イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第98話『ひとり三役は大変なのん!』感想

○はじめに
アイドルの強さは野望の強さ! 複垢BOTどんと来い!!
主役の妹が違法スレスレのチートで迫ってくる女児アニ、それがプリパラ。
というわけで、三期を賑やかにしてきたライバルアイドル・トライアングルの内実公開エピソードでした。


○今回描かれたトライアングルの魅力
これまでジュルル軸の話が多かった分、今回はのんちゃんとウサチャの妹コンビにじっくり尺を回して、出会いから現在までを一気に語り切るお話になってました。
蓋を開けてみると知略と努力を積み重ね、色々工夫して一人三役という無茶苦茶を現実に帰る、結構なガッツストーリー。
プリパラは努力と根性をブースターに才能と幸運で壁をぶちぬくのが基本のロジックなので、ライバルが(脱法気味とはいえ)ちゃんと努力している姿を見せたのは、とても良かったと思います。

煮こまれたドルヲタとして既存アイドルの要素を抽出し、組み合わせて自分の考える最高のキャラを作る。
ジュルルというイレギュラーが産んだ法の抜け道を最大限利用し、ホログラム装置を手作りして行動パターンを組み、一人三役で演じきって秘密も隠す。
計算高く知能も高いのんちゃんだけど、自分に出来る限りの努力を全て積み上げ、二年分先に行ってしまった姉に追いつこうと必死な姿は、やっぱり好感が持てました。
システムの裏をかき汗塗れで努力して、巨大な目標に到達する主人公として見ると、伊藤カイジみたいな泥臭さがありますな。

トライアングルという巨大な虚妄を実現するためだけではなく、一アイドルとしてウサチャと二人三脚で地味な努力を積み上げ、ちゃんとレッスンしている風景を見せたのもグッドでした。
マネジと『姉(兄)を超える!』という目標と秘密を共有し、褒められたもんじゃないけど仲は良いという、アウトローな二人三脚の良さをしっかり見せていたのもグッド。
プリパラのマネジはやっぱ相棒感が大事で、幼い感じを受けるウサチャ&のんは立場も目標も雰囲気もよく似ている、良いバディとして演出できていると思います。


○チャレンジャーとしてのトライアングル
圧倒的な実力を持ち、追いついて勝ち上がるべき対象だったファルルやひびきに比べ、トライアングルは物語を背負った主役を追いかける挑戦者です。
彼女たちの可愛く人間味のある部分はこれまでのエピソードで描いてきたので、今回はすでに実績を積み上げてきた主役に挑戦する資格、いろいろ策を弄しつつ一つの目的に向かって必死にやっている姿を、視聴者に見せる回だったのかなと思います。
イジワルでズルいライバルも見せ方の一つですが、自分なりのやり方で必死になっているトライアングルは小狡いんだけど妙に泥臭くて、ちゃんと応援したくなるアイドルとして描けていました。
バックボーンをしっかり見せて、ライバルの行動に共感が伴うように状況を整えるのは凄く大事であり、そういう地ならしを丁寧にやった回だといえます。
思い返せば、プリパラ一年目の魅力はライバルであるドレパのデビューから出会い、個性のぶつかり合いを経て繋がりが生まれるまでをしっかり描いたのが大きいわけだし、一話に圧縮してのんちゃんの努力を見せた今回は、一期2クール目の再来といえるかもしれない。

二年分のストーリーを背負った姉たちに、なりふり構わず追いつこうとするトライアングルには、色々と隙があります。
すでにファンに三人同時に揃わない不自然をツッコまれてますし、情報隠蔽はわりとガバガバだし、ホログラムは行動されたパターンしか出来ないし、すでにぴのんは軽くバグってたし。
こういう隙を見せることで、トライアングルが主役を追いかける構図はより強調され、野望にも得たチャレンジャー・真中のんを応援したくなる気持ちも強くなる。

二年間も物語を背負うとどうしても掘り下げる余地ってのは減ってくるし、プリパラが積み重ねたもののリセットをあまり行わないアニメである以上、らぁらたちはどんどん有名になり、地位を積み重ねて偉くなってきます。
トップアイドルであるが故の物語ってもの当然ありますが、それと同時に物語が始まった頃のがむしゃらな熱量、追いかけ追いつき追い抜くことでしか生まれないチャレンジャーの物語ってのに、必然性と説得力がなくなってくるのも道理。
見知った顔でありながらアイドルとしてはゼロからのスタートになるのんちゃんを、三年目を牽引するエンジンの一つに据えたのは、姉たちでは出来ないタイプの物語をプリパラに引き入れる意味でも、中々妙手だったと思います。
トップアイドルである姉たちとの間にある長ーい距離も、小狡いのんちゃんのキャラならチートスレスレの手法で埋めて文句が出ない(むしろ笑いと『らしさ』)になるってのも、キャラを活かした巧い手筋よね。


○ワールドルーラーとしてのジュルル
『ポッと出アイドルが神アイドルの領域に挑む』という、商業的な理由に後押しされた無茶苦茶を通すべく、複数アカウントの許可を出した神赤ん坊・ジュルル。
考えてみれば、『神アイドルグランプリ』という三年目のステージ自体ジュリーが設定したもんだし、それに挑む資格である神コーデもジュリーから下賜されるわけで。
トライアングルというライバルの存在も含めて、三年目がジュルルで回ってるってのは間違いがなさそうです。
こういう構造的歪さを、ネタを交えつつ作中でしっかりつっこめる辺り、ドロシーというのは有能なキャラだ。

のんちゃんはらぁらママの妹(つまり叔母)として初期から面倒見てたので、ジュルルに気に入られているのも納得は行くし、今回もソラミメンバーの時と同じように名前を呼んでました。
自分のオシメを替え飯を作ってくれる女以外に神に挑む資格を与えない、超タチの悪いマザコンゴッデスジュリーが、なぜ赤ん坊になりたかったのかという動機は、未だにさっぱり分かりません。
プリパラというアニメは凄く計算高い部分がある反面、大きなロジックを力技で蹴っ飛ばしてなんか解決した風味に終わらせることも多いので、ジュリーがジュルルになりたかった理由が今後説明されるかは、予断を許さないところです。
しかしまぁ、プリパラ全体があのベイビーモンスターにブンブン振り回されている状況ではあり、その理由くらいはいつか納得したいわよね。

赤ん坊の寵愛一つで新しいキャリアに挑戦できるかどうか決まるという、かなりいびつな今のプリパラ。
その歪に巻き込まれ、ここまでほぼステージ無しでやって来てるドレパですが、天下の勝わり、視聴者の代弁者たるドロシー・ウェストさんがその特性を遺憾なく発揮し、ようやくメイン話がやってくるようです。
そうなんだよなー、らぁらたちが赤心でジュルルと向かい合い、結果として神コーデを貰ってるいるのは事実なんだけど、あまりにジュルル=ジュリーと神コーデの繋がりが強固なんで『神コーデが欲しければジュルルを可愛がればいい』っていう発想は、自然と湧いてくる。
そういう視聴者の覚めた目線をキャラに埋め込んで、作中で転がすことが出来るのは強いよなぁホント。

僕はシオン軸でまとまりつつ、ドタバタ楽しいドレパの空気がかなり好きなので、久々のドレパエピとしても嬉しい限り。
……欲を言えばシオンピンのいろは絡みで一話使ってほしくもあったが、それは流石に欲張り過ぎだろう……。(いろはさんとのプライドのあるライバル関係大好きマン)
ドロ子の欲望まみれの計算が神コーデをもぎ取ってくるのか、はたまた欲得を乗り越えて身勝手な赤ん坊を愛する成熟にたどり着くのか。
来週のプリパラも、とても楽しみですね。