イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第95話『かんぺきママみれぃ!』感想

ジュルルという名前の人間颱風(ヒューマノイドタイフーン)がパラ宿を駆け巡るアニメ、今週はVSみれぃ。
賢すぎるがゆえに形にこだわり過ぎるみれぃのキャラを最大限生かしつつ、育児のプレッシャーと喜び両方を描くお話でした。
最高に凄い雨宮とか、何の前触れもなくフルーツジュース屋になってるあじみ先生とか、ところどころに狂気を含みつつ根本的には素直に良い話で、プリパラらしさ全開だと思いました。
三期から入った人に既存キャラを見せるエピソード第一号でもある今回が、自分たちの強みをブンブン振り回せているのは凄く良いな。

二年目後半の追い込まれ方とか見ても、生来の賢さ故に周囲が見えすぎて、世間が期待するイメージを勝手に増幅されて押しつぶされてしまう傾向を、みれぃは持っています。
『赤ん坊はこう育たなければいけない』『母親はこうでなければいけない』というべき論で子育てをやってしまい、現実とのギャップに疲れ果てて追い込まれる様は、如何にも南委員長らしい生真面目さでした。
アイドルみれぃになるとそういう抑圧から開放されてしまうので、今回現実世界重点で話が進むのは納得行くシーンセットでしたね。

南委員長も身勝手な理想像にジュルルを引き寄せるためだけに教育ママをやっているわけではなく、『みんなのリーダーとしてジュルルを早く成長させ、神アイドルという目標を達成させてあげないと!』という意気込みと優しさあっての行動。
しかしジュルルが垂らすわ汚すわ暴れるわ、やりたい放題の小さな暴君だってのは先行して預かってたらぁらが、身を持って証明してくれたところです。
結果として南委員長の『こうあるべき』というやり方と、ジュルルの『あるがまま』の生き様は衝突し、赤ん坊が折れない以上大人であるみれぃにストレスがガンガン貯まるという、哀しい図式でした。
やっぱべき論で子育てするのはシンドイよなぁ……世界のランダムさの極限だもんな、ある意味。

限界まで追い込まれたところでしっかり周囲のサポートが入るのがプリパラの良い所で、今回アシストを担当したのはみれぃの両親。
子育ての先達として自分の経験を伝え、『こうでなければいけない』と思いつめる大人のみれぃが、実はジュルルと同じように『あるがまま』生きていた時代を経、両親の助けを受けて今のみれぃになったのだという事実を伝える。
『子育てというカオスは、計算を超えるから大変だけど、だからこそ想定を超えた喜びもある。素直に混沌を楽しめ』というアドバイスも含めて、ジュルルとみれぃ、みれぃと母親の間にある共通点を上手く指摘し、世代にブリッジを架ける素晴らしい動きでした。
『かつては自分もそうだった/いつかは自分もそうなる』っていう共感は、子育てだけじゃなく、他者と繋がる経験で一番大事な部分だと思う。

追い込まれた娘を見てジュルルを背負ってしまうのではなく、娘のプレッシャーの原因を指摘して自分でやらせる辺り、マジ優秀な親よね……。
いつもの『弁護士VS検事コント』で笑いを取りつつ、育児における男女の不均衡まで突っついてくる辺りは、すげープリパラらしい目端の効き方だなと思いました。
あっという間に孫誕生まで暴走する雨宮のキモさも含めて、三期もキレてんなぁ……。


『親に迷惑をかけ、思い通りにならないことも含めて、『あるがまま』のジュルルを愛し、見守ってやればいい』という今回の結論は、実はアバンで既に示されています。
ジュルルの目線に降りてないない遊びと、ジュルルの小さな成長を楽しむらぁらとレオナは、大人の理想像に固執するみれぃよりも実は大人で、何よりも無理がない。
見え見えのキャンディー隠しに乗っかって一緒に遊ぶ姿は、自分より弱く幼い存在の『あるがまま』を認め、そこに自分から入っていく柔軟さがなければ不可能なわけで、『ジュルルという子供を投入することで、キャラクターたちの人格的成熟を描く』という目的を上手く達成しています。
本ママであるらぁらは当然として、レオナが等身大の赤ん坊を受け止めていられるのは、やっぱ『あるがまま』を大事にする彼のパーソナリティが関係している気がしますね。

両親のアシストで少し重荷を下ろした後、みれぃの元にはソラミの仲間がやってきます。
序盤でジュルルを取られる形になっていたらぁらが、ちょっと及び腰なのがリアルで繊細だったなぁ。
『こうあるべき』に拘っていた頃のみれぃは何でも一人でやろうとして潰れたわけですが、高まるストレスとママンによるそこからの開放を経た段階なら、素直に仲間の手を取れる。
すぐさま結論に飛びつかせるわけではなく、『こうあるべき』にどうしても拘ってしまうみれぃの『あるがまま』をちゃんと描写し、試練と助言を経て望んだ結論にたどり着く流れが、非常にしっかりしてました。
みれぃが苦労した成果が『"もも"という『言葉』を覚える』として表現されてるのが、超ロゴス主義者であるみれぃらしいなぁと思った。

僕はこのアニメでのジュルルの描き方はとても好きで、今回も赤ん坊らしい妙な力強さでみれぃに反発する姿に頼もしさを感じたりしました。
ジュルルはなんにも分からない赤ちゃんで、自分のしたいように周囲を振り回すけど、同時に自分にしたいように愛してくれる人を愛し、愛してくれないように感じる人も愛する。
言語と分別を手に入れる前のこどもだけが持っている素直さが、抱きついたり泣いたりという細かい仕草によく出ていて、とても良いなと思います。
無論上田麗奈さんの演技も冴え渡ってるがな……今回はジュルル、ジュリー、あじみ、えみの四役か……。


そんなみれぃの悪戦苦闘でしたが、本筋の合間にのんちゃんが姉を巧妙に操作しにかかってて笑う。
トライアングルの番組を見せることでアリバイ操作をしつつ、プリパラに目を向けさせる理由を作る動きには、サスペンス者の犯人を見ているような周到さを感じます。
まぁこの話、基本的に突き抜けてない計算は天然に絶対勝てないからな……色々大変だと思うけど、勝利のために頑張って欲しい。

ノルマである神アイドルチャレンジもしっかりぶっ込んできましたが、お話的には当然の流れとはいえ、チャレンジ権利がジュルルをお世話したご褒美みたいな形になってしまっているのは、ちょっと引っかかる。
みれぃがそういう計算を超えたところに辿り着いたってのは、ジュルルと無心で遊ぶ姿見れてば分かるんだけど、このままではドロシーがネタっぽくジュルルを独占しようとした行動が、神アイドルへの最適解ってことになってしまう……。
まー要素が悪目立ちしたら、その不自然さをネタに変えて強引に突破できるパワーも、このアニメにはあんだけどね。
物語上の必然要請だけで要素を配置できない女児アニでは、すげー大事な力だと思う。


というわけで、南委員長がどういう人間で、ジュルルとどんな衝突をして、どうやって一つの成長にたどり着くのか、笑いも交えつつ丁寧に描いたエピソードでした。
非常にみれぃらしいお話しで、三期初の個別エピソードとしてこういう物語が仕上がったのは、とても良いことだと思います。
やっぱ個別エピソードの切れ味が良いと、シリーズの展望にも期待が持てるなぁ。

来週はOPで濃厚な親子感を醸し出してるガァルマゲドンが、新しい養子を向かい入れる話のようです。
ガァルマゲドンは他のキャラより精神年齢が低い目なので、今回南委員長が見せた大人故の苦労とは、また違う物語を楽しませてくれそうです。
個人的には、妙に生々しい『初めて見た赤ん坊に興味津々な四歳児』っぷりを発揮しているガァルルに期待……赤ん坊見て『自慢する!!』とか、良い描写だよなぁ。