イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツ スターズ!:第4話『いつだって100%』感想

アイドルの一番星を目指して少女が走るアニメーション、今週は始めてのお仕事。
とは言うものの、いきなり大抜擢で主役の舞台というわけではなく、舞台裏からアイドルの仕事とトップスターの輝きを確認し、小さな発見を手に入れるというコンパクトなお話でした。
ゆめの一人称的視点で進んだ話ですが、彼女を鏡にしてローラやひめ、夜空の現状や変化も見ることが出来る、中々面白い回だと思いました。
このお話が今後、スターズの仕事論・成長論を観る時の、一つの物差しになる感じかねぇ。

以前のお話でも描写されていたように、ゆめはまだまだファン気質が抜けないアイドル候補生です。
そんな彼女が裏方の仕事を割り当てられ、色々愚痴りつつ現場で頑張り、メンターに助言をもらい、一つの結論にたどり着くのが今回のお話し。
じっくりと土台を育ててこそ飛躍には説得力が出るので、徹底的に裏で通した今回のエピソードは、成長に向かう良い地固めだったと思います。
ここでシンデレラの靴を履かせてもらうより、ホコリまみれのバックヤードから星のきらめきの秘密を知ることを大事にするのが、スターズのやり方なのでしょう。

様々なキャラクターを捉える広い視界を保ちつつ、あくまでゆめの感じたこと、気付いたことだけが描写される一人称視点を今回徹底したことで、成長を生むキャラクターの実感が伝わりやすくなっていたと思います。
主人公の視線とそこから捉えた世界の広さを同時に描写することで、ゆめが旅する世界の広さと、彼女が歩く小さな、しかし確実な一歩を実感を持って描写できることが、スターズの方法論の強さなのかなぁと、今回感じました。
今後話しの足場になりそうなスタッフさんとの繋がりも、説得力を持ってじっくり作ってたしね。
やっぱ『フツー』であることの強さと、それを実現するためにはどう映像を作れば良いのか、両方をよく考え実行してる感じするな。

(旧作であれば裏方仕事の意味には真ん中かアバンあたりで気付き、的確に自分の役割をこなす描写が挟まっていた話だと思います。
驚異的に意識と知能が高く、自分がなすべきことをかなり早い段階で気づく傾向にあった旧作のアイドルたちに対し、『フツー』の女の子がそうであるように決定的瞬間まで真実にたどり着かず、泥臭い足踏みを繰り返すゆめの物語はスマートではありません。
しかしその足踏みだけが描けるものは多分あるし、比べてどっちが上というものでもない。
なんだかんだと旧作の幻影に取り憑かれている僕は、思わず二つのアイカツをまだ比べてしまうわけですが、あんま良い癖ではないかもなぁ)


面と向かって助言を貰いつつも、ゆめは実際にステージが始まり、トップ二人のアクティングを目の当たりにし、観客の反応とスタッフの仕事ぶりを見るまで、『いつだって100%』の意味はわからない。
ここら辺はすっかり相方ポジションが板についたローラとは明確に違う所で、ゆめは最初から学ぶ気まんまんのローラとは、同じ経験をしながら違う景色を見ているのが分かりやすかったです。
二人の視界の違いはステージ後にもよく現れていて、瞳をうるませながらステージに感じ入るローラと、小さな気付きを確認するように周囲を見渡すゆめとが、ひっそりと対比されていました。

実力がなくアイドルへの意識も高くはないゆめと、的確に状況を分析し行動も伴っているローラ。
二人の間にある差異は、まだまだ彼女たちを取り巻く世界と物語の説明に忙しいこの段階では、あくまで仄めかされる程度です。
ライバルという関係は間に断絶があればこそ、そこを埋めようという物語の運動が生まれてくると思うので、今回さらっと描写した二人の距離感を活かすような話が今後見れると、とても面白いと思います。


今回のエピソードはドン亀ゆめの小さな成長を描くと同時に、『スターの資質』というテーマにスターズなりの解答を出す話でもありました。
立場が要求する莫大な仕事量を精力的にこなし、忙しさの中でも気配りを忘れず、自分を高める努力を怠らず、裏方を含めた人間を惹きつけるカリスマを有すること。
そこに加えて、世界の道理が全く分かってないひよっこ相手でも優しくヒントを与え、成長の機会を作ってあげること。
今回ひめさんがスマートにこなしていたアレコレが、たとえ彼女が気づいていないとしても、ゆめが目指すべき『アイドルの一番星』の条件になります。
言い換えると今回のエピソードは、将来的に達成しなければいけない目標を舞台裏から確認する回だといえます。

性格的な面と同時に、『他人を惹きつけるステージング』という条件が盛り込まれていたのは、アイドルアニメとしてとても良いと思いました。
歌や踊り、モデルにドラマなどなどアイカツの範囲は拾いですが、選ばれた人間がショウアップされた舞台に立ち、名前の無い人々を引きつけ幸福な気持ちにするという点は共通しています。
そこに必要なのは圧倒的な『華』であり、生来の才能でか不断の努力でかは別として、人の目を惹きつける魔力は絶対に必要なわけです。
それは観客だけではなく一緒にステージを作る仲間も惹きつけ、『いつだって100%』以上の力を振り絞らせる特別な力でもある。
どしようもなく選ばれてしまう才を『アイドルの一番星』の条件として描いていたのは、才能を扱うアニメとして大事なところだなぁと思いました。

そして同時に、選ばれた自分に思い上がらない謙虚さと優しさが必要だということも、今回ちゃんと描いていました。
各々が各々の場所で『いつだって100%』を尽くすことで奇跡が生まれると言い切るゆめさんの視界には、おそらく観客もまた特別な存在として写っているのでしょう。
トップに上り詰めてもなお、自分だけが特別な物語を歩いているのではなく、関わる全ての人が己の人生の物語の主人公であり、尊重するべき存在だという認識が、ひめさんにはある。
トップに立つべくして立った、稀有な人格の持ち主だと思います。

今回のお話しはゆめの一人称で進むので、ひめがたどり着いた境地はあくまで間接的に描写されます。
ひめの輝く才覚と謙虚な姿勢はゆめに感銘を与えても、全てが一度に人格的血肉となるわけではなく、小さな気付きはあくまで小さいものでしかない。
ゆめのアイドルカツドウはあくまでゆめのものであり、一歩一歩、自分の力と発見で歩かなければいけない以上、この描き方は正しいと思います。
『アイドルの一番星』が辿り着いている高みと、グダグダと足踏みを続ける主人公。
両方をしっかり描写することで、ゆめが歩くべき成長物語の伸びしろを計測してた感じかな。

ランウェイは美組のテリトリーなので、『捕食獣の女王(プレデター・クイーン)』こと夜空先輩もバッチリ出張ってきてました。
可愛い一年生を三人側仕えにし、思う存分女帝ってたシーンは吹き出しましたが、モデルは一度キメたスタイル簡単に崩せないからね……仕事上の要請であって個人的な趣味じゃないもんね……。
春ちゃんはトップアイドルの仕事量をゆめに気づかせる、良いアシストを今週も上げていました。
相変わらず良いトス上げなんだけど、夜空先輩にズブズブっぷりも加速していて面白い……ジャンケンで取り合いになるポジションなんだ、付き人……美組こええ……。


というわけで、アイドル一年生、初めての現場回でした。
主人公の等身大の成長と、それを取り巻く人々それぞれの世界を両方しっかり切り取っていて、なかなか面白いエピソードだったと思います。
すぐさま真実には辿りつけないけど、自分なりのひたむきさで一歩ずつ進むゆめの足取りが、今後どこに向かうのか。
来週は待ちに待った二階堂ゆずCHANGメインの話のようで、非常に楽しみです……長かった……メイン回くるまでが……。