イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ふらいんぐうぃっち:第3話『畑講座と魔術講座』感想

弘前と魔術が交錯する時、物語は始まったり始まらなかったりする!! 系アニメーション、今週は畑と姉の二本立て。
畑を作ったり、久しぶりに魔法使ったりしたら30分終わっているという、贅沢な時間の使い方をガンガン振り回すお話で、とても心地よかったです。
全体的な空気を壊すことなく、上手いこと仕草の中に気持ちや生っぽさを埋め込めているのが、特になんにも起きないのに気持ちいい秘訣なのかなぁ。

今回はタイトルにもあるように、真琴が生徒となって弘前の畑仕事を学ぶAパートと、魔女達が先生役になって弘前に魔法を教えるBパートで構成されています。
魔法と田舎はどっちが上に立つでもなく、キャラクターを取り巻く緩やかな日常の一部として、特に派手な主張もなく流れ去っていく。
しかしそこには個別の色がしっかりと存在していて、何てことない毎日なのだけど、その構えない姿勢が気持ちよさでもあるという、良いバランスが維持されています。
この『主張はしないけど、スッと入ってくる』情景を作るには、パット見の緩さとは裏腹に様々な手管と情熱、努力が動員されているわけで、いわゆる『日常系』を作るのも大変だなぁと、頭がさがる思いです

畑パートはじわじわと手順を踏んで、みんなで仲良く一つのことを成し遂げていく小さな実感が良かったです。
妹ちゃんがすっかり真に懐いていて、何かと腕の間に収まろうとする磁石みたいな距離感が、見ていて凄く安心する。
あと兄ちゃんの仙人みたいな枯れた対応な……すーっと流してんだけど、ちゃんとお互いを信頼し尊重あう関係がじわりと感じ取れるのは、人間関係観察アニメとして楽しいところだ。

畑を作るといういわば『静中の動』のシーンだけではなく、その合間合間の休憩シーンもしっかり描いていたのは、なかなか良かった。
波風少ないなりに『静中の静』をしっかり描くことで起伏が出来るのもあるし、『働き・休み・飯を食う』という、人間誰しも行う行動をじっくり捉えることで、仮装人物に血が通ってくる意味合いもある。
キャラクターの衣食住に丁寧なコダワリがあることは、ドラマの派手な起伏で存在感をアピールできない以上、とても大事なところだと思うわけです。
『あのカントリーマアム、美味そうだなぁ……』と視聴者が思うことで、このゆったりした優しい世界に親近感を覚え、世界にまた一歩近づくことが可能になっているわけで、気を配ってくれるのは嬉しい。

細かいクスグリが品よく楽しいのもこのアニメの好きなところで、弘前弁講座とか、尻もちの天丼とか、キジ乱入とか、しょーもない笑いどころでちゃんとクスリとさせてくれるがありがたい。
僕は『アニメーションに切り取られた動物』が大好物なので、キジの生態に力を入れてくれたのは、個人的嗜好にバッチリクリティカルな描写でしたね。
真琴の尻もち描写はそこはかとないフェティッシュも感じられ、とてもエエもんですな……タイツといい髪といい、『黒』のエロティシズム大事にしとるね、このアニメ。


後半は久々に魔法を使う展開であり、『新キャラ出しておいて15分』という、このアニメらしい時間の使い方。
『主人公の姉』『新しい魔法』というイベントも、特に派手な主張なくすーっと受け流す姿勢というのは、自分たちの描きたいものを一貫して捉えている感じがあってよいです。
魔法自体も『カラスが来る』で地味だしなぁ……と思いつつ、『日本-アフリカ間の長距離瞬間転移』という派手なオチを付けて、視聴者に『!?』って感じさせるところとか好きよ。

前回登場した春を告げる怪人物に続き、妹ちゃんがまた不審者に応対する出だしでしたが、天丼の楽しさあり、日常に異常が侵食してくるなんとも言えない可笑しみありで、好みのタイプのスタートでした。
美術に相当力入ってるアニメなので、同じシチュエーションで動植物の変化をしっかり見せて、時間経過を視聴者に伝える意味合いもあるのかなぁ……畑という定点観測値を作ったことで、巡る季節の変化がが更に分かりやすく見えてきそうなのはグッド。
現実の弘前よりもおそらく美麗な世界をしっかり作ることで、一種の『旅番組』的な楽しさもあるのは贅沢だよね。
『魔法特訓』という言葉の非日常性が、『神社の隅っこ』という日常味溢れるセッティングと奇っ怪なミスマッチ起こす楽しい目眩は、神社の風景がしっかりしているからこそ生まれるわけだし。

新キャラであるお姉ちゃんは、レギュラーにはあんまりいないアッパー気質の人で、お話の毛色が変わるアクセントとして楽しい存在でした。
元気を表に出すタイプなんだけど、お話の空気を壊さない穏やかさも兼ね備えているところが、このアニメのコントロールの巧さを感じさせる。
妹の様子を確認し、弘前を楽しむだけ楽しんだらサラッと帰ってしまう気離れの良さとかも、好きになれる部分だなぁ……時々瞬間転移して、バーっと話をかき回して欲しいキャラだ。

そんなわけで、小さなイベントがありつつも、弘前の初夏もまた穏やかというお話でした。
非常に心穏やかに楽しめるアニメでして、見るたび『ありがたいなぁ……』と思いつつじんわり飲み込んでいます。
季節の描写がとても心地よいので、作中の時間が行き過ぎ、弘前がまた別の顔を見せてくれるのも楽しみ。
次回はまた少し時計が進むんでしょうが、どんなことが起きて、どんな風に素敵な日常の一側面を切り取ってくるのか。
穏やかに期待が高まりますな。