イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第1話『ゆめのはじまり』感想

アウトロが終わればイントロが始まる! 一つの歴史が幕を閉じ、そして始まるもう一つの夢!!
というわけで、アイカツの名前を継ぐシリーズの第一話でございました。
初回ということもあって世界観とキャラクターをザラッと攫う話でしたが、ライバルとの顔合わせあり、主人公の異能を発揮するステージあり、かなり手際よく必要な要素を紹介していた印象。
あんだけのシリーズの後なのでつい色々比べちゃいますが、アイカツから受け継いだものあり、変わったものありで、今後の転がし方が楽しみになる出だしだったと思います。


今回は主人公・虹野ゆめにスターズ!世界を走り回らせて、物語とその舞台、共演するキャラクターに出会わせる回だといえます。
色々なものが手際よく紹介されている第1話でしたが、まずは世界観。
前作が生活感の薄い夢の様な町並みを重点的に移し、おとぎ話のような浮遊感を大事に世界を構築していたのに対し、出だしからして現実感のある地下鉄で物語が始まりました。
舞台となる四つ星学園はゴージャスでハイソな夢の楽園という感じですが、それを取り巻く世界はあくまで現実の延長線上というか、特別なルールが支配していない、オーソドックスな空気を感じます。

これは世界全体を取り巻く感情の表現にも通じていて、アイカツが序盤目配せをしつつ結局慎重に切り離していった様々なものを、スターズは積極的に取り入れている感じがしました。
例えばそれはステージで昏倒した後憧れの存在と出会えたゆめが流す涙であったり、次回予告でローラを『苦手』という言葉でネガティブに評価したり、と言った部分です。
旧作において涙は基本引っ込めておくもので、努力も感動もある意味あって当然、プライドの効いた抑圧と、それを超えてあふれだす一瞬の涙を重点して描いてきました。
また、悪感情を極力廃し、世界のすべてをポジティブに受け入れる……というか、ポジティブに受け入れることが出来る輝きだけで世界を構築する独特の世界観構築も、旧作の特徴と言えます。

演出のルールを徹底し、世界を構築するアイテムを慎重に選び抜いてきた旧作に対し、スターズはあくまで一般的で現実的な作劇を心がけ、『普通』のお話を作っていくのかな、という印象を受けました。
それはどちらが上でどちらが下ということではなく、物語を紡いでいくうえでの一つのアティテュードというだけのことであり、それぞれ選びとった演出の意思を活かして、そこでしか語れない物語を作っていくことこそが大事なのでしょう。
そういう意味で、旧作はガラス細工のような繊細さで必要な要素を選びとり、積み上げて世界観と物語を構築し、そのアティテュードでした描けないものをしっかりと表現できていたのだと思います。
そして、それは評価に値するものであり、アイカツ!の名前は女児アニの枠を超えて一大ブランドとなった。

その名前を引き継ぐとはいえ、スターズにはスターズの物語があるし、それはすでに第一話の段階で感じ取れる。
木に登れば当然パンツが見えることを気にしなければいけないし、ソリの合わないライバルも居る世界の中で、ゆめは一体どんな夢を掴み、個性を発揮していくのか。
アイカツ!とはおそらく違う景色になるだろうこれから先を見たくなる、良い第一話だったと、僕は思いました。


『普通』な作りは四ツ星学園という舞台と、そこを代表するキャラクターにも反映されています。
あらゆる意味で『アイカツの天井』だった神崎美月一人に憧れを集約させた旧作とは大きく異なり、歌唱・演技・ファッション・バラエティーといった芸能の各ジャンルを『組』という形で分散させ、その頂点を『S4』というトップアイドルに分割させる作りになっています。
極端な一極集中は避けつつも、上手くS4の超人的なオーラを盛り上げ、ゆめの視点を白鳥ひめ一人に集中させることでしっかり焦点を合わせる見せ方は、なかなか良かったです。
ステージ上のオーラの表現が、『内部からにじみ出る光』という分かりやすいものに変わったことも、アニメーションという表現手段で『スーパーアイドル』という通じにくい概念を分からせる、大きな助けになっているでしょう。

S4個々人のキャラクターは紹介が済んだこの段階では深くは分かりませんが、同じ衣装をまとい、特に派手な着崩しもしないのに『だいたいこういう奴』というのが伝わってくるキャラ付けの上手さは、流石というべきでしょう。
髪型と眉毛と目のライン、身長とブーツの丈、全体的なシルエットと姿勢。
無論口調や声の上げ下げなども見えましたが、ぱっと視覚で捉える記号の書き分けが非常に的確で、S4が分担している領域が一発で分るビジュアル的な強さは、大きな武器だと思います。
この第一印象がどう掘り下げられ、どんな側面が見えてくるかは今後のお話次第ですが、既に結構楽しみになっています。

S4は主人公たちが目指すべき目標、人気と実力を兼ね備えたアイドルの完成形としてあるわけですが、そんな彼女たちのスタンスが短い自己紹介の中でかいま見えるのも、なかなか面白かったです。
主人公・ゆめが未だファン気質が抜けないまま、S4を追いかけるだけの『夢』を語るのに対し、S4はその夢をどのように支え、鍛え、迷った時はトップである自分たちが道標となる覚悟を示してきます。
この意識の差はそのままアイドルとしての経験の差、数多の人を背負って夢の先頭を駆けるスターと、夢に足をかけたばかりのひよっこの差を上手く示し、そのギャップを埋めていくことこそがスターズの物語(の一つ)であると伝えてきました。
それが苦難あり恨み節ありの凸凹道になるのか、はたまた夢と希望を真っ直ぐに捉えた素直な坂道になるのかは分かりませんが、とまれ主人公の現在地と、目指すべきゴールがクッキリしているのは良いことです。(そこに辿り着くことこそがスタートなのかもしれませんけども)

ゆめは現状『S4になりたい』という夢を持っていますが、『個性』が重視され『自分らしいアイドルカツドウ』をS4が称揚していることを考えると、1ファンの憧れにすぎないこれは否定されるべき夢です。
S4という自分以外の存在に憧れて歩き始めた道の中で、如何にして虹野ゆめにしかない『個性』を見つけ、虹野ゆめだけの夢を掴みとっていくのかというのが、現状感じられるゆめの物語(の一つ)になります。
そのために、虹野ゆめの初期衝動である『S4になりたい』という気持ち、ファンとしての彼女たちの姿を丁寧かつ鮮烈に切り取っていたのでしょうし。
幼馴染のメガネがかなり的確に『虹野ゆめのゆめらしさ』を捉えているので、彼女が上手い子とアシストしてくれると嬉しいわけですが……ここら辺の展開だきゃーゲーム連動の都合とか、色々あるからな……。
『自分らしさ』は自分と似ていない他者を見つめることで際立っていくので、『ちょっと苦手』なライバル・桜庭ローラとの関わり合いがどうなるかも、大事なところでしょうね。

ゆめはひよっこアイドルであると同時に、『アイドルの天井』であるS4にも一目置かれる天才的なステージをこなせる才能も持っています。
主人公の資格ともいえる特別な『自分らしさ』ですが、ステージでぶっ倒れたゆめはそのことを一切覚えていない。
強力で特別な才能を持ちながら、自分の力を把握しきれていない未成熟な存在として、ゆめはいまスターズ世界に立っています。
彼女の特別な『自分らしさ』の正体、特別さの対価のように記憶と体力を奪う能力の正体が一体何なのかというのもまた、来週以降に持ち越された疑問ですね。
『個性』と『夢』を見つけていく過程で、暴走する能力を制御していく手段を探すことも、ゆめの物語になるのかなぁ。


というわけで、物語全体の構造とリアリティライン、主人公が持つ物語の要素をしっかりと見せる第一話でした。
ステージ表現としても、2Dパートからスムーズに移行できる3Dセルルックのクオリティを活かし、魅力的な舞台を仕上げていました。
暗闇からサイリウムが輝き水柱がドカンと跳ね上がる"スタートライン"の緩急、細かいジャンプやステップを使いこなして、希望に躍る気持ちを体で表現していた"アイカツ☆ステップ!"、ともにとても良かったです。
EDもシャレオツな色彩にS4の個性がバシッと効いていて、EDMな楽曲と相まって超カッコよかったです……やっぱイシグロキョウヘイ凄ぇな。

旧作へのリスペクトを随所に感じさせつつも、しっかりと物語のアングルを変え、『別の物語を、別の描き方でやろう!』という気持ちが伝わってくる第一話だったと思います。
僕はアイカツ! が好き過ぎて頭おかしい類だと自認していますが、そんなキチでも(キチだからこそ)、新しい物語にはそこでしか語りえない、スターズだけの物語をしっかり語って欲しい。
アイカツのスタートラインに足をかけたばかりの夢と一緒に、このお話がどう走っていくのか、どう走りたいのか。
そういう意欲と魅力が良く伝わってくる、とてもキラキラした第一話だと思います。
ふーむん、面白かった。