イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第7話『シンプル イズ ザ ベスト!』感想

見るためではなく叶えるための夢に邁進するアイドル・サクセス・ストーリー、今週は自分らしさってなんだ。
面倒見の良いツンデレ桃色おかん、桜庭ローラメインのエピソードでして、賢い故に色々悩む彼女の成長が良くまとまったお話でした。
迷妄を払って自力で解決策を見つける場所まで強引に引っ張ったアンナ先生、無意識にヒントを出したゆめと、メンター達のアシストも切れ味鋭く、これまで引っ張る役だったローラが迷い、答えを見つけるまでのお話としてとても良かったです。

今回問題になっているのは個性! ……というよりも、ローラの賢さかなと思いました。
なんにも分からないまま状況に飛び込み、色んな人の手助けを受けながら一歩ずつ進んでいくゆめに対して、ローラは周囲がよく見え、なすべきことを理解している優等生だという描写は、これまでのお話しの中で積み上げられてきました。
ゆめを引っ張るお母さん役をやってる間はそれは美点なんですが、自分らしさを活かし、群雄の中で輝かなければいけないアイドルカツドウの主役としては、考え過ぎは足枷にもなる。
回りが見えているがゆえに質問を先読みし、言葉ですべてを考えてしまうローラは、努力故にどんどん迷走し、賢さ故に答えが見つけられなくなっています。

ここで活きてくるのがアバンで圧力かけられてたアンナ先生でして、理由も告げずとにかく体をイジメさせ、肉体を極限まで疲労させる。
トンチキなスポ根特訓の後の暗算はつまり、今回は悪い働きをしているローラの個性=賢さが追い出され、必要な答えに自力でたどり着く準備が出来たか、確認していたわけです。
あそこで自分の行動の理由を話しても良いわけですが、アンナ先生はあくまで生徒が自分で成長する余地を残し、ローラとゆめを信頼して去っていく。
教師に出来ること、するべきことをしっかり把握し、生徒の成長を促すナイストンチキだったと思います。
スポ根特訓自体が問題を解決するのではなく、あくまで問題解決のための地ならしをするという所も抑えが効いててよかったですね。

これはローラの成長を期待していると同時に、ゆめが解決役の仕事を果たすことで何かを手に入れることを狙っているのではないかと、僕は思いました。
アバンで諸星学園長に答えているように、アンナ先生は優等生のローラだけではなく、ローラに引っ張られる立場のゆめにも強く期待し、二人がお互いを刺激し合い高め合うことを望んでいる。
これまでゆめが担っていた『悩み役』をローラが担当する今回、ローラのような賢く手際が良い『導き役』は出来なくても、引っ張られ世話されるだけではない強さを、ゆめは見せませた。

飾らない自分自身、好きなものに立ち返るシンプルな答えをゆめから貰ったローラは、しっかり彼女に感謝してオーディションに臨む。
この時アンナ先生には感謝していないのは、凄くスターズらしい『フツーさ』だと思いました。
ダイレクトに答えを導いてくれたゆめのアシストはわかりやすいですが、考えすぎの足枷を外し、答えを導くための状況を作った間接的なサポートは、いかにローラが優秀でもその意図を見抜けなかったわけです。
まだ中学1年生の子供としてはそれくらいの察しの悪さで十分だし、アンナ先生も直接感謝してもらうことを望んで生徒を指導しているわけではないでしょう。
ゆめには『ありがとう』を言えるくらい素直で聡く、でもアンナ先生の見えざる支えには気づけないくらいには子供。
今回ローラが示した洞察力の幅は、スターズがどのくらいの能力をキャラクターに与えたいのか、そのことによってどういうレンジで物語をコントロールしたいのか、良く伝わる演出でした。


『計算ではなく素直さが大事』というメッセージは、掃除が好きな社長さんの扱いからも伝わってきます。
ローラは面接に成功するため、他人に好かれる自分を偽っているわけですが、素性がわからない社長さんには、利益を考えず素の自分で接している。
迷い悩みながら作ったキャラクターは社長(を始めとする大人)には届かないけど、アンナ先生とゆめの助けを得て辿り着いた素直な自分の個性は、しっかり届く。
個性を捏造しているローラをバッサリ切り捨てるのではなく、「キミ、無理してない?」と指摘してくれる審査員は、出来過ぎるくらいに出来た大人だと思います。

最終的に社長とのコネクションという、今後のアイドルカツドウを助ける大きな武器を手に入れたローラですが、それを生み出したのは誰かに好かれようという意図的な計算ではなく、偶然であった人に『ありがとう』を言える素直さだったわけです。
そして認めるべきものは認める素直さは、例えば第2話でゆめをライバル認定した時に発揮されてたわけで、素直さという資質は今回急に発露したわけではなく、元々ローラに備わっていたものでした。
行きて帰りし物語』という物語類型に忠実に進んだ今回は、まさにシンプル・イズ・ベストな展開だったといえます。
……今後の膨らませ方次第だけど、『ジュエルアイスクリーム』が無印の『PON PONクレープ』みたいな豊かなアイコンに育つと面白いなぁ。

一見無駄に見える迷い路自体も、ローラが乗り越えるべき壁に真正面から立ち向かう、生真面目な性根の持ち主だと強調していました。
元々無茶苦茶面倒見の良い優しい子だってのは知ってたけど、『導き役』の仕事を一旦降りて、しっかり悩み間違えもする等身大の姿を見せたことで、視聴者にとの距離がより縮まった感じ。
『先祖代々の芸能一家』というオリジンも見え、彼女がなぜ、どう頑張るのかという足場が見える回だった気がします。

彼女はとても賢い子で、今回はその賢さが素直さを阻害したわけですが、賢さという資質それ自体は、あくまで素直さと同じく個性。
スターズは『個性の輝き(グリッター)』が一つのキーワードだと思うので、彼女の賢さが報われるエピソードも、今後どんどんと増やして欲しいです。
キャラクターの仕事を一つに限定し過ぎると、矛盾する複数の顔をもった人格ではなく、物語を展開するための装置になってっちゃうから、単機能的な仕事を押し付けるより横幅広く描写してくれる方が好きだね僕は。
今回のように多面的で豊かな描き方ができているのなら、そこら辺の心配はないと思いますけどね。

今回はゆめがメインの『導き役』でしたが、小春ちゃんも絵を描いたりゆめの相談を受けたり、相変わらず良いアシストをキメていました。
美組の英才教育(隠語)でどんどんパワーを溜め込んでいるのに、デザイン力やヴィジュアル発想力という強みまでサラッと描写され、小春ちゃんが二代目捕食獣(プレデター)への道を邁進されておる……。
一年生トリオのベタベタしすぎず、お互いを大事にしながら夢にむかって頑張っている感じは、見てて気持ちいいですね。
話の主役、メインサポーターが誰なのかはっきりさせつつも、存在感が蒸発しない程度に自分を主張してるバランスが良いんだろうな。


と言うわけで、他人の面倒ばっか見てたピンクのおかんが、自分の問題に思う存分悩むお話でした。
バディとして輝くためにはお互い対等な立場だというのが大前提になるわけで、今回ゆめとの役割を交換し、ローラの弱い所を思い切り曝け出したのは凄く良かったと思います。
今後も色んな人の助けを受けつつ、一人間としての弱さや察しの悪さ、要領の悪さなんかもちゃんと描写して、一歩一歩成長して欲しい。
そういう期待を高められるような、毛並みの良いエピソードでした。

ほんでもって来週は、『捕食獣見習い(プレデターベイビー)』小春CHANGの個別エピ。
圧倒的存在感を誇る強レズ・夜空パイセンの出番にもワクワクが止まらんし、寵愛を奪い合うライバルも出そうだしで、色々楽しみだ。
春ちゃん自体地味でフェードアウトしそうな第一印象を、ナチュラルな強キャラっぷりで跳ね返した面白いキャラなので、個別エピソードは面白くなりそうよなぁ。
……OPで顔見世してるキャラが歌組(ゆめ・ローラ)、劇組(あこ)、美組(小春、新キャラ)と配置されてるってことは、劇組所属のメインキャラが……いない……だと……ッ!?(可愛い可愛いゆずパイセンの出番激減の予感に打ち震える、アイカツの黄色い女の子は全部好きマン)