イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ふらいんぐうぃっち:第10話『料理合わずと蜂合わず』感想

なんてことない瞬間の輝きを切り取る、弘前魔法少女青春絵巻、今週は調理実習と林檎。
今週も魔法っぽいド派手なことは特に起きず、みんなで料理作って摘果するだけの、シンプル弘前学生ライフでした。
しかしそれを切り取る筆が常に繊細で、キャラクターの感じる喜びや驚きがすすっと伝わってくるので退屈がないという、これまたいつものふらいんぐうぃっち
でもこの『いつもの』を『いつもの』通りに伝えるために、どれだけの奇跡が起こってるのかって考えると、やっぱすげーアニメよコレ。

今週に限らずなんですが、このアニメは『いつもの』の中にある小さな出会いをすごく大事にしています。
今回で言えばなおは苦手だった料理に挑戦し、真と茜は林檎の摘果という未経験の事柄に頭から突っ込んでいく。
フツーのおばちゃんと肩を並べて作業し、ハシゴを抜けた先にある高い風景に目を細めたりする。
そういう当たり前で特別な風景に出会った感激を、スッと絵にしていた林檎畑の風景はほんとうに素晴らしかったです。

一見同じように見える日々の中に様々な新発見は埋め込まれていて、彼女たちは自然体でそれを受け入れ、自発的に未知に飛び込むことで喜びと驚きを手に入れる。
素直さと自然さがもたらすそういう出会いを、このアニメもキャラクターたちも『意識高く』声高に叫ぶのではなく、ほっこり楽しい日常コメディの一場面として、肩の力を抜いて楽しんでいる。
今回描かれた新しい出会いを見て、魔法も摘果も調理実習も同列に価値あるものとして描くこのアニメの筆は、やっぱ豊かだなぁという思いを新たにしました。


日常の中の小さな出会いは、それをド派手に飾り立てることが出来ない分、視聴者の心に刺す演出をどうつけるか、悩ましいと思います。
細かくフェティッシュなカメラの切り替え、BGMとセリフで作る音の間合い、一瞬のタメと開放感など、色んな手管を動員しつつ、それを誇らないストイックさが、やっぱ僕は好きです。
『軽トラの荷台に乗る』というちょっとした特別な時間も、非常に細やかな動画で楽しく描かれていて、『ああ、こういう時間はあるなぁ』という共感が心から湧き出る感じに仕上がっていました。

Aパートも珍しく『学校』を舞台にすることで、視聴者との共通部分を強く印象づける構成でした。
気合を入れておかずを作って、うっかり飯を炊き忘れるという『あるあるオチ』だけではなく、先生の丁寧な指導でコツを掴んでスムーズに上手くなっていく感覚とか、調理実習室のワチャワチャした感じとか、親近感を引き寄せる絵がたくさん入ってて、すげー良かったです。
『魔女』を特権視せず日常に埋め込んだように、他の作品だとメインに置かれがちな『学生』という立場もまた日常の一側面に留める辺り、やっぱ独特の描き方だよなぁこの話。
高校に舞台を絞っちゃうと、千夏や茜、犬飼さんといったレギュラーが弾かれちゃうし、非常にいい意味でフラットな価値観が崩れもするだろうし。
でもそういう高校生活も真琴の輝ける日々の大事な一部であり、今回しっかり切り取ってくれたのは彼女のファンとして嬉しかったです。

常に人生を楽しみ、ポジティブに肯定する優しく強い人達の暮らしを、しっとりと歌い上げるお話でした。
やっぱ自分たちがどんなアニメを作っていて、何が強いのかを把握していると安定感があるなぁ……軸があればこそ、変化球が刺さるよね。
このアニメのど真ん中、やっぱ俺に刺さるわぁ……と痛感する、『いつもの』ふらいんぐうぃっちでした。