イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第93話『ジュルルの大冒険』感想

三年目のプリパラは、やること多すぎマジ大変!!
やりたい放題し放題に赤ん坊してるジュルルに、等身大の小学六年生(永遠)が育児疲れに追い込まれ、ネグってみたのは良いものの、良心の呵責が凄い勢いで炸裂するお話でした。
同時進行で新アイドルぴのんのステージやったり、パチスロの確変イベントみたいな神アイドルチャレンジをやったり、色々やってたなぁ……。

イベント目白押しで忙しない展開でしたが、今回の『らしさ』を巡る物語はかなり巧みに語られていたように思います。
ジュルルの身勝手で弱々しい赤ん坊『らしさ』と、それを受け止めきれずに手を離してしまうらぁらの子供『らしさ』、そこから生まれた喪失を取り戻すべく奮戦するママ『らしさ』は、よく強調されていました。
ジュルルの危機に思わず駆け上がった木の高さに気づいて『ママー!』と言ってしまうシーンからも分かるように、らぁらはまだ小学六年生の子供であり、『ママ』に保護されて然るべき弱さを持っています。
しかし運命が赤ん坊を連れて来て、それを受け入れてしまった以上、らぁらは自分より弱いもののために自分の身勝手さをコントロールし、守り育む『ママ』の立場にならないといけない。
ここら辺は三年目にあたって対象年齢を下げ、『みんなを引っ張るお姉さん』という立場に立ったらぁらが今背負うべき『らしさ』なのでしょう。

しかしそれは痛みとか疲れとか、人間的なアレソレを抑圧するしんどい道でして、今回はらぁらが感じる人間的な疲弊も、丁寧に描かれていたように思います。
ここら辺は、とにかく口に入れてみるし、目を離せば一瞬でどっかに行ってるし、何にでも興味示すし、周囲を振り回す赤ん坊のパワフルさを、真正面から描いてきた成果だと思います。
登場からずっと、ジュルルが大迷惑な存在だと描き続けてきたからこそ、今回らぁらが追い込まれて疲れきってしまう描写にも一通りの納得は行くし、赤ん坊としてのリアリティも宿る。
思い通りにならないけど、だからこそ一緒にいることで世界が広がっていく『他者』の象徴として、ジュルルの描写は赤ん坊『らしさ』から逃げては来なかったわけですし、それが生み出す軋轢と幸福を描写するのが、今回のキモになります。

人生経験を積んだ大人が、納得づくで産んでもしんどい赤ん坊のパワフルさに、偶然『ママ』になっただけの『子供』であるらぁらは、どんどん追い込まれていきます。
今回の大騒動はジュルルの『赤ん坊らしさ』とらぁらの『子供らしさ』、そして子供らしからぬ『ママ』の立場が、相互に衝突を起こした結果のようにも見えます。
やりたい放題世界に興味を示すジュルルを叱りつけ、デバイスという都合の良さに押し込めることが災難の始まりになることからも分かるように、三年目のプリパラは『らしさ』を抑圧することを肯定はしません。
誰かが身勝手に誰か『らしく』あることは当然マイナスの帰結をもたらすけども、それも引っくるめて受け止めることの大切さと、理屈を通り越した真心の意味。
思いの外教訓的なそれが上から目線の説教になってないのは、状況がどんどんマヌケな方向に転がっていくテンポの良さと、コメディな状況の中で一人真剣ならぁらの表情故でしょう。

最初はジュルルの身勝手さから開放されて気楽さを感じていたのに、どんどん不安になってきて、半分以上ノイローゼのように追い込まれていく。
今回らぁらが体験するのは、『私の都合の良さにお前が合わせなさい!』というアバンの誤答から、『色々迷惑もかかるし、助けるべきロジカルな理由もないけど、そういうの全部ぶっ飛ばしてジュルルが大事!』という結末に至るまでの、山あり谷ありの大冒険です。
視聴者にとっては喜劇でも、らぁらにとってはシリアスなストレスの物語であり、取り返しの付かない失敗の物語であり、必死になって然るべき贖罪の物語です。
ここら辺のギャップで笑いを作りつつ、らぁらの心の流れを丁寧に追いかけていたのは、今回とても良い部分でした。

コミカルな追いかけっこの末にジュルルを掴まえようとする時、らぁらは靴を脱いで裸足になる。
それはどんどん埃にまみれていく制服と合わせて、色んな矛盾の間で混乱していたらぁらが追いつめられ、余計なものを振り捨て必死になって見つけた、素直な答えの象徴でしょう。
混乱し疲弊した状況から此処に辿り着くまでの旅路を、トンチキなボケと笑いで飾りつつも、らぁらの気持ち自体には嘘をつかずしっかり展開する。
『子供』なのに『ママ』になってしまったらぁらと、思う存分赤ん坊『らしい』ジュルルの間に何があるのか、しっかりと視聴者に見せる回だったと思います。


ジュルルの暴れっぷりがあまりにもガチなので、そろそろらぁら単独で面倒を見るのも限界に来ています。
今回もみれいに真相を告白しようとしたわけですが、最高(最悪?)のタイミングでのんちゃんがアリバイ作りにやってきて、ぴのんのステージを大公開してインタラプトかけていました。
そんなに姉をノイローゼに追い込みたいのか、妹よ……来週ようやくカムアウトが成功し、育児負担が仲間内で分担されそうで、ひとまず安心ですけどね。

らぁらとジュルルの追いかけっこが一段落し、ステージノルマを解消しつつ説明された神アイドルですが、正直急だしよく分からんです。
話の展開がどうあれ『神アイドルグランプリ開始』というスケジュール自体は決まってしまっているので、取り敢えず今回ねじ込んだって感じがして、いまいち忙しない。
まぁそういう無理くりなつなぎ方自体を笑いにしてしまうパワーがプリパラにはあるんですが、ジュルル周りの感情変化の追いかけ方が丁寧だっただけに、『神アイドルグランプリ開始』はねじ込まれた印象が拭えんのう。
新要素の紹介が一段落ついたら、個別エピソードを上手く使って『神アイドルグランプリ』にキャラクターがどういう感情を持っているのか、丁寧に追いかけて欲しいものだ。
とりあえず、さっきまでオムツ替えててた娘がいきなり空から降ってきて、装飾モリモリなマイクスタンドを手渡し上から目線で『YOU神アイドルなっちゃいなYO!!』とか言ってくるのは、面白くてしょうがない。

つーわけで、あくまで赤ん坊『らしく』大暴走するジュルルと、それを背負えないらぁらの子供『らしさ』、それでも背負おうとするママ『らしさ』を追いかけっこの中で確認するエピソードでした。
消化するべき要素がたっぷりある中で、複数の『らしさ』を都合の良さで押し込めるのではなく、思う存分衝突させた先にある成長をしっかり描いたのは、とても良かったと思います。
今回らぁらが自分の裸足の気持ちに辿り着いたこと、来週ようやく社会的なケアを受けれそうなことで、ジュルル周りは一段落かなぁ。

ジュルルが落ち着いても、新ライバルであるトライアングルの描写もしなきゃならんし、神アイドルグランプリにまつわるあれそれも描かなきゃならんし、三年目のプリパラは大忙し。
しかし結局、今回らぁらにジュルルを追いかけさせることで生まれる笑いと、障害を乗り越えて本当の自分『らしさ』に辿り着くオーソドックスな成長物語の並立こそが、プリパラの強さだと今回改めて思いました。
最強の武器が健在だと確認するエピソードの後に、どういうお話を続けてくるのか。
いろいろ興味深いところですね。