中で『大人』であること、『子供』であることを描いていくことがメインテーマなのだと思います。
高尾くんの『大人』な振る舞いと、モブ男子の『子供』な立ち回りは分かりやすく対比されているわけですが、それを分けるのは他者への想像力と、それを侵害しないよう行動できる視野の広さ。
一言で言えば、他者への優しさでしょう。(モブ男子も素直に謝りに来ているので、優しくないわけじゃなくてバカなだけなんですけどね……ホントすいませんね女子の皆さん男子マジバカで……)
一番わかり易い他者は、自分とは異なる性別を持った男/女なわけで、このアニメにおける『恋愛』とは『子供』の頃にはあやふやでも良かった他人と自分の境界線をしっかり確認し、そこに怯えず可能なかぎり踏み込むことで、幸せを増幅し共有する行動なのかなぁと、第1話を見ていて思いました。
『恋愛』をメインに持ってきて大事にしつつも、『成長』や『人生』や『自己』というより大きなものを忘れず、しっかり組み込んで描写しているのが良いですねホント。


つーか、高尾くんのデキるイケメンスタイルが完璧すぎてやべぇ……。
自分のやり口は押し付けないし、相手の言葉を待ってから行動できるし、必要なら恥じらいや躊躇いを飛び越える行動力があるし、落ち着いてるけどファーストキスにずっと頭を悩ませるピュアさもあるし、そらモテるわ大人だわ。
恋も知らなかった花日ちゃんですが、初手で最高級のメンズピックしやがったなぁ……良いなぁ花日ちゃん……。(12歳女子に早速共感おじさん爆誕)
この後彼女たちは、初恋のアレやらソレやらに一喜一憂していくんでしょうが、せっかく恋という素敵な好奇心と出会った幸運を大事に、色んな事を体験して欲しいなぁと思います。

今回は花日ちゃんと高尾くんのピュアカップルメインで進んでいましたが、ちょっと背の高い結衣ちゃんと、そんな彼女が気になりつつ素直になれない檜山くんも、恋の火種がパチパチ言ってました。
結衣ちゃんの身体的成長を一つの見せ場として切り取っているのはなかなか面白くて、タイトル通り『12歳』という時代を真っ直ぐ受け止めてる証拠かな、と思った。
自分が望むと望まざると身長は伸びるし、性成熟は進むし、それに引っ張られて脳味噌はこれまで考えなかったことをひねり出し始めるしで、思春期にとって身体とはかなり厄介な隣人だと思います。
そんな身体性を軽んじることなく、お話の真ん中に組み込んでいるのは、自分たちが描いているものをしっかり掴んでいる印象を受けて評価高くなりますね。
メイン二人の描き方が凄く強靭だったので、こっちのお話が掘り下げられるのも楽しみであります。


というわけで、タイトルに偽りなく『12歳。』の掛け替えのない日常を、真正面から描いたお話でした。
あまりにも清くて可能性に満ちた青春濃度に、思考が汚れたオッサンが見ていると脳味噌吹っ飛びそうになりますが、むしろこのストロングスタイルが気持ちいい……。
捻りなく『いいこと』を語っているんだけど、そこに説教臭さがなく、コメディとして、青春物語としての爽やかな楽しさがちゃんとあるのが、凄く良いです。
つくづく、楽しいって強いなぁ……正論がストンと胸に落ちるもんなぁ。
恋を知った二人も、これから恋を知っていくだろう二人も、それを取り巻く様々な人達も皆魅力的で、また別のお話が見たくなる良いアニメでした。
いやー……やっぱ女児アニには龍が潜むなぁ……。