イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

あんハピ:第1話『4月7日 不幸な入学初日』感想

ゆるーっとふわーっと、一期に一話は見たい箸休め系アニメーション……の皮を被った、人間として世界として大事な何かを置き忘れたままツッコミ不在でドライブし続ける系アニメ、その出だし。
この『ニッチな需要に狭く応えるべく、登場人物と世界観から必要でない要素をそぎ落としまくった結果、異常に尖った仕上がりになる』というジャンル内運動どっかで見たなぁ……とか思ってましたが、エッヂだった頃のエロゲーだな。
"さよならを教えて"とか"好き好き大好き!"とかの頃。
『『不幸』な因子を持つ生徒を強制的に『幸福』にするべく作られたクラスで、日常を装いながら人々は出会い、交流し、『授業』を受けていく……』という風にあらすじをまとめると、あっという間に黒くてデカくて硬いケースに収まりそうなオーラ出てくるもんな。

この過剰なドライブ感は過去作で言えば"Aチャンネル"とか"幸腹グラフィティ"に近いと思うわけですが、共通するのは感情の表現が記号的なところと、それが視聴者に染み渡る前にゴロゴロと転がっていく状況。
作中人物が『不幸』とされる状況をどう思っているのか。
あからさまに異常な状況にどうリアクションするのか。
それが視聴者に浸透するより先にに異常な世界は既にシーンを切り替えていて、提示された異常さに自分の中で名前をつける前に、事態はどんどん先に進んでしまう。
ツッコミ不在、常識改ざんのスピードが生み出す異質性は、ジャンルに要求される聖域性をどんどん強化していく。
『ここはそういう場所で、彼らはそういう人です』と言い切る力強さと、それに感じる閉じた安心感。

これがともすれば『作品に置いてけぼりにされている』とすら感じる加速度を生み、キャラクターを人間としてより特殊な状況のために製造されたエイリアンのごとく受け取る足場になるのだと思う。
どーでも良くて当たり前な、しかし当然あってしかるべき人情と疑問を蹴っ飛ばして、一見薄味のようで実は特定のニーズに特化した、舌が痺れるくらい濃い目の世界に没入させていく過剰なスピード感。
その異質な快楽が、実は僕は嫌いではないです。

SILVER LINK特有のゆるふわっとした色彩、いかにもなあざといアクション&リアクションで心がホッとする瞬間もありますが、あからさまに洒落になってない状況を洒落で済ませる理不尽さと、『日常コメディ』というジャンルに要求される『普通さ」を演じるキャラとのギャップがいい塩梅の気持ち悪さになって、中々素直には受け取れない。
一見ゆるふわっとした『イイハナシ』が演じられているようでいて、それを単純に受け入れられない異物感は、長年に渡り先鋭化を続けた『萌え日常系』というジャンルの中にいると中々気付かないエッジさを突きつけてくれます。
パッケージされている『日常』が素直に落ちてこなくて、逆に『非日常』として受け取ってしまった以上、僕はこの作品に没入し『自分の話だ』と前のめりに楽しむことは、現状できないでしょう。
だからこんな感じで、斜めに構えたシニカルでメタな感想になる。

『エイリアンはエイリアンで日常があり、人情があり、痛みと涙と笑いがあるのだ』という見せ方も当然あって、そういう味をじわっと滲ませてくれれば『日常を装う非日常』にもトンチキな愛着を抱くことが出来ます。
先行作で言えば、僕は"きんいろモザイク"や"のんのんびより"にそこら辺を感じている。
特殊性の中に普遍性を織り交ぜて、ジャンルの言語で物語を作りつつ普通のお話に辿り着く捩じれが僕は特に好きですが、それはそれとしてエイリアンを観察する覚めた姿勢も嫌いではない。
この作品がどちらの河岸にたどり着くのか、はたまた独特の領域までぶっ飛んでいくのか。
それはさっぱり分かりませんが、現状物語の外側からの観察よりだなぁという記録をしておいて、今後も楽しみたいと思います。