イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ふらいんぐうぃっち:第2話『魔女への訪問者』感想

ゆったりとした時間が流れる弘前エブリデイマジック、今週は珍客がやってきてふきのとうの天ぷらを作るお話。
学校にも下宿先にもあっという間に馴染み、特に引っかかりのない平和な日々がダラダラと流れるわけですが、そのダラダラ感が心地よい……。
よく考えれば春の運び屋襲来とか大事件になりそうなもんですが、そこをサラッと流しつつ、ダラダラした感じを楽しめるよう気を配ってくれている作りが、非常にありがたいですね。
招かれないと境界を突破できない辺り、春の運び屋はガチで異界の住人だと思う。

こういう緩い話は話の起伏が少ない分、雰囲気をどう作り上げて『俺もここに居たいなぁ』と思わせるかが大事だと思います。
今回は『春』という季節自体を主役に据え、細かい描写に力を入れることで作品のリアリティを盛り上げていました。
Aパートで常時鳴り続ける鶯の声とか、いい仕事してたなぁ……季節感を出すというだけではなく、コメディを成立させるアクセントにもなってたな。

今回は話しの並びが良くて、ふきのとうという『日常』も春の運び屋という『非日常』も、同じように春の一風景であり『日常』なのだという、エブリデイマジックらしさが出てました。
『春』というシチュエーションを二分割し、『日常』と『非日常』を同じトーンで扱うことで、このアニメの価値観が見えてくる第2話だったと思うなぁ。
異質さを受け流す真琴の鷹揚さが魅力的だし、妹ちゃんがぴょんぴょん跳ねることで、『異質さは異質である』という視聴者の常識にも置き場所があるのは良い。
ヘンテコな事をフツーに扱う面白さと、ヘンテコはヘンテコなんだけどそれはそれとしてフツーに暮らす靭やかさが同居していて、いい塩梅で世界が仕上がってますね。

真琴周辺の人間関係も非常にスムーズで、妹ちゃんは懐いてるし、新しい環境でも友達出来てるし、圭兄ちゃんも変に意識せず軽口言い合える仲。
『穏やかな関係があっという間に構築される世界の優しさこそが、一番のファンタジー』と言えなくもないが、人と人がぶつかって生まれる物語より、魔法が組み込まれた静かな日常をスケッチすることこそが、この作品の主眼なのだろう。
据えたカメラでじっくり芝居をさせ、抑圧の効いた落ち着いた画面を作ることで、その狙いはしっかり視聴者に届く映像になっているわけだ。
自分たちが何を作っているのか、しっかり把握しているフィクションは、信頼できるフィクションだと思う。
『食』という身近な感覚をメインに据え親近感を生むのも、オーソドックスながらよく効く手筋だったね。

そんなわけで、弘前のなんてことない毎日がスーッと胸に届く話でした。
おそらくは今後もこんな感じで、大したことは起きず(もしくは大したことは起きているが、それを大したことだと受け取らず)に進んでいくのでしょうが、それこそが俺の見たいものであり有り難い限り。
今後もこの調子で、弘前の美しい四季と、穏やかで温かい日常と、少しトンチキな魔法を捉え続けてくれると素晴らしいと思います。