イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

少年メイド:第2話『しっぱいは成功の母』感想

変態性と健やかさが同居する不思議なコメディアニメ、今回は美少女来襲と玉子焼きの思い出。
第1話で感じた奇妙な風通しの良さ、毛並みの良さは今回も健全で、ライバルになりそうなおっぱいちゃんは優しくて健気な良い子だし、友人たちもちーちゃんを気にかけてくれるし、優しい世界だ……。
無論変態性も優しさの奥で牙を研いでいて、デフォルトのメイド服だけではなく、私服にパジャマにいろいろお着替え、『美少年に色んな服着せて色んな幸せ味あわせたいんじゃああ!!』という
リビドーを強く感じる、温かいお話でした。

額に『テコ入れ』という聖印を押されてやってきた巨乳高校生美耶子ちゃんですが、一途で健気で前向きな、とっても良い子でした。
やっぱ『誰かの為に色々頑張って、でも地力だと一歩足らないので主役がアシストする』タイプのヒロインは、主役もヒロインも好感度バリ上げになるからええのう。
おじさんと桂一郎さんだけだとどうしても男の世界になってしまうし、彼らは友人というよりも保護者なわけで、年齢が近しい異性がこのタイミングでお話に入ったのは、良いスパイスだなぁ。

美耶子登場エピソードはAパートのみの短い作りなんですが、初対面のちょっと硬い感じから家事を一緒にすることでだんだん打ち解けていって、心の距離が縮まる様子がうまく描かれていました。
言葉遣いや身体的距離を細やかにコントロールすることで、見知らぬ関係だった二人が時間を共有し、お互い支え合うような間柄になった事実が視聴者にも伝わってきて、上手い見せ方だなと思いました。
こういう作業を怠けないことで、最初っから感情が用意されているのではなく、ちーちゃんや美耶子がわざわざ頑張って相手を思いやり、苦労を共にする『選択の良さ』が浮かび上がってくるわけで、ちーちゃんの成長物語という側面を持つこのアニメでは、大事なところだと思います。
コメディの味わいを壊さないように、こういうまっとうでベーシックな部分をあんま声高に歌いあげない所が巧い。

『閉じた貴族の館で、少年をメイドにする』というインモラルさがこのアニメのスパイスになっているのは間違いないわけで、そこに割り込んでくる形の美耶子の間合い取りは、なかなか難しいと思います。
『円は恋愛対象ではないけど、尊敬はしている』『桂一郎にはラブ』『ちーちゃんは家事の先生であり、大事な友人』という三者三様のポジショニングは、ひっそり漂う隠微な空気を壊すことなく、足りない部分をしっかり埋めた良い配置だと思います。
特に年下のちーちゃんを『先生』と位置づけることで、彼の武器である『家事』の尊さや、歳に似合わない成熟した人格、『お前は褒めて伸ばす系オカンか』と突っ込みたくなる包容力が表現できるわけで、大事な仕事をしっかりやったなぁ。
どうやっても、円相手だと『被保護者』になっちゃうからね。
多角的な描き方を可能にする『窓』になるキャラクターは、大事だし必要。

そういうメタ的な評価だけではなく、いろんなことに思い悩みつつ、元気に明るく出来ることをやろうとする美耶子は、一人格として好きになれるキャラクターでした。
やっぱ、誰かの為に頑張ってくれるキャラは見てて気持ちがいいし、このアニメに爽やかな味わいがあるのは、登場するキャラクター全員がそういう優しさをどっかに持ってるからだろうし。
エキセントリックな変人である円ですら、そのエキセントリックさが他人の幸せになるよう、丁寧に立ちまわってるしなぁ。
そういう世界から浮かび上がらず、むしろ世界のルールを強化する意味合いでも、美耶子がキュートガールなのはとっても有りがたかったです。


Bパートは"少年メイド"の『少年』の部分を確認しつつ、円と千尋の関係をほっこりと描くお話。
千尋の友人たちの人間強者っぷりがとんでもないことになっていて、この世界は楽園なんじゃないかと周囲を三回見渡したりした。
『学校』の友人をしっかり描くことで、『家』の外側の世界に視野が広がって、千尋の可能性がいろんな方向に羽ばたくための足場になってるのは、とっても良いね。
舞台を広げることで、私服も描けるしね!
パーカー可愛いなぁ……。

しかしこの話のベーシックはあくまで『家』『家族』にあるわけで、弁当を通じて『血縁』である円とのつながりを確認・強化していく今回のお話しは、足場固めとしてよかった。
姉であり母であった存在(とその喪失)は、どんなに美耶子や友人が良き隣人であっても共有できない、円と千尋二人だけの特別な結節点であり、今の状況を生み出す大事な足場です。
故人の思い出を共有することで二人は繋がっているわけで、関係の一番強いかすがいを確認することで、『少年メイドで即席家族なんだけど、お互い大事』という二人の現状をしっかり見せてきたのは、とってもグッド。

これを確認するために『卵焼き』というアイコンを使ってきたのも、千尋が唯一世界に立ち向かうための武器である『家事』の力を再確認する事が出来て、とっても良かったです。
『家事』という卓越性があることで、千尋が円の一方的な被保護者にならずにすんでいる(という状況を、円が無言で創りだしている)わけで、その価値とプライドを確認するのは、彼がいろんなことを学び自分を大きくしていくこの話では、凄く大事だと思います。
ここら辺は、美耶子パートでもひっそり描かれていた部分ですね。
美麗な絵の力をしっかり使って、『美味しそうなご飯』や『清潔な部屋』が持つ良さを強調し、千尋が持ってるパワーを目に見える形で伝える努力がしっかりしてるのは、やっぱ良いな。


つーわけで、少年メイドを取り巻く優しい世界がどうやさしいのか、そんな世界の中で少年メイドに何が出来るのか、良く分かるお話でした。
『世界に放り出された少年が、様々な人と触れ合い、様々な人を助けながら成長していく』というベーシックなお話の強さを積み上げつつ、『うるっっせええ!! 美少年を思う存分描くんじゃ!! あと巨乳で健気で許嫁な高校生ッ!!』というリビドーも炸裂させる、欲張りリッチなアニメだなぁ。
世界の優しさが無条件で担保されているわけではなく、色々頑張って優しくなろうと努力している感じを今回も受け取ることが出来て、心地良い視聴体験でした。
良いアニメだなぁ少年メイド……EDのゆめいろアイドル達は、いつ本編に登場すんのかな……。