イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第3話『わたし色の空へ』感想

高鳴る胸のBPMが少女を導くアニメーション、今週は凡才ゆめのファースト・チョイス。
『出来ること』と『やりたいこと』の間で悩むゆめの背中を、先生と先輩とイケメンがグイグイ押して、夢への飛翔の第一歩を踏み出すという、非常にストレートなお話でした。
『やりたいこと』に飛び込んでいく勇気を手に入れたゆめの描き方も良かったけど、それを後押しするサブキャラクターの描写をこれでもかと盛り込むことで、彼らの人格がよく見えたのが良かったですね。

酸いも甘いもしっかり存在する『普通さ』を作品の軸に据えているスターズですが、その主人公たるゆめはあんまりスペックが高くない、フツーの女子中学生です。
超人的なストイックさを持っているわけでもなく、世界に甘やかされているわけでもなく、フツーに臆病で、フツーに前向きで、フツーに他人のまごころを真っ直ぐ受け取って、夢に進んでいくことが出来る少女。
そんな彼女は当然一人では正解にたどり着けないので、彼女にヒントを与え勇気を燃え立たせる助言者は、この『フツー』の話においては大事になります。
キャラクターと世界観、物語構造の基本的なところを見せた第一話、ライバルとの関係を掘り下げた第2話に続き、主人公を取り巻く世界を大きく取り上げた第3話でした。

『フツーである』ということはともすれば何の努力も苦労もなく、ただ展開を垂れ流しにしていれば描写できるように思えますが、それを成立させるためには成功と失敗、逡巡と決断、才と非才をバランス良く描写し、『戸惑うこともある"けれど"も、だからこそ踏み込む勇気』に説得力を持たせなければいけません。
今回ゆめが辿った回り道と、戸惑う彼女を支え勇気づけ後押しした他者からのバックアップが的確に描かれていればこそ、『フツー』の話が面白く感じる。
そういうベーシックな勝負を怠けないことこそ、スターズの強さかなと感じています。


発声練習でかいま見えるゆめの実力の無さ、敗北を恐れて本当の願いに飛び込めない勇気のなさは、『やりたいこと』が解っていても叶えられない数多の凡人に彼女を寄せて、親近感を与える大事な足場です。
同時に出来ないことを大量に抱えさせ、それを補佐する仕事をサブキャラクターに割り振ることで、彼らが物語に存在する意味を強化もする。
今回ゆめに助言を与えたのは、アンナ先生、ローラ、小春、ツバサ先輩(に示唆を与える形で八千草先生)、結城君……こうしてリストアップしてみると、すげー人数に支えられてんな。
とまれ沢山の人がゆめを応援し、大事なものに気づくヒントを与えてくれる回であり、スターズの世界が厳しい試練と、それを乗り越えるのに必要な優しさを兼ね備えていると見せる回でもありました。
やっぱ『キャラクターの抱えた真心が、とても大事にされる』『努力や優しさが無駄にならない』ということを描写の中で見せてくれると、キャラを好きになれるし世界も信頼できるねぇ。

主役であるゆめを支えると同時に、サブキャラクターたちには個々人の生き方があります。
一度歌組という夢を諦め、八千草先生というメンターに出会って新しい戦いに飛び込み、今まさにかつての自分のように悩むゆめに道を示すツバサ先輩。
ゆめを徹底的に肯定して、ゆめ自身が気づかない強さを発見しつつ、美組という自分自身の夢への一歩も踏み出した小春ちゃん
自身のないゆめとは対照的に、的確に理想の実現に続く道を見据えつつ、サラッとした態度でライバルを勇気づけるローラ。
スターズの世界にいるアイドルたちが、それぞれ別の個性や夢を持っていて、しかし孤独ではなくお互い励まし合いながら頑張っている姿が、今回はよく見えました。

少女たちが夢を追いかける物語で、それを見守り支える『大人』の描き方はとても大事だと思いますが、今回は『二代目ジョニー』ことアンナ先生がしっかり教師をする様子とか、『萌えトランスフォームした月影先生』こと八千草先生のメンターっぷりとか、スターズにおける『大人』の描き方も見える回でした。
特に八千草先生の、一見ぶっ飛んでて面白いんだけど、ともすれば夢を諦めてしまったかもしれないツバサ先輩にしっかり道を示す教師力の高さは、とても良かった。
トンチキなことやって世界を賑やかにするだけではない、試練にまどう子供を見守り導いてくれる存在としての『大人』が作品世界にしっかり活きていると感じられると、今後の展開にも期待が持てるってもんです。

あと『変なアダ名で読んでくる、ムカつくけど気になるアイツ』であるところの結城くんも、爽やかなイケメン力に乗せて良いトスを上げてきて、なかなかやるじゃないという顔に。
『最悪の出会いから始まって……』という少女漫画の類型をキッチリ踏んでる結城くんですが、ガールパワーが世界を支配し、ジョニーと瀬名さん以外はそこまで存在感を示さなかった旧作とスターズがどう違うのか、一番クッキリ見せてくるキャラな気がします。
主人公ゆめとは、恋仲まで視野に入れた異性であると同時に、『アイドル』という同じ土俵に立ちうる先輩でもあるわけで、なかなか面白い転がし方出来んじゃないかなぁ。
今後あるだろう個別エピソードで、どういう掘り方してくるかを楽しみたいですね。


と言うわけで、オーソドックスな『出来ること』と『やりたいこと』の間の逡巡を丁寧に描きつつ、世界に存在する優しい人たちを手際よく描写する回でした。
フツーの悩みと真剣に格闘するゆめも、そんな彼女を支えつつ自分の夢に飛び立つキャラクターたちも、より好きになれるいい話でした。
『『普通であること』と正面から向い合って、山あり谷あり、だけどポジティブで前向きなお話をやるんだ!』というスタッフの気概が、静かに伝わってきましたね。

現状手堅くオーソドックスなお話を丁寧に回しているスターズですが、武器でもある『普通さ』を飛び越えたスターズの独自性を、今後見せられるのか。
そういう方面への期待も高まってきますが、しばらくは真っ向勝負の話が続くかな。
シリーズ全体の舵取りも含めて、今後のスターズがどう飛翔していくのか、楽しく見守りたいと思います。