イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ふらいんぐうぃっち:第5話『使い魔の活用法』感想

永遠の春を泳ぐ少女たちの物語、今回は猫と散歩×2。
タイトルには『使い魔の活用法』とありますが、今週チトはぶっちぎりにタダの猫であり、魔法っぽいことは全然しませんでした。
穏やかな春の日差しのもとで、ゆるーっと流れる時間を贅沢に楽しみつつ、猫を追いかけて日常を憩う。
一見起伏のないお話しは、シーンセッティング的には同じ話を二回やって、どう面白く見せるかという挑戦を含んでいて、このアニメらしい勝負の仕方だと思いました。
一見ヌルくやってるように見えて、それを成立させるべくいろいろ手管を張り巡らせてるっていう、このアニメの手法がよく分かる回でしたねぇ。

今回話の中心はチトと一緒に散歩するパートなんですが、それ以外の部分にもたっぷり時間を使っていたのが、個人的には嬉しかったです。
焦らずじっくりと弘前の春を切り取る余裕がこのアニメの武器であり強みだと思っておるので、あっという間に倉本家に馴染んだお姉ちゃんとか、けーくんと真琴の熟年夫婦めいたやり取りとか、彼らの日常を穏やかに流すシーンがたっぷり有ったのはありがたい限り。
本筋を追うことに汲々とせず、というか『本筋』という概念それ自体を取り外すことで、作品全体のBPMキープそれ自体を楽しむ感覚は、ちょっと"灰と幻想のグリムガル"っぽいやな。


今回は二回同じ話を繰り返すように思えて、一般人である千夏と魔女である真琴の差を活かして、巧くアクセントを付けていました。
Bパートはチトの言葉を解する真琴の相槌が入るので、変則的な会話の繰り返しでリズムが作れるんですが、Aパートのチトはガチでタダの猫。
ここで音楽的の上げ下げとシーン内のアクションをシンクロさせ、一種音楽劇的な演出でAパートを統一させたのは、ストライクの取れる変化球でした。
"ゆるゆり さん☆ハイ"だと作品全体で使ってた手法だけど、特殊なエピソード構成を成り立たせるアクセントとして使ってくるのは、なかなか面白いなぁ。

チトの仕草も、生ネコをよく研究した上でアニメに落とし込んだいい塩梅で、突拍子もない猫の仕草に跳ねるような音楽がしっかりシンクロしてて、見てて気持ちがいい映像に仕上がってました。
僕は『アニメ化された動物の行動』が好物なので、弘前の自然の表現としてちょくちょく動物が映るこのアニメはマジでご褒美。
猫の言葉が分からなくても、愉快な隣人として彼らは楽しく存在していて、暖かな休日の午前をチトの観測に当てる豊かさは結構悪いもんじゃない。
そんな感想を受ける、豊かでドッシリしたAパートだったと思います。

んで、『猫の言葉がわからない』Aパートがあって成立する、『猫の言葉がわかる』Bパート。
よくよく考えればトンデモナイことが起きてるんだけど、扱いとしては極々アッサリしていて、実際に起こることとしてもそこまで劇的に変化はしないという、このアニメの魔法の扱い方をしっかり踏まえた展開でした。
派手な変化はないとはいえ、旅人である真琴と千夏の年齢差もあって、Aパートとはやはり違うお話になっているのが愉快だ。
同じシーンを追いかけ直すことで、一種解答編的な楽しさもあって、なかなか攻めた構成でした。
ただトンチキなことをするんじゃなくて、しっかり面白く味わい深いのが良いのだ。

と言うわけで、このアニメにしか許されない時間の使い方で、どっしりとネコと一緒に散歩するお話でした。
『魔法』という題材をここまで地味な日常に引き寄せていく、最新鋭エブリデイマジックの真髄を見た気持ちだ……面白い。
来週もまた、凝っていることが悪目立ちしない語り口で、魔法が隣りにある弘前の春を楽しませてくれることでしょう。
良いアニメだなぁコレ……。