イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

少年メイド:第3話『いぬは三日飼えば三年恩を忘れぬ』感想

優しい世界で少年と変態がじわじわ家族になっていくハートフルストーリー、今週は犬と風邪。
キャラ紹介も落ち着いてきて、円と千尋のぎこちなくて温かい距離感を、どっしり書くお話になりました。
優しくて暖かいことがたくさん起きつつも、お互い乗り越えられない線がちゃんと存在している距離のとり方は、やっぱ好きだなこのアニメ。

Aパートは犬のお話でしたが、『美少年と可愛い犬の取り合わせ、最高かよ……』と悦に入るだけの展開とおもいきや、ちゃんと擬似家族のぎこちなさに話をつなげたのが良かったです。
あまりにもハッピーな出来事の描き方が上手いので忘れてしまいがちですが、千尋は母親と死別したショックを癒やしきれてはいないし、円だってそんなに上手く家族できる人格ではない。
円の犬嫌いをコミカルに転がしつつ、そこで話を止めるのではなく、犬が突破口になって二人の間の遠慮が浮き彫りになる展開は、非常にグッドでした。
『怒らせたのではなく、傷つけた』と自分で気づいた賢いちーちゃんが、すぐさま歩み寄ろうとする姿勢が好きだなぁ、やっぱ。

あとまぁ、犬と戯れるちーちゃんの幸せそうな表情が、猛烈にハッピーハードコアでよかった。
この話って『幸せになって欲しいと思える少年が、ちゃんと幸せである』ことの多幸感が楽しさのキモだと思っておるわけですが、それを成り立たせているのは声優さんの演技含めた『表情』なのだなぁと、子供らしく楽しむ彼の姿を見て思いました。
日野くんも言ってましたが、賢い子供過ぎて自分の喜びを押し殺してしまう傾向があるちーちゃんが、自分のエゴを出しても良いんだと判断できている状況は喜ばしい。

お互い一歩ずつ近寄っていく円と千尋の距離を描きつつ、千尋を見守る日野家の視線が挿入されたのも良かったですね。
視聴者である僕にとって千尋は『良い子なので、ぜひ愛されてほしいなぁ』と思えるキャラクターなのですが、作中の反応でそれをしっかり示してくれると、非常に気持ちがいいし作品を信用できるね、やっぱ。
館の外側のキャラクターにそういう行動を取らせることで、どうしても閉鎖して腐敗しがちな環境に風穴を開けて、千尋を取り巻く世界を広げているのも良い。
色々大変だけどみんな君の味方なので、ちーちゃんにはすくすくと育っていって欲しいものだ。


Bパートは『合法的に美少年の赤らめ顔描ける風邪、最高かよ……』というお話。
ハートフルストーリーを引っ張りだす助けにはなるけど、仕事終えて館に居座ると展開の邪魔になりそうな犬を秒速で画面外に吹っ飛ばすのは、良い判断だと思う。
今後お話的に必要になったら、美耶子が連れて屋敷に来ればいいんだしな……ここら辺のハンドリング巧みよね。

お話的には凄くオーソドックスな人情話ですが、思わず頑張り過ぎちゃう千尋とか、こっちの想定通り仕事ほっぽり出して帰ってくる変態とか、本筋がシンプルな分、個別のキャラ描写が濃い目だった印象。
桂一郎さんに負荷がかかる展開もお約束っちゃあお約束だが、元気になった千尋がしっかりツッコミを入れて、そこまで不公平な感じを出していないのは良い。
変態は変態に出来る範囲でスジを通しているし、不遜を許されるだけの才があるし、不遜のツケは身内でちゃんと払う。
円の濃いキャラクターでこの話は成り立っているわけで、あんまり普通のルール適応しすぎても物語が壊れちゃうわけで、ここら辺の難しい塩加減を巧くやっているアニメだと思う。

そんなわけで、トンチキに結びついた家族のぎこちなさと、それを乗り越えて繋がる手と手を描いたエピソードでした。
キャラの扱いにしても、お話をどう進めるかにしても、程よい調子を見つける目の良さと、それを視聴者に届ける表現の巧さとバランス感覚が、このアニメにはある。
作品への信頼度が高まる、ほっこり温かいお話だったなぁ……。