イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第4話『虹村兄弟 その2』感想

今週のゆるふわ異能力日常アニメ(血しぶきアリ)は、億泰との心の交流とVSバッド・カンパニー
前回から人の良さが透けて見えていた億泰と仗助を交流させることで、二人の魂の色をクッキリ浮かび上がらせつつ、序盤に出てきて良いのか悩むレベルの強敵・バッド・カンパニーとの死闘に決着をつける回でした。
正体不明の敵に向かい一歩ずつ踏み込んでいくホラーな部分も良かったし、能力が判明してからのぶつかり合いも非常にグッド。
映像になると、群体スタンドは独特の存在感があるなぁ……書くの大変そうだけど。

仗助はこれまでのジョジョにはいなかった、ヒーラー型の主人公であります。
『殴る』だけではなく『癒やす』というパワーを使うことで、ヒーローは何故ヒーローなのか、中々描けなかった部分もかける。
今回億泰という『敵』を『殴る』のではなく『癒やす』ことで心を通じさせ、一回だけの手助けを貰う一連の流れは、クレイジー・ダイヤモンドという『一番優しい能力』を主人公に持たせた理由を存分に活かしていて、とても好きなエピソードです。

仗助はちょいワル高校生なので、『法律でそうなってるから』とか、『倫理的にそうしなければいけないから』という外的な理由で人命を助けはしません。
億泰を助けるのも『なにも死ぬことぁない』と仗助自身が思ったからだし、ダチである康一を助けるべく危機に飛び込むときには、ヤバいと分かっていようと突っ込む。
彼の行動はそのダイヤモンドの魂から湧き出てくる、嘘偽りと打算のない、真っ直ぐなものです。
見返りを求めるでもなく、己の身を大事にするでもなく、為すべきことを迷わず為せる仗助は、お話し始まったばかりだけども倫理的にはかなり完成された主人公といえます。
まぁ普段の生活は相当にバカでワルなんだけど、そういう所も可愛くて宜しい。


未完成な存在から一歩踏み出したのはむしろ億泰の方で、康一という他人を文字通り踏みにじり、兄という身内に踏みにじられ、仗助という他人であり『敵』でもある存在に助けられることで、兄が用意した罠から仗助を助けるという、倫理的な行動を取ります。
強烈な自我を持つ兄に影響され、悪を成していた億泰ですが、仗助の無私の助けを意気に感じて、その影響から抜け出して為すべきことをする。
この成長が『閉鎖された家から出る』という行動で分かりやすく示されているのは、なかなか面白い表現です。

窓が目張りされ、門も閉ざされた虹村家というクローゼットから一歩踏み出し、より広い認識を手に入れるためには、仗助の理屈に合わない行動が必要だった。
しかし億泰のこれまでの人生には、兄の暴力含みの行動しか焼き付けられていないわけで、仗助の『癒やし』は彼には理解不能なわけです。(心の奥底では理解しているからこそ、その意味を問うたんでしょうが)

仗助が代表する『日常を守るための非日常』と、形兆が代表する『日常を壊すための非日常』、二つの立場の間で揺らいでいればこそ、億泰は一度だけ借りを返し、守る側にも壊す側にもつかない、しかし両方の戦いを見守る位置を選択する。
仗助がその身を持って証を立てた内発的な倫理性はまだ億泰には生まれていないんだけど、その萌芽があればこそ、彼自身も理屈に合わない行動を取り、自分なりのスジを通すわけです。
ここら辺の迷いと決意が今回はしっかり切り取られていて、非常に見応えがありました。

クレイジー・ダイヤモンドが『癒やし』たのは億泰の肉体だけではなく、魂もそうであるというのは、傷を治癒された後露骨にケンの取れたデザインに変わっているところからも見て取れます。
漫画が記号表現のメディアである以上、『敵』から『将来的には味方になるかもしれない存在』に切り替わったことは、しっかりヴィジュアルで表現しなければいけないわけですが、そういう部分を超えた何かが億泰と仗助の間で通じあったことがちゃんと分かるのは、とても良いことです。
閉ざされた家での経験と、そこから釣れだしてくれた仗助との出会いを経て、億泰が変わっていくのはこれからの物語。
彼が今後たどるだろう遍歴(それは厳しい戦いだけではなく、ボンクラ男子高校生の愉快な日常も含む)に、強く期待が高まる展開でした。
やっぱ億泰は可愛いなぁ……感情表現が素直なところがチャーミングよね。


仗助を支えるもう一人の友人、康一くんもスタンド使いの世界に入門していました。
まぁ一人だけスタンド認識できないと不自由で仕方ないから、早い段階で目覚めさせるのは良い判断だ。
仗助がスタンド使いとしても人間としてもかなり完成されているので、入門者としての視点を担当するキャラもいるしな。

しかし彼が目覚めたのはなーんの役にも立たない卵の力でして、直接的に形兆をぶっ飛ばす力になるわけではありません。
ただし彼は、無力だからといってブルブル震えるだけの古臭いヒロインではけしてなく、無力なりに勇気を振り絞って行動を起こそうとする、筋金入りの魂の持ち主でもあるわけです。
『人間讃歌は「勇気」の讃歌ッ!!』ってツェペリさんも言っていたように、殻も破っていない康一くんは、既にこの世界で活躍する一番大事な資格をしっかり持っている。
結果として兄貴の裏拳一発でノサれてましたが、小さな体に似合わぬ彼の勇気がしっかり描かれていたのは、今回非常にグッドなところです。
康一くんのカッコ良い所は、おそらく次のエピソードでみっしり見れるので、とても楽しみですね。


後半は形兆兄貴とのスーパースタンドバトルになりましたが、圧迫感のある閉鎖空間の演出が冴え渡り、数で押してくるバッド・カンパニーの不気味さが上手く出ていました。
小さな穴が無数穿たれる攻撃の『地味に痛そう』な感じとか、気づけば忍び寄ってくる『小さい故の恐怖』とか、映像になってみるとぐっと胸に迫るシーンが多くて、凄く面白かったです。
こういう変則的な能力をしっかり描けるのは、能力バトルに必要なワクワクを盛り上げる最大の武器だよなぁ。
閉ざされた屋敷の圧迫感を強調することで、勝利と同時に壁に風穴が相手光が差し込んでくる時の開放感もグッと強まるのは、良い演出だった。

スタンドバトルが能力者の金字塔になったのは、シンプルな基本ルールと知略を尽くしたその応用を徹底しているところだと思います。
クレイジー・ダイヤモンドの『癒やす』パワーを、必殺のカウンター攻撃につなげる決着の仕方とかは、この強さがよく出ていて凄く好き。
『釘攻撃を撃ち落とした、無敵の防御で守れなかったの?』という疑問も浮かんだけど、強敵を宣言通りに追い詰めとどめを刺すという状況が油断を産んだ……んだろう。
形兆兄貴が予定通りにキッチリやりたいタイプだってのは、今回しっかり強調してたしな。
むしろそういう性格を利用するために、冷静に状況を組み立てた仗助が高校生離れしていると見るべきかなぁ……。

戦いには一応決着がついたんですが、形兆が何故他人を踏み台にしてスタンド使いを量産していたのかは、未だ不明です。
アンジェロ戦は改心の余地のない『敵』との戦いだったんですが、億泰とのやり取りを見ても分かるように、このエピソードでは『敵』と『味方』、『日常を守るための非日常』と『日常を壊すための非日常』の境界線が、案外薄いことを示すエピソードです。
億泰とは違い、一線を越えて『日常を壊すための非日常』を選んでしまった虹村形兆が、一体何を望んでいるのか。
形兆が隠したかった秘密が明らかになるシーンは、四部でも一等好きなシーンなので、来週が激しく楽しみです。


と言うわけで、兄の重力に捉えられた青年が一歩を踏み出し、誤った一歩を踏み出してしまった兄が敗北するお話でした。
こうして見返してみると、映像的なシーンの組み立てと、作中起こっている行動の意味がしっかり噛み合っていて、凄く意味合いの濃いエピソードだと思います。
スタンドバトルが持つ異能の気持ちよさもしっかり出ていて、恐怖に興奮、戦慄に衝撃などなど、色んな感情が心の奥から湧いて揺さぶられる、横幅の広いお話でしたね。

来週は戦いの真相を解明して状況を一旦終え、次のエピソードに繋ぐお話になりそうです。
俺の億泰がいい感じに最高だったので、康一くんのかっこいい所もズビッと決めてくれると嬉しいなぁ。
あとかわいい男子高校生のゆるふわエピソードも、そろそろ見たい。
四部って序盤、結構上げ下げの話いバトルエピソードが続くんだよなぁ……それはそれで大好きなんだけど、ボンクラ共が思う存分ボンクラ力を発揮するお話も大好きなので、このアニメ化がボンクラ力をどう料理するか、早く見たくもある。
どっちにしても凄まじく楽しみってことですね、まとめて言うと!