イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第13話『やばいものを拾ったっス!』感想

山奥から出てきた田舎者に石は投げないけど、サイコ殺人鬼が影から狙ってる系仙台アニメ、今週はジジイとベイビーと俺。
とんでもない拾い物をした仗助&ジョセフ親子をコミカルに描きつつ、ぎこちない関係の親子が確かな絆を確認するまでをコンパクトにまとめていました。
ボケ老人ギャグにめんどくせー育児ネタで笑いを取り、赤ちゃんとの心あたたまる交流を見せ、スタンド能力で生み出されるマジやべぇピンチで緊張感を作り、最後は覚悟と自己犠牲でガッツリ感動という、色々乗った欲張り御膳でした。
赤ん坊の世話をするという極めて『日常』的なセッティングの中で笑いを作りつつ、『強さ』『優しさ』『率直さ』という少年漫画的なテーマをしっかり盛り込み、殴り合いでは描ききれない『日常の強さ』を取りに行くのは、流石だなぁと思います。
明確な敵がいなくても、ここまで起伏とバリエーションの有る話作れるんだなぁと、アニメで見て感心しなおしちゃったよ。


いつもはスーパークールな仗助も、その実高校生。
長年あってない年の離れた親父には気まずさも感じるし、ボケジジイの世話はめんどくさいし、修羅場には思わずパニクっちゃったりもする。
普段は見れない未熟さが表に出てきて、彼の意外な側面を楽しめたエピソードですが、それもジョセフがケツを持てばこそ。
なんだかんだ言っても父親の存在感は大きくて、普段はバカと初心者の面倒を見るのために隙を見せない彼が今回慌てふためく事が出来たのも、ジョセフという存在があってのことでしょう。

しかし第四部のジョセフは無条件に頼れるマッチョなヒーローではなく、頭はボケてるし体はヨボヨボだし、むしろ守るべき弱者の側にいます。
散々ボケ老人ギャグで笑いを取っていればこそ、往年の観察力を発揮して赤ちゃんに気づくシーンで視聴者は『オッ!?』ってなるし、同じ弱者である赤ちゃんを的確にケア出来る『弱い強さ』が目立ちもする。
激しい戦闘ではクールで完璧に見える仗助も、性格ゆえか若さゆえか弱者をケアする『弱い強さ』……つまり『優しさ』にはまだまだ未熟なところがあるんだなぁと認識させる上で、ジョセフが弱々しいことは大きな意味を持っていると思います。

ジョセフが『弱い』ことは笑いの軸にもなっていて、『弱い』はずのジョセフに『強い』仗助が振り回される価値転倒の面白さは、なかなか鋭いものです。
単純な仕草の面白さとか、クドすぎる赤ん坊用品屋のベシャリの面白さとか、色んな要素が組み合わさって今回珠玉のコメディ回に仕上がっているわけですが、『普段はクールな仗助があんなみっともない姿を!!』っていう気持ちも、結構大きい気がする。
それにはジョセフが弱者であることは大事でして、『強さ』『優しさ』『率直さ』という少年漫画的なテーマを維持しつつ、コメディの骨格を維持するのはさすがよね。


舞台を取り替えることで、普段はできないお話をやっているのは『強さ』に関してもそうで。
戦闘がない今回、お話を支配するルールは『強さ』から『優しさ』『率直さ』に変わっているんだけど、世間体を気にして赤ちゃんを抱きしめられない仗助には、事態を解決することが出来ないわけです。
素手でウンチを受け止め、ただただ赤ちゃんのために何かをしてやろうと動き続けるジョセフの『弱さ』と『率直さ』こそが今回の騒動を収めるためには大事で、その時『弱さ』は『強さ』に変わってしまっている。
これは敵をぶん殴って黙らせれば話が収まる、『強さ』が『強さ』として機能するいつものスタンドバトルでは、中々表現が難しい部分だと思います。
価値転倒は笑いだけではなく、アクションの中でも起こっているわけです。

そして同時に、この『日常』でも戦闘と同じく血は流れるし、犠牲は必要になる。
他人のために躊躇いなく血を流す『覚悟』は戦場で必要とされる『勇気』と同じで、それを目のあたりにすることで仗助はジョセフを己の父親として認めることが出来るわけです。
ここら辺はバトル漫画の主役たちらしい、『へっ……おめえもやるじゃねぇの……』的な共感な作り方だなぁと思ったりもします。
戦場で流れる血を『日常』でも流させることで、今回示した『弱い強さ』や『率直さ』という『日常の強さ』が一見無関係な『非日常』の中でも大切な価値を持っていると接続することもできていて、良いシーンよねあそこ。
つーかアレよ、一瞬で覚悟を決めるジョセフの『凄み』が無条件に超カッコイイのよウン。


シリーズ全体に投げかける影響を抜きにしても、赤ちゃんを媒介にして変化していくジョセフと仗助個人、そして二人の関係性の丁寧な描写は、見ていて楽しいです。
赤ちゃんを一緒に世話することで、『あ、こいつ思いの外いいやつだな』という実感を得たり、コミカルでハードな試練を前にしてどんどんボケが治っていったり、ベビーカーを暴走させて『やっば駄目だこのボケ老人!!』ってなったり、いろんな起伏があんだよねこのお話し。
僕は『キャラクターが良いことをする』のを見ているのがとても好きなので、赤ちゃんを優しく扱う二人を見ているだけでも幸せな気分になるし、そこに伴う色んな厄介事をリアルに、しかしコミカルに描く筆だけで、なんだか楽しくなってきます。
こういうベーシックな『いい話』をきっちりやれるのも、最後ちょっと外したアイリス・インで〆る洒落た感じも、この話が好きな理由だなぁ。

今回の話しがとても好きなのは、ジョセフの『弱い強さ』を強調するために、仗助が完全に無神経な冷血漢とは描かれない所です。
いかにクールに見えても、祖父の遺志を継いで街を守ることを決めた仗助には熱い正義の血が流れていて、『優しさ』に感じ入る心をしっかり持っている。
だからこそ赤ちゃん相手に必死になるし、世間体を気にしていても最後には水に濡れるのも構わず、思いっきり川に入っていくわけです。
しかし彼の『優しさ』にはちょっと未熟な点があって、それは第二部の若いジョセフと共通する、『荒々しさ』という主人公の資質だったりする。
若いからこそ目立つもの、年を経たからこそ手に入れられたものを対比する上でも、仗助の『優しさ』を描きつつ、それがちょっとだけ足りない所に収めたバランス感覚はスゲー良いなと思うわけです。

今回の話しはスタンドという『非日常』の力が解決の決め手にはならないところも好きで、スタンドで引き起こされた騒動を解決するのは、結局ジョセフの覚悟と自己犠牲です。
考えてみると普段のバトルもスタンド能力を大いに活用しつつ、最後の決め手は魂の輝きそれ自体なわけで、『非日常』の異能力を輝かしく書きつつ、人間存在が根本的に持ってるパワーに戻ってくる普遍性が、やっぱ好きなんだなと思いました。
無論不思議な騒動事態はスタンド能力が引き起こしているし、"ハーミット・パープル"が赤ちゃん引き寄せたりはしてんだけどね……ここら辺のバランス感覚はさすがよね。


と言うわけで、普段と少しずれた舞台でいろんな事をやりつつ、おはなしの根本的な部分をしっかり抉るエピソードでした。
こういう軸のずれたお話しは、第四部だからこそ出来る魅力に溢れていて、凄く好きです。
水に落ちた赤ちゃんがジョセフの血によって見出され救出されるという、『洗礼と犠牲』のモチーフをひっそり入れてるところとかも好き……考え過ぎかもしれんけど。
クールな側面が強調されがちな仗助が親父にぶつかることで、意外な顔を見せてくれるのも素晴らしかったですね。

来週はついに露伴ちゃん登場っつーことで、モリモリ期待が高まります。
1クール終えてなお加速するジョジョ四部アニメ、一体どこに僕らを連れて行ってくれるのか。
いやー、楽しみだなぁ。