イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

影鰐 -KAGEWANI- 承:第9話『餌食』感想

ホラーアニメの新天地を開拓する気鋭の作品もそろそろクライマックス、今回は猿楽ハザード。
これまでのお話でたっぷり『驕り高ぶって足元を掬われる役』ポイントを貯めこんだ本間が、立派にフラグを立てて回収お話でした。
いやー、『番場先生生搾り実況中継オークション』とか『チュパカブラ製造の真相』とか、『期待通り制御不能になる影鰐汁生搾り装置』とか『復活のデス本間』とか、科学ベースのクリーチャーパニックで欲しい球、全部来たなぁ……。

プロメテウスが火を持ちだして以来、行き過ぎた科学技術が破滅を呼びこむお話は一つの類型ですが、類型故の気持ちよさというのもあるもので。
影鰐はここに『歴史の闇の中で繰り返す、人造魔獣の暗い因縁』という伝奇風味を添え、単純なクリーチャーパニック(とそれに伴う『お前ら膝を正して、傲慢を押さえ込めよ』という説教)に少しひねりを入れてあります。
前回過去編をやったことで、人間は何度も己の技術の制御を失うし、過去の因縁は何度も今に反響するという奥行きが生まれているわけです。
物語のパーツ一つ一つはオーソドックスなんだけど、オムニバス形式を活かしてバリエーション豊かに展開し、それを『影鰐』の存在感でまとめ上げ複雑な味わいを出す。
『ホラー』という細分化され様式が決まったジャンルを、今の時代にどう見せるのかという解答として、このサンプリング物語生成はとても面白い手法だと思うわけよ。

んで、これを成立させるためにはパーツパーツの肌理が大事なわけで。
『科学技術を乱用する、ブレーキを失った企業』から想起される破滅とその先を、しっかりきっちり見せてくれる映像の食いごたえは、とても素晴らしかった。
NTRもののエロ同人かよ!!』と突っ込みたくなる番場汁オーディションとか、さんざん制御不能になって地獄絵図生み出してるのに『コントロール可能な兵器』として売りだす浅はかさとか、本間局長の悪役っぷりは素晴らしかったなぁ。
自業自得で飲み込まれた挙句、きっちりスーパー本間に変身して今後の展開に繋げるところとか、マジ最高。
これで『影鰐人間 VS メカ木村 VS 復讐者 VS スーパー本間』という、夢のランブルマッチの舞台が整ったわけだな……胸が熱くなるな


二期は丁寧に木村を第二の主人公として仕上げてきたので、モーターをウィンウィン唸らせ、超ドヤ顔で本間に引導を渡しに来た木村の姿は、なかなか気持ちよかったです。
いい気になってる敵陣営に埋伏の毒を埋め込み、策略で切り崩していく描写も、過去エピが生きていてとても良かった。
たとえ短い時間でも、オーソドックスでコンパクトな要素をしっかりつなぎ合わせれば、復讐物語の立体感はちゃんと生まれるということを影鰐は教えてくれるなぁ。
八分の尺でどんなクリーチャーを活躍させ、どういう形で恐怖を演出し、今後の展開に必要な物語をどう埋め込むかという計算が、やっぱ影鰐は良く出来ている気がする。

まー第一の主人公たる番場先生は、血袋としてさんざん汁を絞られた挙句お姫様みて~に木村に救出され、最後ドヤ顔するだけだったんですがね!!
正直フツーの話だったら主人公失格だが、『ま、番場先生だしね』でこの体たらくも受け入れられるあたり、影鰐の可愛げ生成能力はマジ凄い。
ヒロイン主人公を楽しめるのは先生個人の可愛げもあるけど、一期で最高の大逆転を決めた物語展開への信頼も、結構ある気がするね。
だから終盤では影鰐人間のちょうかっこいい所、沢山見たい気持ちです……マジ頼みますよ!

かくして猿楽本間体制が崩れ、木村がラスボスっぽいポジションに返り咲くお話でした。
第4話・第6話とゲストを取り込んで展開した『メカ木村野望篇』のシメとして、大満足の仕上がりでしたね。
猿楽は人間と高慢と愚かさの象徴なわけで、そのトップに木村が返り咲く=敵に戻ると考えることも出来ますが、二期は『オリジナル影鰐』というもう一個の軸があるからなぁ。

過去との因縁は、どのように結実するのか。
デス本間は、どんだけイカすクリーチャーになって帰ってくるか。
そして番場先生のスーパースタイリッシュアクションは、もう一度あるのか。
中盤の山場を乗り越えてなお盛り上がる影鰐二期、いやー、面白いッ!