イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョーカー・ゲーム:第6話『アジア・エクスプレス』感想

知恵と謀略がモダンな世界を駆け巡るスパイ・サスペンス、今週は特急あじあ号殺人事件。
満州鉄道が誇る弾丸特急を舞台に、誰が情報提供者を殺したのかというサスペンス要素と、スパイ田崎の諜報手品の冴えを楽しむ回でした。
必要とあれば子供すら道具として使いこなし、敵の構成員も味方に取り込むという、情けがなく鮮烈な手際がよく目立ったお話でしたね。
『道具に道具として使われている自覚がなければ、計画は発覚も破綻もしない』というロジックは、第4話と似てるかな?

毎回色んなテイストでお話を盛り上げてくれるジョーカー・ゲームですが、今回はなんと探偵物語風味。
特急あじあ号という移動する密室を舞台に、情報提供者殺しの謎を鮮やかに解いていくスパイの活躍を楽しむ話でしたね。
序盤に『死体』というハードな非日常を見せておいて、『退屈してる子供』という日常を解決の鍵に使うコントラストが、なかなか面白かった。

桜井声の怪しさと見事な子供捌きが胡散臭いシナジーを形成していて、これも見てて楽しかったですね。
子どもたちにとってはあくまで退屈を紛らわせるゲームにすぎないんだけど、田崎にとっては使える手札を最大限有効に切った諜報であり、しかもそのギャップは最後まで埋まらない。
子どもたちは田崎のことを『楽しい冒険をさせてくれて、最後に鳩まで見せてくれた楽しいおじさん』と記憶するけど、田崎にとって子どもたちは用が済んだら事故を仕組んで遠ざける、謀略の道具でしかない。
子供の無垢さがいきいきと描けていただけに、スパイの非情さも際立っていて、鮮やかな対比を生む題材選びだと思いました。

毎度のことながら美術が素晴らしくて、当時最新鋭の豪華列車だったあじあ号の内装とか、見てるだけでよだれ出る。
アバン一瞬だけしか映らない新京の『作られた国際都市』感とかも凄く良くて、やっぱ『街と時代』を主役(の一人)に出来ているアニメだなぁと思う。
美術に凝ることで生まれるコスモポリタンな感じが、世界中を股にかけるD機関の活躍に説得力を与えているのは、なかなか凄いことよね。


本命である状況提供者殺しに関しては、子供を使った『実行者は一人』という思考誘導が上手く効いて、なかなかハッとさせられる展開でした。
視聴者はミスリードに引っ張られてるんだけど、当の田崎は状況を早い段階で読んでいて、子供はチェックメイトをかけるための一手段でしかないというのが、なかなかズルい。
作品内だけではなく、視聴者とキャラクターの間にも認識のズレを仕込んで、ミステリを成立させる手腕は岸本脚本っぽいなぁと思います。

こうして華麗に事件を制圧したD機関だけど、やはりこれまでの物語と同じよう、スパイ組織故の限界が長い影を落としている。
どれだけ国際的で自由な視点を持っていても、否、持っていればこそ陸軍では外様であり、日本の政策立案に収集した情報が有効活用されることは少ない。
的確な行動を取れば疎まれ、愚かであれば滅びるというジレンマは、『陸軍精神を持った諜報機関』なるライバルを登場させました。

これまでのエピソードを通し、超人スパイ集団として魅力的な活躍を見せてきたD機関に真っ向相撲を挑むだけの実力が、そのライバルにはあるのか。
わりと楽勝ムードで事件を制圧し続けているD機関が、苦戦するような状況が生まれるのか。
いろいろ気になるところですが、そこら辺の具体的な描写は来週以降になります。
ふーむ、楽しみだ。