イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第2話『ふたりはライバル!』感想

星を目指す少女たちの物語新章、二回目は4つの組と気になるアイツ。
前回に引き続いて世界の大枠を説明しつつ、主人公のライバルであり理解者になりそうな女の子、桜庭ローラちゃんを掘り下げる回でした。
苦手意識をむき出しにしたり、陰口を叩かれたり。
人間が当然持っている負の感情を表に出しても問題がないスターズの劇作に少し驚いたりもしたかな。

お話の大筋としては、今後物語が膨らんでいく舞台になる4つの組と、その代表であるS4をサラッと触りつつ、新入生歓迎イベントを舞台に、ゆめとローラの関係をスケッチする展開でした。
歌・劇・舞・美の四組に関しては、それぞれにS4一人と先生一人がついて、得意分野と特色がクッキリ別れている印象を受けました
S4を代表にして組織と先生のカラーがハッキリしているのは、分かりやすくて良い。

今後各組個別のエピソードや、S4客員の顔が見えるお話なんかも展開すると思うので、トップのお披露目はあくまでサラッとでした。
そんな状況でも"風沢の遺伝子を継ぐもの"香澄夜空先輩のプレデターっぷりはよく伝わってきて、小春ちゃんがあっという間に目で絡め取られ指で落とされてた。
流石公式サイトに『可愛いものが大好き!』と書いてあるだけはある……。
濃厚すぎて血管詰まりそうだった無印の女子×女子の距離感描写も、スターズでは色々変化があると思いますが、手当たりしだいバクバク食っちまいってそうなオーラを出してる夜空パイセンには、距離感近く頑張って欲しいものです。

残りのメンバーは、猫で天然っぽい二階堂ゆず先輩と、背筋がしゃんと伸びたクールな如月ツバサ先輩と、主人公イチオシの最強お姫様・白鳥ひめ先輩。
それぞれアイドルとして重視する部分というか、育成のメソッドが異なっている様子を見せたのは、学園描写に重点を置いているスターズらしいなと思いました。
無印は育成最低限にして、すげー速度で現場に出して鍛えまくったからな……ここら辺も変わったところだ。
しかし古き良き脳筋主義はスターズでも健在なようで、特に白鳥パイセン率いる歌組は三ヶ月も在籍すれば腹筋バキバキになりそうなスパルタメニュー。
今後トンチキな特訓メニューで笑いを取りに来るのか、はたまたオモシロスポ根路線は抑えめにするのか、そこら辺の味付けも気になります。


今後のお話が転がる舞台紹介もありましたが、今回のメイン軸はピンクの可愛いアイツ、桜庭ローラちゃんの紹介。
『偶然が結びつけた運命に導かれ、反発含みでお互いを知っていく』というオーソドックスなライバルストーリーは、実は無印アイカツでは展開できない質のものです。
無印世界は悪意が存在できなかったので、『ちょっと気に喰わないけど、だから気になる』っていうマイナスからプラスに転じる物語とは、相性が悪かったのよね。
軽い反発から入ることで、後々ライバルの美点を認め心を深く通わせていく関係変化のスマートな描き方含めて、『普通』であることの強みを最大限生かした展開だと思いました。

ゆめとローラはなかなか巧妙にお互いを補うように描かれていて、その差異点があればこそ時に反発し、時に自分に足らない部分を発見できる、非常にオーソドックスで健全なライバルといえます。
価値観的には凡人、努力もそれなりの天才肌なれど本気になりきれず、フルスペックで立ち回れば記憶を失って失神するゆめ。
一見気合が抜けているようで自分のペースを持っていて、才能に任せるというよりは人事をつくすタイプのローラ。
『主人公/ライバル』『才能型/努力型』『余裕/全力』といった要素を、少し典型からは捻って組み合わせることで、お互いがお互いを引き立てるようよく計算されたキャラ造形だと思います。

相補的な二人の関係がよく現れているのが、発声練習と特訓のシーン。
神憑りな能力で一夜にして時の人となったゆめですが、平時の能力はそれほどでもなく、やる気無いように見えて毎日努力を積み重ねているローラとは、明確な差があります。
自分にも他人にも厳しく、しかし物事の本質は素直に認めるローラの本性に刺激される形で、ゆめも特訓に勤しみ、自分のほうが得意なダンスは教える側に回る。
小さな反発から始まった関係ですが、一時の悪感情に流されることなく本質を見極める目含めて、非常にポジティブな間柄が強調されながら話が進んできました。

ゆめの目を借りてローラの本当の姿を見ることで、ルーズな印象だった彼女のストイックな部分を、意外性を込めて見せることにも成功していて、なかなか良いキャラ紹介だったように思います。
無印時代の徹底した善性は当然無いけれども、『普通』に素直で、ひたむきで、一生懸命なキャラクターであり、好きになれるライバルだなぁと思います。
今回とても良い出会い方をしたので、今後ゆめと様々な困難を乗り越えていく過程で、色々絆が深まっていくのでしょう。
とても楽しみです……小春ちゃんはもう夜空パイセンにバクバクアニマルされて、夕方には放送できないから出番が減るルート確定だしな……。


ローラを鏡にすることで、徹底して自分を鍛えあげる超人的ストイックさを最初から持っているわけではない、凡人としてのゆめのスペックも確認できました。
登場するキャラクター全てが非常に高い目的意識を持ち、的確に自分を鍛え上げてきた無印とは、ここら辺大きく異なるところです。
『観客を引き付けるステージは、現在のゆめの『普通』では出来ない』『しかし第1話で見せたトランスは借り物で、記憶も意識も失ってしまう不完全なもの』というジレンマも見えてきて、ここら辺をアイドル活動の中で埋めていくことが、ゆめの大きなストーリーラインとなりそうです。
トランスという『強力だが不安定な力』を制御していくことと、今回ローラと頑張ったように、素の実力を鍛え上げていくこと、両方が大事になる感じかな?

トランスの力を借りない『普通』のステージに一般生徒が陰口を叩いていましたが、とてもスターズらしいシーンだと思いました。
悪意の直接的な表出を極力排除しつつ、世界の厳しさを別の形で表現していた無印と異なり、スターズは普通に悪口が飛び出し、それをバネにしてやる気を出す演出が許される『普通』の劇作をしています。
作品内のルールを強烈に定義し、それを徹底し加速させることで独特の(それこそアニメ史に残る)世界観と視聴感を生み出していた無印とは、スターズは当然ながら別の方法論を選んだ、ということでしょう。

そのことがどう活きてくるかは今後見えてくる部分ですが、今回ローラとの関係性を描く上で見せた、とてもオーソドックスで真っ直ぐな筆致に、既に少しその利点が見えているようにも感じました。
頑張るってことは良いことばっかりじゃないし、出来ないことも、歪んだことも必ず起こる。
輝きにつきまとう影を真っ直ぐ描ける強みは、お話のわかり易さと、王道故のストレートな印象という形で、今回の話しにとても良く現れていたと思います。
今後も『普通』である強みを活かしつつ、『普通』で終わらないスターズの癖というか、描きたいテーマなり表現技法なりがどんどん出てくれると、作品をもっと好きになれる気がします。


と言うわけで、今後物語の鍵になるであろう4つの組、そして桜庭ローラというライバルとの出会いを描く回でした。
偉大なる先代は『他者』の描き方に独特の癖と大きな魅力があった作品ですが、学園に入って初めて知り合う『未知なる他者』とのファーストコンタクトは、少しの戸惑いと多くの刺激が詰まった、可能性を感じるものとして描かれていました。
主人公がアイドルの星をつかむためには、まだまだ足らない部分が沢山有るとも描かれた第2話。
この後に続く物語の中で、ゆめとローラが何を学び、どんな障害を飛び越えていくのか、楽しみになるお話でした。