イマワノキワ

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機動戦士ガンダムUC RE:0096:第4話『フル・フロンタル追撃』感想

戦争が終わった時代のもう一つの戦争の物語、故郷を追われたとしてもそれは物語の始まりにすぎない第4話。
堂々3分超えの前回のあらすじに始まり、UC計画やらユニコーンやらシナンジェやらフル・フロンタルやら、設定の洪水をワッと浴びせかける回でした。
ボッ立ちでベラベラ喋る退屈な絵は避けて、強敵による単騎襲撃で緊張感を作りつつ、色々説明してくれるサービス精神が嬉しいですね。

インドストリアルセブンを抜け出し、ネェル・アーガマという『移動する閉鎖空間』に舞台を映したUC。
少し状況が落ち着いたので、前回まではあんま目立たなかった人たちが元気になってました。
額に『汚い金持ち』と書いてあるアルベルトさん、その影響下にありつつ独自に動くMr.スペシャルフォース・ダグザさん、爽やかお兄さん・リディ少尉と頼りない館長。
それぞれの思惑と権益を背負い、運命共同体に必要な統一性が全く感じられないネェル・アーガマは、現状泥船としか言いようがありません。
億泰声のアルベルトおじさんは、ギャーギャー状況をかき回し、どれだけフル・フロンタルシナンジュが強敵かを強調する、良いトス上げNPCだと思う。
今後激しい戦いの中でいろいろ分かり合ったり衝突したりして、このワチャワチャした状況も落ち着いていくんですかねぇ。

大人たちの混乱を他所に、バナージ君は主人公として文句のない動きを的確にこなし、今後心を通じ合わせる足場を作っていました。
公人ミネバ・ザビの『為すべきこと』ではなく、あくまで自分が出会った一人の少女オードリー・バーンの『やりたいこと』を確認しに行く姿勢は、大人のエゴと権益が複雑に絡み合い、快刀乱麻を断つ瞬間を待ちわびている物語の主人公として、非常に立派だった。
今ん所見えてるお話の構図としては『色々面倒くさいことに囚われ、本来の自分を見失っている大人』を、『何もわからないがゆえに真実に辿り着く子供=バナージ』が開放していく話なのかなぁ、と感じています。
バナージ君は物憂げに伏せた目線があまりにもセクシーで、「父親だって言えば納得するんですか……」の時のおじさん殺しっぷりに凄く説得力があった。
今後もバナージ君が面倒くさいオッサン達をどんどん籠絡し、チョロチョロさせる話だと俺は嬉しい。

そんなバナージ君の餌食一合になりそうなダグザさんだけど、一見石部金吉のように見えて頭が切れ、混乱する状況で有効手を打てる唯一の存在っぽい。
『ここにミネバがいるぞ!!』と公言してしまうことで、ジオンの威光を気にしなければいけないフル・フロンタルの足を止めようとする手筋は、中々思いつかないだろう。
唯一惜しいところがあるとすれば、アバンのあらすじ振り返りで既にネタバレされていたことだけだ……。
あのアバン、第1話アバンのテロ事件の真相とか、そこで生き残ったジジイがビスト財団始祖だとか、超重要情報がみっしり詰まりすぎパなしすぎだったよ!

ダグザさんに取引材料に使われてたミネバ=オードリーだけど、公人としての意識が高い彼女は、このあとやってくるだろう不都合とか全部込みで取引に同意しているのだろう。
意識高いのは立派なんだが、そこに指摘なモチベーションが伴わなければ人は動かず、歴史は変わらないわけで、バナージの一言はいい具合にオードリーの急所を突いた形になる。
しかし生まれた時からザビ家の女で、その後はアクシズに亡命して歪んだ教育を受け、私人としての時間が殆ど無かっただろうミネバに『本当にやりたいこと』を聞くのは、結構残酷な気もする。
オードリーが抱えた物語は、無意識にずるい振る舞いをしてでも公人として『為すべきこと』を優先してしまうバランスの欠いた状態を、バナージや他の人々とふれあう中で是正していくことなんだろうか。
バナージの突っつきが良かったので、姫様の人格成長物語にも期待である。

一方すげー綺麗な顔して『俺は完成品だぜ?』みたいな顔してた浪川声のリディ少尉だが、バナージに嫉妬の炎をメラっとさせたり、オードリーに健全なモーションかけたり、悪落ちするフラグが既に山積みだった。
オードリーとバナージ君の甘酸っぱい恋愛は凄く完成度が高くて、リディ少尉必死のアピールも噛ませ犬として使われる未来しか見えないんだよなぁ……。
上司もすげーあっさり死んじゃったし、今後も試練が振りかかるような気がしてならん……どうなるのかね。


そんなネェル・アーガマに襲い来る赤い彗星(偽)は、すげー強いんだけどなんか空々しい感じで、不思議なライバル候補だなぁと思った。
最新の作画技術で再現される『三倍の速さ』とか、的確に対空砲座を潰しMS部隊を手玉に取る戦い方とか、強さの説得力はあるんだが、あまりにもシャアのポーザー過ぎて気持ちが悪い。
これは狙った視聴感だと思うので、何らかの設定的仕掛けが埋め込んであるのだろう。
あと前髪イジリそうなカッキー超えの紫野郎が、舐めプしてきててムカつくね。

ミネバの存在が明らかにされたことで、『袖付き』の首魁たるフル・フロンタルも次回これに答えなければいけないだろう。
アニメだけ見ていると『袖付き』がどういう政治的主張を持ち、何を優先して行動している集団なのかはいまいち掴めないわけで、ダグザさんの『ミネバ・ザビ此処に在り』は彼の優秀さを示すだけではなく、敵の顔を照らしだす良いトスでもあると思う。
姫様を直接預かってたっぽいジンネマンさんたちと、レウルーラの『袖付き』主流派で政治的主張も違うのかもしれんけどね……なんか嫌味言ってったしさ。

今回はフル・フロンタルの脅威で緊張感を維持しつつ、色んな設定を出してくる回だったと思います。
とは言うものの、自分が理解したのは『ユニコーンは超スゴイ級に凄いインチキモビルスーツ』『フル・フロンタルは超スゴイ級に凄いインチキパイロット』『シナンジェはアナハイム製で、襲撃されて略奪された(ってことになってる)スゴイ級モビルスーツ』くらいだが。
まー僕はMS設定資料集読んでいるのではなく、MSという暴力装置を使って描かれる人間のドラマをこそ楽しんでいるわけで、こんぐらいの理解でもいいだろう多分。

と言うわけで、一難去ってまた一難、世界は主人公を休ませてはくれない回でした。
『驚異的な腕前を誇る赤い強敵に立ち向かえそうなのは、我らがユニコーンガンダムとバナージ君だけ!』という、PC1の当事者性がドライブするセッティングがどんどん加速しております。
しかし出撃すればガエルさんの言ってた『極刑』も近づいてくるわけで、ここら辺のややこしい状況どうすんだろうなぁ。
ミネバ・ザビ此処に在り』に対する反応、おそらくあるだろうMS戦の超作画。
来週もまた、色々と楽しみです。