イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

あんハピ♪:第3話『4月28日 はじめての幸福実技』感想

造られた楽園の中で少女たちが見る不幸な夢のアニメーション、今週はカイジみて~な地下帝国で新キャラ登場。
『幸福実技』というネーミングだけで頭がクラッとする邪悪さだが、相変わらず骨はバキバキと折れ、クレイジーな状況は加速し、感情のラインは温度を上げない。
新キャラ二人は百合アーツの型をざっくりと披露し、カップルであることをアッピールしておりましたが、個人的な好みとしてはもうちっと柔らかい所が見たいもんだ。

三話まで見たところ、『不幸』という障害を本気になって乗り越える上げ下げのドラマよりも、それを背景にして色んなシチュエーションを生み出し、賑やかに楽しむことがお話のメインのようです。
一般的な障害と克服のドラマが使えない以上、作中流れる感情の肌理は大事だと思うわけですが、このアニメにおける『好き』は楽しいゲームのツマとしてざっくり使われるものでしかない。
トンチキ学校のキチガイ授業の一環として『好き』という感情を押し流してしまえば、狂った世界で正気を保っている狂った女の子たちのお話を、僕の側に引き寄せる足場は(ただでさえ少ないのに)どんどん減っていく気がします。

『マジにならない』『シニカルに、お約束をキッチリ踏襲していく』という形の表現もまたあるんでしょうが、個人的な好みとしては、類型と狂気の中で一瞬、キャラクターに血肉が通う瞬間があってほしいなぁなどと願いつつ、僕はこのアニメを見ています。
それを『ゲーム』でサラッと消費してしまったのは、極めて惜しいなぁと思いました。
どっか一瞬、クレイジーな世界で踊り続けるステップを止めて『ああ、コイツラもマジで、本当の意味で傷つく瞬間があるんだな』と感じさせられれば、彼女たちが仮想の存在としてでもそこにあるという実感が届くのですが、今ん所そういう瞬間はない。
これは世界設定のリアリティラインとか、発生するイベントの狂い方とかとは関係のない、キャラクターの血肉の見せ方の話なので、『狂気の世界で、狂気に気づかずにいる狂気』というあんハピらしさとは両立できると思うんだけどね。

骨が折れても、不幸が襲ってきても、それは一瞬のイベントで真実シリアスなダメージはないし、傷が生まれない以上わざわざ頑張ってそれを治す努力も存在しない。
『一瞬たりとも本気にならない気楽さと、ポップで元気な気持ちの良さがウリなのであって、そういうアニメじゃねーからこれ!!』と言われれば、まぁ反論の準備はないです。
ただそういう世界なら、恋をしているフリなんてやんなきゃ良いのに……。
『テンプレートなドキドキシチュエーションを踏まえていれば恋と認められるのであって、そこに温度は必要ない』とするシニカルさも、このアニメの武器なんかね。
狙ってか天然かはしらんが、特化したジャンルが先鋭化しウケるシチュエーションが蓄積した結果、どうしようもなく持ってしまうニヒリズムを観察するには、ベストな教材だなこのアニメ。
そういう覚めた俺の横っ面を、問答無用で殴り倒す圧力のあるエピソードが来たら超嬉しいけど……さてはて。