イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

クロムクロ:第1話『鬼の降る空』感想

黒部ダム! 実態不明な遺失技術!! 重力管制ロボ!!! フルチン全裸サムライ!!! 襲い来る謎の集団!!!
色んな要素がてんこ盛りで空から襲いかかってきた、PA15周年アニメの第1話でございます。
PAお膝元、富山は立山町のローカルな土着性と、いい塩梅に練り上げられたSFテイスト、そして謎が謎を呼ぶロステクロボと、突然現れた全裸の侍。
意外な組み合わせの妙で視聴者を殴りつけつつも、その各要素をしっかりと仕上げるPAらしさが妙な安心感を生む、奇妙な興奮に包まれた第1話でした。
取り敢えず、超作画で描かれるサムライの見えそで見えないアクションが最高に面白かったですね。

お話しは異質技術の塊『アーティファクト』を発掘したことにより、我々の世界とは少し違う歴史を歩んだ2016年夏が舞台。
重力・慣性制御がバッチリ効いた超絶ロボとか、火星有人探査とかが一応実現可能なSF力を誇るこの世界でも、日常は日常、学生は学生……なんだけど、親方! 空から隕石を偽装したロボット兵団が!! ってなってさぁ大変だよ、ってのが第1話でした。
ぶっちゃけ何が何やらよく判らんが、それは主人公たる由希奈ちゃんもおんなじな訳で、こういう時は情報量とイベントの洪水に押し流されることそれ自体を楽しみたい気持ち。

わけわかんねーと言いつつも、説明臭さを巧く抜かして世界設定を語ってくれるダイアログと、絵の細部に漂う『ちょっと未来っぽいぞ』という雰囲気がいい塩梅に心を落ち着かせてくれて、わけの分からなさを楽しむ余裕が生まれてました。
物語的状況は大量の訳のわからなさを抱えているわけですが、それが新鮮味という楽しさになればこそ、僕ら視聴者は物語を物語として楽しめる。
混乱を『制御され、楽しめる混乱』にするために、目立たない所で色々手管を尽くしてくれているのがとっても良いなぁと思いました。
主人公の進路相談の形を借りて技術レベルを飲み込ませるお話作りもそうなんだけど、携帯のデザインとか、研究所の美術とか、拘るべき所ちゃんとやってくれたの、ほんとありがたいですね。

PAは地元富山に熱意を持った制作会社なわけですが、今回もしっかりロケハンして生々しい土着性を引っ張りこむことに成功していました。
『実在の事象を取材し、実際の見え方よりも輝かせる』というのが創作の妙味だとすると、PAの富山は本当に綺麗に(もしくはおどろおどろしく。つまり作品内部で必要な感じに)描かれていて、物語に目を留めるのに必要な一種の『憧れ』を巧く捉えていると思います。
今回で言えば、あまりのも鮮やかな水と緑の描写とか、ダム特有の巨大感と躍動感の融合とかね。
しかしそこには実在ゆえの存在感と手触りがちゃんとあって、お話が宙に浮かんでいかずどこか身近な感覚を覚えるように調整もされている。
この土着感が、隕石落下から一気に加速するドラマの展開にも、日常の中にオーバーテクノロジーを潜ませる世界観とも噛み合っていて、とても面白いマッチングを見せていました。


キャラクターの動きとしては、平凡な高校二年生が異常事態に巻き込まれる! という軸に、クチの悪いパイロットとか、謎の全裸サムライとかが絡む感じ。
今回はとにかく事態を進ませることが優先されていたので、キャラ同士の掛け合いはやや弱い感じでしたね。
主人公が結構ポヤポヤしてるって部分と、サムライさんが超強えけど主人公を姫と勘違いしてるって部分と、どう見ても噛ませ犬に見えた口悪いパイロットさんはかなり頑張れるって部分を押さえていけば大丈夫だろ、多分。
くっそダセェデザイン(褒め言葉)の国連ロボの中でヒーヒー言いつつ、頑張って人類を守ったパイロットさんは、今後も口悪く頑張ってほしいものだ。

全裸ザムライ・青馬剣之助時貞くんは、正体・動機不明ながらその全裸っぷりと、ロボ兵士を容赦なくたたっ斬る腕前、そして誰かを守るために体を張れる士魂で、印象に残るキャラでした。
作画力をああ使うのは面白いなぁ……すげー動きまわってるのに、アングルと配置の妙味でマジ見えない。
姫にモチベーション高めの様子だったけど、実際に会話する前に燃料切れになってしまったので、来週以降の絡みに期待だな。
全裸の変人とはいえ命の危機を救ってもらったのは事実なので、由希奈ちゃんにはサムライさんをまともに扱って欲しいものだ……状況が状況だけに難しいかもしれんけどさ。

謎が多いのはロボット技術が成立しているバックボーンと、襲いかかる戦国ロボ軍団もそうなんですが、これはおいおい説明される部分でしょう。
どっちにも『アーティファクト』なる謎技術が関わってるのは間違いないし、それが人類には過ぎたシロモノながら、技術の歴史を強制的に進ませてしまうヤバネタだってのは、巧妙に説明してたしね。
ここら辺の謎を掘り下げていくのも、今後の話の軸になるんかね。


つーわけで、兎にも角にも物語が走りだす第一話でした。
ロボ、SF、オーバーテクノロジー、富山、ボーイ・ミーツ・ガール、全裸。
要素要素は一見ミスマッチに見えながら、その一つ一つに妥協せず仕上げることで噛合せを良くし、不思議な気持ちよさを生み出すという、非常にPAらしい第1話だったと思います。
大量の『?』をばらまくことには成功したので、今後はそれが明らかにされたり、くっついたり離れたりすることで『!』に変わっていく気持ちよさがあると、非常に嬉しい。
今回棚に並べられた要素はとっても楽しく魅力的だったので、それをどう組み合わせ、どう魅せてくれるのか。
来週が楽しみです。