イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョーカー・ゲーム:第5話『ロビンソン』感想

陰謀が渦を巻く世界まるごとスパイ歩き、今週の舞台は霧のロンドン……って割りには閉鎖空間で展開してたな。
無敵のD機関様がクソ外交官の情報リークで捕まっちゃって大ピンチ! と思わせてからの、十重二十重に罠を張り巡らせた裏の書き合いが、黄瀬和哉さんの艶のある絵で描かれていました。
絵の方面でも声優さんでも、とんでもない実力者が出てくるから油断出来んなこのシリーズ……芳忠さんやっぱ良いなぁ。

D機関の超スゲェっぷりを色んな角度から見せるのがこのアニメの軸なのですが、今回はヘマったと思わせておいてそのヘマ自体が一つの誘い水であり、目的を達成するための必要条件でもあるという、中々のひねりっぷり。
毎回別の舞台、別のキャラクター、別のどんでん返しを用意するバリエーション豊かな作風を楽しめて、オムニバス好きな身としては嬉しい限りだ。
視聴者を手玉に取る手腕も流石で、『はっはっは、無敵のD機関も足元がお留守ですなぁ』とか思っていたら、情報が漏れた穴それ自体をとっちめるのが目的の、意図した潜入だとは……やられたなぁ。
自白剤の使用を前提として意識を階層化する技術に関しては、まぁ出来るかなぁ……くらいのフィクション加減で、結構好き。

派手に殺したり殺されたりという見せ場を第1話で自ら否定した以上、頭脳戦の説得力というのはこの作品にとっては大事です。
それを出すためには絵の雰囲気をしっかり醸しだすのが重要で、今回で言えば尋問室の閉鎖した空気や浴びせられるライトが、作中人物がそうであるように『キツそう』に見えなきゃいけない。
キャラクターと視聴者とのシンクロ率を上げつつ、お話全体のトーンをしっかり操って必要な空気を絵に仕上げる技術は、やっぱIG凄いなぁと感じます。
尋問のシーン、だんだん息苦しくなってくるもんな見てると……。

伊沢が感じる『圧』をしっかり描くことは、そこから開放され二度の逆転を決める後半のカタルシスにも繋がっているわけで、そういう意味でも大事なところだ。
作中描かれたどんでん返しでも気持ちいいんだけど、一歩踏み込んで考えると、これだけのスーパースパイ組織ですら外務省の暗号への意識は変えられないし、戦争の主導権を握るのではなく状況に奉仕するしかないという皮肉も見える。
あらゆる局面で不利な戦いを強いられている日本に対し、D機関の見事な活躍は全て後手後手であり、状況に対しての最善は尽くしつつも、状況それ自体を劇的に変えること、敗戦というババを引かされる『ジョーカー・ゲーム』のテーブルそれ自体をひっくり返す妙手に辿りつけないという、矛盾した存在でもある。
D機関の活躍をストレスとカタルシスを込めて痛快に描きつつ、その限界をしっかり認識してエピソードを積み上げていくのは、時代に翻弄される悲壮さの陰影を超人スパイたちに与えていて、好きな描き方です。

と言うわけで、バトル・オブ・ブリテン開始前夜のロンドンを舞台に、怪物たちの化かし合いが展開されるお話でした。
今回は闇と光のバランスがとても良くて、色彩を楽しむだけで十分食った気持ちになれるお話だったなぁ……絵見てるだけで幸せなのは流石だわ。
今週仄かに香っていた男同士のエロティシズムは、なんか来週櫻井声と共に凄い勢いで開放されそうですが、さてはてどうなることやら。
楽しみですね。