イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

影鰐 -KAGEWANI-承:第3話『秘儀』感想

いろんなジャンルで楽しませてくれるクリーチャー・ショート・ホラー、今週は都市伝説ネタ!
クリーチャーを隠すことで恐怖を増幅させていた第1話、最初からクリーチャーを見せてアクションで成立させる第2話に続き、今回は『怪しげな田舎の因襲』という別種の恐怖で攻める作り。
意味ありげに画面に写ってた全自動釣瓶を活かした脱出といい、温泉が赤く染まる惨劇の見せ方といい、小技もきっちりキマって相変わらず影鰐は良い……切れ味鋭い。

都市伝説の隠微な恐怖と、クリーチャーが出てきてズドーンでバーン!! な怖さってのは、ともすれば全部が台無しになってしまう取り合わせ。
しかし今回は奇獣を神と崇め生け贄を捧げる邪教集団の怖さを上手く演出し、その信徒すらも食い殺す『だるま様』の理不尽さをオチに持ってくることで、過剰に人間サイドに寄せない展開を維持していました。
温泉といいオカメのお面といい、半歩間違えれば完全なギャグなんだけど、そのチープさを『影鰐っぽ~い』と喜びつつも怖い所は怖い、音楽とライティングを使った感情の誘導は、押さえが効いててよかったですね。

クリーチャーの正体判明と窮地脱出で話を終わらせるのではなく、ネットの闇の中にだるま温泉そのものが消えていくという、都市伝説力溢れる終わり方で〆たのも良かった。
あれだけクリーチャーをガンガン見せておいて『なんかよくわからない話だったなあ』という、(おそらくは狙った)感想に落ち着く辺り、やっぱ構成もよく考えられてるアニメだと思います。
短い時間の中で視聴者を揺さぶりつつ、謎の音叉使いを顔見せさせてストーリー全体の謎を増幅させる所とか、ホント見事な捌き方。
……番場先生はいま猿楽に接待されてるわけで、音叉男はまた別の奇獣ハンターなんだろうか。

ホラーの各ジャンルで必要な物をよく考え、先行作に学んでしっかり取り入れ映像にするという創作のサイクルが、影鰐はよく回っていると感じます。
どっかで見たことあるからといって、視聴時の感情の鮮度が即座に落ちるわけではなく、大事なのはいかにしてそれが今生まれたばかりだと感じさせる見せ方をするか。
影鰐はショートな時間と切り貼り風味な作画という、一般的なアニメーションとは違うパッケージの力もあって、見慣れた題材を上手く組み合わせつつ、新鮮な感情(恐怖だけではなく、笑いや愛着含む)を上手く引き出しているのです。

このお話奇獣は基本『理解不能な人喰いクリーチャーで、人間では太刀打ち出来ない』というラインで話が展開しています。
しかし毎回毎回奇獣にやられっぱなしというのもストレス溜まるし、変化がなくて飽きても来る。
『だるま様』自体には勝てないものの、小市民のヒロイックな勇気で恋人は救えるという今回の展開は、見てて気持ちの良い小さな英雄譚という意味でも、定番ストーリーを少し捻る変化球という意味でも、とても面白かったです。
やっぱアレよな、たまには人間サイドが『勝つ』話も見たいわな。

と言うわけで、影鰐らしいサンプリングの上手さ、全体的なトーンの統一性が良く出た、良いエピソードでした。
やっぱ見せるべきものをしっかり把握している創作物は、見てて安心と喜びがじわりじわりと湧いてきてとても楽しい。
非常に良い意味での『間の抜けた感じ』も健在で、二期目の影鰐、ますますエンジンかかってきてます。
ほんとおもしれーな影鰐。