イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第5話『マイドレスメイク』感想

努力は夢の滑走路なアイドルファンタジー、今週は遂に! きいPの遺伝子を継ぐ女・二階堂ゆずパイセンメインの回。
……って言いたいところなんだけど、軸はやっぱり主人公ゆめの小さな努力と回り道であり、ゆずはそれを支えるメンターの一人という出番でした。
始まって以来『ドン亀ゆめの小さな成長を積み重ねていく』という軸は揺らいでおらず、その歩幅も引っくるめて、お話のトーンにブレがないのはとても良いです。
すっかり相棒というかお嫁さんというかなポジションを確かなものにしたローラとか、夜空色に染め上げられれつつ相変わらず良いトス上げる小春ちゃんとか、サブキャラの真心が伝わるシーン多かったのも良いな。
ゆず先輩のエキセントリックながら周囲を惹きつけるキャラもよく見えて、とても良い回だったと思います。

女児アニらしく筐体の販促なんぞしつつも、今週もスターズは『フツー』で地道な成長物語でした。
『フツー』の主人公であるゆめは直感一発で生活にたどり着くわけではなく、思い上がりや回り道なんぞも経験しつつ、24分をフルに活かして自分なりの答えにたどり着く。
ハチマキしめて、楽しそうなカフェの誘いも断って、一心不乱に目の前の課題に取り組む愚直で本気な姿を見せることで、『普段はフツーに脇目もふるけど、やるべき時にはしっかりやる』というゆめのパーソナリティが良く分かる、良い描写でした。
努力街道曲道くねくねの描写がしっかりしていることは、ゆめ独力では事態を打破できない状況を飲み込ませ、助力者達の存在意義を高める意味合いもあるので、非常に大事だと思います。
親友二人のアシストをもらい猛勉強しても、一回では答えにたどり着けないこと、そしてその歩みそれ自体はけして無駄ではなく着実なものとして描かれていることも、『一歩ずつフツーの成長を積み上げていく』という、スターズ世界のスケール感覚を示していました。

ゆめは才能もあまりなく、すぐ調子に乗って本質を見誤る『フツー』の子なのですが、それを補って余りある『人』に恵まれています。
S4全員に目をかけられている描写もそうだし、沢山の資料を用意してくれる小春ちゃん、練習に終始付き合い勇気が湧く言葉をかけてくれるローラなど、身近な場所に支えてくれる人がいる。
前回のひめと同じように、自分が辿り着いた高みを惜しげも無く見せてくれるゆず先輩もいる。
ゆめの等身大の歩幅では追いつかない部分は、周囲からの支えで埋めていくのが、スターズの基本的な描写なのでしょう。

そんなゆめの歩みを僕が安心してみていられるのは、彼女が支えられている自分に自覚的で、常に感謝の心を持っているからです。
あくまで努力するのはゆめ自身ながら、飛んでくるアシスト一つ一つにちゃんと答え、感謝を言葉にしていくゆめの姿は、当然っちゃ当然だけど、やっぱり見ていて気持ちがいい。
ゆずやローラがゆめに期待し助力を与える描写と、そのおかげでゆめが自分なりの答えに辿り着き、感謝の気持ちを態度で示す描写は、信頼と愛情がしっかりキャッチボールされる世界への安心感を相補的に高めていて、地味ながら大事な描写です。
やっぱ、素敵に『ありがとう』がいえる女の子が主人公なのは、すげー良いと思うわ。

地道な曲り道を走り切った結果ゆめなりに辿り着いた結論として、パンチのある衣装をしっかりお出しできたのも、説得力があってよかった。
気合の入ったモデリングで登場したショッキングなパンツスタイルは、マニアックなこだわりが特に腰から下に感じられ、インパクト十分でした。
正直カメラワークにはまだ迷いが見れるけど、サムライピクチャーズが続投したモデリングはレベル継続って感じですね……なんだろうな、あの太ももと尻の曲線は……。


第3話から第5話までの展開はS4や彼女たちが担当する分野、組組織をサラッと紹介する仕事も兼ねているわけですが、これはドン亀主人公が様々な世界に触れていく風通しの良さがあり、好きな展開でした。
学業にも、組み分けにも、裏方仕事にも、ドレスメイクにも。
憧れの四ツ星学園に入学し、新しい経験にどんどんと挑んでいくゆめの弾む心が、バラエティ豊かな展開の中で色んな表情を見せてくれて、ただの紹介で終わらない瑞々しさがあると思います。
物語が始まり、世界の諸相を初めて目にする瞬間の驚きとかは、やっぱり良い。

今回はドレスメイクという『新しい体験』に飛び込んだゆめですが、そのスペシャルな楽しみを盛り上げつつ、先輩として助言をくれるのが二階堂ゆめちゃん。
枠にとらわれないエキセントリックさも、それが許される才覚も、自由を満喫しつつ組の後輩たちに愛されている様子も、二階堂ゆめを取り巻く世界が過不足なく描かれていました。
『全ての作画力をここにぶっ込む!!』とばかりに気合を入れて描かれたダンスシーンは、『二階堂ゆめはこういう女なんじゃい! 好きになれィ!!』という問答無用のパワーにあふれていて、非常に良かった。
後輩ちゃん達にちょっと呆れられつつ、舞組の頭として、先輩として、一人の女の子として愛されてる感じ満載だったのは、舞組独自の生活文化を感じられてよかったな。

ゆめの努力をどっしり腰を落として捕まえつつ、細かい所で他のキャラクターの表情を切り取りもするのが、スターズの巧いところだと思います。
今回のS4で言えば、わざわざ円陣組んで掛け声かけて自分たちが『アイドルの天井』であることを再確認しながら頑張っている描写とか、夜空パイセンのTV仕事とか、チマチマと彼女たちが生きてる世界を描写することで、書割ではなくキャラクターとして動く足場が出来てきてる気がする。
物語はあくまで主人公を真ん中に捉えて進むんだけど、世界の端っこで自分の人生と価値観を持ち、自分なりに頑張っているキャラクターをしっかり描くことは、世界そのものの枠を広げることにもなると思います。
夜空パイセンは『端っこ』というには存在感ありすぎる気もするがな……言動は穏やかなのに、なんであんなに捕食獣(プレデター)の気が立ち上ってんのかなぁあの人……。

端っこという意味では今回ローラの描き方が飛び抜けて良くて、ゆめちゃんを支えつつベタベタし過ぎない、心地よい距離感が活写されていました。
人格の全部を支えるのではなく、ゆめが努力で燃え尽きてしまわない程度に支え、助言し、一緒に体を動かす。
今回見せたローラの穏やかな間合いは、彼女が持つ根本的な頭の良さ、要領の良さをしっかり伝えてくれて、好きな描写でした。
『自分のことは自分でできる優等生だからこそ、他人の面倒を見る余裕がある』ってのは説得力がある描写だし、なによりゆめちゃんが好きすぎてしょうがないってオーラが言動の端々から立ち上るのが、すっげー良い。
面倒見が良くて、アドバイスが的確で、労をいとわず体を動かすローラちゃんはハンサムな女の子だなぁ……将来は二代目夜空か。

もう一人のサポーター小春ちゃんは、夜空キチっぷりを更に加速させつつ、相変わらずのトス上げ力。
ゆめが努力街道をひた走る端っこで、どんどん小春ちゃんが甘い蜜に絡め取られ、人生のレールが歪んでいくのは、なんか破滅的な快楽がありますね。
自分なりのアイドル活動に一段落ついてまわりを見渡した時、小春ちゃんがマジ取り返しの付かない領域にぶっ込んでいる事実に、そのうちゆめはショック受けてほしいな。(受けません)

そして夜空パイセンの全方位プレイガールっぷりは、圧倒的な才能と無垢さで魂を砕いたひめへの挑発であり、自分なりの真っ向勝負でひめと向かい合うツバサを羨ましげに横目に見つつ、そういう形でしかひめへのコンプレックスを発露出来ない自分と、その生け贄になる可愛い女の子を内心哀れみつつ喜んでいて欲しい。(こっからS4妄想)
ぜっっってえS4三年はひめをセンターに矢印伸びてるって……自分たちが辿りつけない『本物』に魂砕かれた経験あって、その上で自分なりのアイドルを血みどろで探し求めた結果、今組のトップに立ってるって……手に入らないからこそ焦がれ、引き寄せてしまえば失われることが解っている美しき蜃気楼だって……。
そして二人の捻れた視線を認識しつつも、その無垢性故に完全には理解できず、しかしそれはそれで人間のありようとして尊いのだという認識を表に出さないまま、ひめにはS4の姫でいて欲しいものです。
あの四人のクァルテット、一見完璧のように見えて危うく感じんだよな……こういう妄想が迸るのも、キャラに上手いとこ人間味出せてる結果なのかねぇ。(責任転嫁と自己弁護)


と言うわけで、初のドレスメイクに素手で立ち向かうゆめの悪戦苦闘と、彼女を支える人々を爽やかに切り取るエピソードでした。
助言をかけがえないものとして描きつつも、あくまでゆめ個人の努力に繋がるものとして扱う距離感は、主役と脇役それぞれの存在意義があって、凄く好きです。
そういう物語的な構図がカッチリしているだけではなく、キャラクター一人一人の性格や価値観、それに伴う行動が瑞々しいのも、非常にグッド。
キャラクターと舞台、ギミックの説明がだいたい終わるタイミングで、こういう仕上がったエピソードが来るってことは、アイカツスターズ!というシリーズにとって凄くいいことじゃないかなぁと、勝手に思ったりしました。

来週はドラマオーディションみたいですが、まった夜空パイセンがプレデタースタイルを発揮してたり、OPであざといアピールに余念がない猫耳オレンジが登場したり、すげー楽しみ。
歩くような速度で進んでいくゆめのアイドル活動は、豊かで楽しくて見守りたくなる。
キャラクターが居る世界が好きになって、今後の展開に期待が高まるアニメって、やっぱ良いと思うわけです。