イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第14話『漫画家のうちへ遊びに行こう その1』感想


日常の中に潜む闇を描いたサイキック・サイコホラーの傑作、今週はエキセントリック漫画家ボウイ。
ヤンデレと男に好かれるフェロモン垂れ流し少年こと康一くんが、櫻井声のスーパーサイコに気に入られるお話でした。
モチーフを取り込んだ漫画っぽい演出、数々のクズイケメンを演じてきた櫻井さん貫禄の演技、ゴミクズ人間として話を引っ張る間田の存在。
テンション高めのハイテンポでグイグイと引きずり込まれる、見事なヘブンズドアー出題編でした。

日常コメディからラブロマンス、スタンドバトルに人情話まで、色んなジャンルを軽やかに横断するのがジョジョ四部の魅力だと思います。
その根本にあるのは『平穏な日常が一瞬で崩れ去る危うさ』をスパイスにしたサイコホラーであり、スタンドよりも恐ろしいエゴイズムの暴走です。
平穏な日常を黄色がかって人物もデフォルメされた状態で描き、『漫画家のうち』の敷居をまたいだ瞬間、スッと色彩が冷え描写のリアリティも上がる今回の演出は、非常に上手く『日常』と『非日常』の境目を描いていました。

『閉鎖された家』というのは虹村家にしてもトニオの店にしても由花子の別荘にしても、第4部でよく登場するモチーフです。
『家』という暖かな空間は同時に、扉を閉めブラインドをおろしてしまえば様子を伺えない闇にもなり、その内部で展開する『非日常』は外部からは確認できない。
しかし『家』というのは『日常』を形成する大事なパーツであり、『当然あって当たり前』と受け流していればこそ、そこで行われている奇っ怪な事件には基本的に気づくことが出来ない。
頻発する『閉鎖された家』とはつまり、四部で描かれている『日常』と『非日常』の危うい関係そのものであり、今回の岸辺邸もまた『日常』を擬態しつつ犠牲者を待ち構える、狂気の蜘蛛のような存在なのでしょう。
なので、毎回『敷居をまたぐ』瞬間は逃さず強調され、境界線を超える決定的瞬間としてしっかり演出されるわけです。

そして狂気の網に掛かったのは、今回も康一くん。
仗助や億泰だとサイコ野郎に出会ってもドララーって顔面殴って終わらせるだろうから、被害者役が小さな康一くんに回ってくるのは、まぁしょうがねぇ。
あの子基本善人なんで、今回も暴力振るう前にしっかり警告してたしね……そこを付け込まれてサイコに愛される様になってくんだね……。
かつては危ないゲス人間として描かれていた間田も小さく可愛くなってたし、今回は『無邪気で哀れな犠牲者』という役割を、絵で強調していたように感じました


んで、罠にかかった康一くんを思う存分貪る今週のサイコ、岸辺露伴
櫻井さんの演技力と熱がおもいっきりドライブし、『他人をなんとも思わないが、漫画には一途なサイコ』というキャラクターを魅力的に浮かび上がらせていました。
櫻井さんの声艶があるんで、康一くんを追い込むと奇妙にエロティックでして、その隠秘さがシチュエーションのヤバさに拍車をかけるという、なかなか面白いことになってましたね。
つーか露伴ちゃん、康一くんのこと触りすぎ押し倒しすぎだからなぁ……人間嫌いのはずなのに。

露伴は自分のためなら他人をどんな気持ちにさせても気にしない、最高に(もしくはサイコに)危ない男ですが、漫画に掛ける情熱だけは本物中の本物です。
蜘蛛を舐め、高校生にゲロを吐かせ、見ず知らずの他人に罵声を浴びせ、スタンド能力で体重を20Kgふっとばすのも、全ては魂を捧げた漫画のため。
どんだけ自分勝手なサイコ野郎でも、『この岸辺露伴が金やちやほやされるためにマンガを描いてると思っていたのかァーーーーッ!!』という叫びは裏表のない真実ではあります。

この話の『強さ』が常に『精神的な強さ』であり、スタンドを経由してそれが『物理的な強さ』に変わる構造を持っている以上、露伴の強靭な(もしくは狂人な)信念は善悪別にして『強さ』です。
一種主役たちにも通じる『覚悟』がある彼は強敵であり、記憶・精神操作まで可能な”ヘブンズドアー”の魔の手から、康一くんは自力では逃れることが出来ない。(ここら辺のMC要素が、インモラルさに拍車をかけてますね)
たっぷり時間を使って『哀れな犠牲者』康一くんが『捕食者』露伴にバックリ行かれるところを描いて、白馬の王子のごとく危機に駆けつける主役コンビを写して終わる今回は、巧いこと恐怖と期待を煽り、それにしっかり答えた展開だったと思います。
やっぱクレイジーな強敵がしっかり描写されてこそ、それに打ち勝つだろう主役の活躍にワクワクもできるよね。


『哀れな犠牲者』康一くんのいい子ちゃんムーブだけだと話は先に進まないわけで、心を入れ替えてもクズはクズな間田が三人目を担当するのは、なかなか理にかなった配役だと思います。
『生原稿をチラ見する』という悪事を犯さないと”ヘブンズドアー”は発現しないけど、『読者に好かれる主人公』である康一くんに、そういうつまんねー悪事をさせる訳にはいかない。
清廉潔白で勇気満点な康一くんには出来ない、しかしやらないと話が進まないことを、小市民・間田がやってくれることで、物語の展開はスムーズになるし、康一くんは『哀れな犠牲者』の立場を崩さずにいられる。
話の導入だけではなく、事件に巻き込まれてからも、今回の話しは間田あっての展開なわけです。
まぁ仗助達が登場して、話が次の段階入ったから出番は露骨に減るんだけどさ来週から。

そういうメタ的な仕事っぷりだけではなく、魂を入れ替え頭身が変わっても治らない、せせこましいクズっぷりはなんとも面白い。
今回の間田の変化は『人間の性根はなかなか変わらない』というメッセージでもあり、しかし一度仗助にボゴにされることで、少なくとも他人を害する形でのゴミっぷりは鳴りを潜めてはいるという、一種のアフターフォローでもあります。
玉美にしても億泰にしても、一回戦えば終わりな『非日常』ではなく、学校でもう一度会うかもしれない『日常』が舞台だからこそ、四部は悪党のその後を描きやすいのかもな。
そういう変化を見るのも、人間喜劇としてよく出来ているこの物語の、大きな喜びでもありますね。

と言うわけで、強烈な存在感を醸し出すサイコ漫画家、岸辺露伴登場編でした。
『直接人を殺すわけではないけども、自分のために他人を踏みにじることはためらわない』という難しい塩梅のサイコを、ホラーとコメディ両方の演出を怠けないことで、巧く描写していました。
四部アニメは怖いシーンがちゃんと怖いの、すごく良いよなぁ。

まった可哀想なヒロイン役を担当している康一くんを、アホバカ高校生二人はどう助けだすのか。
反則級の強さを持った"ヘブンズドアー"に対し、"クレイジー・ダイヤモンド"は、"ザ・ハンド"はどう立ち向かうのか。
いやー、来週がマジ楽しみですねぇ。