イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第92話『ちょう絶クール蝶(バタフライ)』感想

主人公が仲間にも言えない秘密を抱え孤独に戦うアニメーション、今回はジュルルやりたい放題&新キャラ顔見世興行。
三年目のご新規さんへのキャラ紹介も兼ねて、学園の愉快な仲間たちをザラッと紹介しつつ、らぁらの困った子育てを描いたり、新たなる強敵を描いたり。
ふでやす先生の筆も乗りに乗りまくり、拾わないボケとワケワカンない才能表現と穏やかな母性が、ケーオティックに入り交じるプリパラらしい回でした。
いやホントね、マジ理解できないけど面白いっていうのは、なかなか体験できる感覚じゃないと思うよマジ。

タイトルと次回予告からは新キャラじゅのんに時間を捕るかと思いましたが、ジュルルに振り回されつつちゃんと面倒を見るらぁらの姿とか、三年目を迎えた愉快な仲間たちとか、色んな要素を盛り込んできました。
ジュルルは赤ん坊が持つ赤ん坊性を全開で振り回す赤ん坊でして、らぁらの都合などお構い無しで泣き、飲み、垂れ流し、眠る小さな暴君。
しかしその身勝手さを見守ってもらった結果としてらぁらも僕らも大きくなってきたわけで、それは安易に否定してはいけない、大事なことだと思います。
ジュルルが思う存分食べて泣きわめく描写がたっぷりあることは、赤ん坊の赤ん坊らしさを大事にした、とっても良い描き方だと僕は思うわけです。

無論らぁらも聖人君子ではなく、ジュルルに振り回される生活に疲れたり、怒ったりする。
そういう反応もまた安易に否定してはいけない大切なモノだし、同時にジュルルという弱い存在をどうにか守ろうとする決意とか、嵐のような日々の中で感じる掛け替えのない温かみとかも、忙しい展開の中でしっかり描いています。
偶然出会っただけの、育て上げるべき正当性がない赤ん坊なんだけど、らぁらはしっかりジュルルを愛おしく思い、面倒を見て守ろうとする。
この単純で真っ直ぐな慈愛心を照れなく描いているのは、主人公が主人公としてお話を支える、とても大事な部分に関わってくると思うわけです。
やっぱ、たとえ小学六年生であろうと、人間的に尊敬できる部分がちゃんとあるキャラクターがお話の真ん中にいたほうが、アニメ見てて楽しいもんな。

らぁらがジュルルを育てる展開は、明るい側面も暗い部分も引っくるめて全体験的に描かれているのであり、望むことばかりが起きるわけではない世界の都合の悪さも、だからこそ個人の創造力の限界を大きく超えて広がる新しい可能性も、全部ひっくるめて展開しています。
来週早速、赤ん坊を育てる大変さにらぁらが押し流され、一度ジュルルを手放す話が来ることから見ても、ただただ都合のいい時だけ主人公を頼る、赤ん坊性を剥奪された赤ん坊とじゃれ合うつもりは、プリパラにはない。
そういう『赤ん坊、全部任せてどんと来い』体制を今回しっかり見せたのは、ジュルルを育てることでらぁらが何を手に入れていくのか、期待が高まる凄く良い見せ方でした。


そんな感じで、二年間成長してきた主人公に投げかけられた新たな試練という顔も持つ、ジュルルの面倒見。
唯一相談可能な相手として、今回ものんちゃんがそのハードルをひっそりと上げていました。
のんちゃんが『パプリカ学園の誰かが、ジュルルのお母さんかも!』と吹きこまなければ、らぁらは仲間を信頼してジュルルのことを告白し、子育ての苦労も分散できていたわけで、非常に巧妙に『真中らぁらのハード・デイズ・ナイト』をコントロールしていますね。
かつて『お姉ちゃんに神アイドルになってもらって、それを私が倒す』という野望を語っていたのんちゃんなので、ジュルル育てを通じてらぁらが人間的に成長するのは、願ったり叶ったりなんでしょう。
限界に達するようなら、コントロールを緩めて頼れる仲間に情報を流し、サポートさせればいいわけだしね。
……ほんま策士やなあの子。

新キャラ二人にしても、声はどう聞いても田中美海さんだし、キャラ付けも既存アイドルのマッシュアップだしで、如何にもプリパラ最強の分析家のんちゃんらしいキャラです。
アイドルシーンを冷静に分析し、要素を抽出し組み合わせて別のキャラクターに仕上げるマッシュアップの上手さは、まさにサンプリング世代のアイドル理論といえます。
じゅのんの凄みの見せ方に関しては、まぁ勢いと訳の分からない面白さで一気に押し切ったなッて感じですが……ふでやす以外には扱えないウルトラCだなアレ。
あのクール大喜利のどこらへんが『クールアイドルとしての凄み』なのか、冷静になってみるとさっぱり分からねぇけども、なんとなーくじゅのんが凄いアイドルのように思えてしまうパワー勝負は、非常にプリパラらしい勝負の仕方だと思う。
ロジックを手放すことで理論の説明に当てる時間を短縮できるし、『うるせー!! プリパラの中ではとにかくすげーってことになってんだよ!! お前らも何となくすげー!! って気持ちになっただろ!!』と言わんばかりの豪腕で実際押し流されちゃう訳で、こういう無茶が通るコメディ力は強いわな。

トライアングルの掘り下げはジュルル周りのエピソードが一段落してからになりそうですが、機械の死を乗り越えた一期、遊戯と競技の境界線に挑んだ二期に並ぶ、アイドルアニメとしてのテーマ性をどう背負わせていくかは、とても楽しみです。
なんだかんだで鋭いテーマ性を、(それが本来のポテンシャルを完走出来たか否かは別として)しっかり背負わせているのは、ただのコメディでもキチガイアニメでもない、プリパラの強さの源泉でしょうしね。
ぶっちゃけ掘り下げていないテーマもあんまり無いように思えますが、それが視聴者の浅知恵であるかのような、気持ちいい横殴りを笑いとともに届けてくれるエピソードを、トライアングルには期待したいところです。


主軸二つをしっかり掘り下げつつ、今回は学園の描写も多く、キャラクターも沢山顔を見せる賑やかな回でした。
相変わらず凄い(隠語)雨宮くんとか、うっぜー徳田とか、すっかりガァルルのママンなあろまとか、仲良く授業を受けている小学生組とか、プリパラの方で話が盛り上がると結構すっ飛ばされがちな学園の描写が多くて、大満足の仕上がり。
俺、プリパラの暢気な学園描写、かなり好きなんだよね……三期では合間合間でいいんで、ゆるーっと写してくれねぇかな。
あと久々にふでやすのあじみ捌きを見たけど、やっぱモノが違うキチッぷりで、三年目ほんとにこの劇薬扱いきれるのか心配になったりもした。

『ジュルルのことを切り出したいが、BAKA達は笑い話として受け流してしまう』というコメディシーケンスの中で、みれいにらぁらの異常を気づかせ、笑いにかまけて薄情な感じを出さなかったのは技ありでした。
あそこでみれいまでネタで流されると、『あのJS好きすぎて頭おかしい女が、この異常事態に気づかないのはおかしくね?』と首捻っちゃうからな。
実際ジュルルの重荷を最初に受け渡すのなら、最初の仲間であるみれいだと思うので、そこへのブリッジになるシーンがちゃんと有ったのは良かったなぁ。
校長とニアミスした時は、『その人色々キチガイだけど、教育者としてはフェアリルゴールくらい頼りになるんで、ガッツリ事情全部ゲロっちゃっていいと思うよ』とか感じたがな!
それやると試練としてのジュルル育ての圧が弱くなるんで、ひとしきり経験値吸い上げてからになるがな!!

他にももはや人類の域を超えているそふぃとか、赤ちゃんはどこからくるの?トークとか、色んなキャラが賑やかに出てきて、プリパラらしいエピソードでした。
猛烈にインタラプトをかけてきたしおんさんは年齢的にも知ってるだろうし、終始だんまりを決め込んでいたレオナもバッチリなんだろうが、ドロシーはマジ知らないっぽいなぁ……。
まぁそういうことは"12歳。"先輩が扱えばいいことで、突っつきつつサラッと流すやり方はプリパラの対象年齢的には正しいんだろうなぁ。


そんなわけで、色々やりつつ土台がしっかりしている、プリパラの強みがドドンと出てきた回でした。
多幸感と訳の分からなさで一気に押し流すパワー勝負もしっかり決まっていて、その勢いが未だ衰えていないことを、まざまざと見せてくれましたね。
こういう話がドスンと入ってくると、今後の展開にも期待が持てるってもんです。

来週はジュルルとらぁらの間に早速一悶着ありそうで、どんだけ赤ん坊という題材を本気で扱うつもりなのか、視聴者に見せる回になりそう。
女児アニの赤ん坊の扱いにおいては"おジャ魔女どれみ♯"第四話の『赤ん坊から目を離した結果風邪を引かせてしまい、逃げ出して実の母親にビンタされ覚悟を決めた主人公が、苦しむ赤ん坊の鼻水を口で吸ってやる』という描写が最もストロングだと思っていますが、そこの領域までぶっこむのか。
はたまたハードコアな路線だけではない、プリパラらしさのあるエゴのぶつかり合いとなるのか。
今からとっても楽しみです。