イマワノキワ

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ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第8話『山岸由花子は恋をする その1』感想

天下のジャンプが送るハートフル学園ラブコメディ、今回は元祖ヤンデレ堂々の登場。
シームレスに可愛いモードと基地外モードを切り替える由花子を麻美子が好演し、突然ミザリーな状況に追い込まれた康一くんの当惑が良く伝わってくる回でした。
何しろ声が能登ですし、作画も気合を入れて可愛く描いてくれるので、逆に覚悟は言った時の落差がしっかり伝わってくるというね。

連続殺人鬼、過去を取り戻したかったテロリスト、その弟にしてバカ高校生、過ぎた力を手に入れた小悪党に鬱屈した高校生と、色んな人間にスタンドという『非日常』を与えてきた第四部。
今回は愛が重たすぎる女にスタンドを与えるとどうなるのか、って話なんですが、由花子はその魂それ自体が危険物なのであり、スタンドがないならないで今回の行動を実行していた気がします。
ここら辺は"サーフィス"の力でいい気になって因果応報食らった間田と、面白い対照だと思います。

一晩でセーターも編んでくれるし、リッチな弁当も作ってくれる由花子は一見『愛』に生きているようで、その行動理念は猛烈なエゴイズムです。
自分の理想の男性に育った康一を、自分の理想のままに育て上げたいからこそ、康一の意志は一切無視して監禁するし、別荘を不法占拠することも躊躇わない。
他人を思いやる気持ちが『愛』には必要なのでしょうが、由花子の行動はすべてが自分勝手に展開し、その枠からはみ出た時はきっついお仕置きが待っている、支配と言い換えていい関係を狙っている。
まぁここ杜王町なので、一般的にはキラキラ素敵なものになる『愛』も、こういうヤバキチなシロモノになっちゃう運命ではあるんですが……。


スタンド能力に目覚め、生来の黄金の魂を目覚めさせた康一に由花子は惹かれたといいますが、彼女の強圧的な母性はあくまで自分の理想像を押し付けているだけなので、その影響下では康一の輝きである『自分のなすべきことをする勇気』は抑圧されてしまいます。
康一くんはそんな破滅の予感に戸惑いつつも、美少女に好かれてまんざらでもないし、直接的暴力に訴える性格でもない。
こういう内面が"エコーズ"の能力にしっかり反映されているのは、なかなか面白いです。
そういう意味では、"ラブ・デラックス"が『縛り付ける』『閉じ込める』ために能力を行使されているのも、由花子のキチっぷりをよく反映しているわけです。

家の束縛と兄の抑圧から開放され、すっかり仲良し男子高校生三人組に溶け込んだ億泰も、その性格的変化を"ザ・ハンド"に反映させていました。
『えぐりとる』という危険な能力を(一応)制御し、委員長の命を救うためにスタンド能力を使うシーンは、暴力的な敵として登場した億泰が、仗助や康一くんと同じく誰かを助ける立場と人格を手に入れたことを、巧く表現していたと思います。
『スタンドは心の反映』という基本設定をキャラクター描写の中で活かし、その変化に説得力をのせる見せ方をしているのは、さすがという感じでした。

前回はあまり出番のなかった億泰ですが、今回は仗助と仲良くバカ話をして、康一くんの恋路に感涙にむせぶ姿を見せと、とっても可愛かったです。
あいつは感情表現が素直だし、友だちと仲良く楽しくおバカに暮らしとるからのう……。
四部アニメは彼が背負っているものを非常に印象的に見せてくれたので、それを忘れないままなんてことのない『日常』の幸せを堪能している姿を見てると、感慨もひとしおですね。

演出の話をしますと、今回は由花子のキチった内面をBGMと画面が非常に上手く強調していて、面白いやら怖いやら、振り幅のあるいい仕上がりだったと思います。
普通の高校生のような楽しいラブコメシーンでかかっていたピアノBGMが、どんどん異常性を発露しても変わらない違和感とか、毒薬か何かとしか思えない色合いのエビとか、由花子がまとう異常なオーラがしっかり目に見え耳に聞こえました。
理科室で康一くんを問い詰める時、水道の蛇口全てが彼を狙っているレイアウトとか、緊張感あってよかったですね。

日常と異常を切り替えるスイッチが『無い』こと、日常を送っているはずなのに気づけばその強烈なエゴイズムが発露してしまうことが由花子の特異性だと思うのですが、ここら辺をシームレスに演技してた能登さんも非常にグッドナイス。
麻美子の芸達者な部分がすごくよく生きていて、やっぱスゲェな能登……ッて感じだ。
ここまで読まれて解られたと思いますが、僕は結構重度の能登キチです。


と言うわけで、危険な女の危険な束縛が康一くんを狙い、捉え、追い詰める回でした。
彼が『やるときはやる』男だというのはこれまでの物語で解っているので、一体何がきっかけになってスタンドの力で自分自身の『日常』を守るのか、期待が高まる展開でしたね。
あとま、単純に由花子のトンチキっぷりを見ているだけで楽しい……作中でもトップクラスに精神的な危険度高いよなぁあの女……。

ブルース・リー高倉健が主演する映画のように、我慢に我慢を重ね反撃のカタルシスを高めてくれてる康一くんが、どんな風に超かっこいい姿を見せるのか。
圧倒的なキチ力を見せつけた由花子が、どこまで噴き上がってくれるのか。
来週も楽しみだなぁ……ホントおもしれぇなジョジョ四部アニメ。