イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第103話『落第アイドル始めちゃいました(T T)』感想

ママは小学六年生! ほんでもってアイドル!! なアニメ、OPも変わった今週は子育てとソーシャルサポートのお話し。
神コーデ絡みもトライアングルも一段落付いたんで、ジュルル周りをもう一歩前にすすめるべェッつうわけで、大人勢にカムアウトして前歯が生える話でした。
学生の本分に邁進して憂いなくジュルルを抱きしめるべく頑張るらぁらだけではなく、彼女を支え見守る友人と大人にもしっかりカメラがあたる、幅の広い回だったと思います。
半分くらいグロちゃん&シュガーのお話しなんじゃないかというくらい、彼女たちがジュルルに感じたことをしっかりやってくれて、彼女ら好きな俺としては良いエピソードでした。

今回の話しは第95話の直線上にあるエピソードでして、あの時は『らぁらのアイドル仲間』という年齢的に親しいサークルにカムアウトされたジュルルという秘密が、今回は『親世代』という、より広くより遠い存在に認知されるお話です。
当時は『デジタル子育てマジ大変だし、とっとと話して親の支援受けなよ』と思っていたわけですが、ジュルルの存在が『子供たちだけの秘密』だった八話の間に、ジュルルという弱者を背負うことで彼女たちがどれだけ成長したかを考えると、秘密として抱え込む期間も物語としては必要だったのかなぁ、と思えます。

実際の話、秘密を抱え込んでいたことも成績が下がったことも叱らず、まず三ヶ月間の努力とジュルルの安全をしっかり褒めるあたり大神田校長は相変わらず出来た大人であり、あそこで大人世代に話が渡っていたら、トントン拍子で進みすぎてお話が作れていなかった感じはある。
シュガーも混乱しつつ、気持ちが落ち着いたら『ママの先輩』としてジュルルをしっかり受け止めてくれてるしなぁ。
かぼちゃの離乳食を一緒に作るラストシーンは、母娘の絆が、そして『母』としての連帯感がしっかり感じられ、これまで丁寧に積み上げてきたジュルルの発育段階を更に一歩すすめる、良い描写でした。
赤ん坊の微細で段階的な成長を描く上で、『何が食えるようになったか』をしっかり組み込んで説得力に変えてるのは、非常に鋭い演出だと思うね。


グロちゃんが優れた教育者でありよく出来た大人だってのは、例えばふわりへの対応とか見ていても判るわけですが、今回も問題児童の戸別訪問をこなし、学業に専念させるためにジュルルを引き取って子育てを担当し、八面六臂の大活躍でした。
無理したおかげで生ける屍みたいな表情になってましたが、まぁそれは実母であるらぁらも第93話で通った道だしね……らぁらを支える人はいっぱいいるけど、らぁらを支えるグロちゃんを支えているのはリナちゃんだけなので、必然的に潰れるという描き方は面白かった。
大人だろうと子供だろうと、赤ん坊を守り育むことはとんでもない難事であり、適切な理解と支援を絶対に必要することなんだってメッセージが、ボロッカスになったグロちゃん見てるとよく分かるね。

生徒のためという義務感だけではなく、非常に個人的な情愛でもってジュルルを受け止めている所が、今回校長の描写で一番好きなところです。
子供には出来ないデカパイコミュニケーションで仲良くなり、『ジュル子』という独特な呼び名まで付けてしまうあたり、校長はジュルル好き過ぎであり素晴らしかった。
高所から落ちそうになったところをみんなで助けようとする描写からも、ジュルルがあらゆる人に愛され祝福される様子がよく見れて、非常にほっこりしました。
同時にらぁらとの関係が一等特別だってのもしっかり描写されてて、巧く主人公の唯一性書いてるなとも思う。
前回のキチエピにしても、爆発で飛ばされたジュルルを受け止めてんのはエピソード主役のシオンではなく、あくまでらぁらなのよね……代わりの利かない関係ってのは確かにあるけど、その重さで人間簡単に潰れるから、周りがいらないってわけでもないってバランスは良く出来てる。


グロちゃんの孤軍奮闘に対応するように、テストのために頑張るらぁらは友人たちにしっかり支えられ、ぶっちぎりのおバカを克服するべく頑張ってました。
年齢関係なくらぁらを支え守ってくれる友人の幅広さも良かったですが、のんちゃんが感情むき出しでぶつかってきた所、本当に良かったな。
らぁらの妹であるのんちゃんは、らぁらと一緒にジュルルを育ててきた戦友であり、らぁらと同じくらい強い感情をジュルルに持っているわけで、「取り返してよね!」っていう一見強い言葉も、そういう思い入れからでている。
何でもできるスーパー妹故になかなか感情が見えにくいのんちゃんなんだけど、三期になってスポットライトが強くあたっていることもあって、彼女の内側はよく見えるようになってきた気がします。
やっぱ時間を使って丁寧に、キャラクターが何を考え、何が大事なのか分かってくると、当然愛着も強まる。

『テストの点が最悪に悪い』というコミカルな描写の裏には、らぁらの生活がジュルルに偏りすぎて、バランスを欠いている状況があります。
『ジュルルには私がいないと!』という発言はひっくり返せば『私にはジュルルがいないと!』という共依存の暴露であり、たとえ愛情に裏打ちされたものであっても、学業に支障が出ている以上それは人生のバランスを欠いてしまっている。
校長がジュルルをらぁらから引き離したのも、そういうアンバランスな状況を是正するべく、環境を変える狙いがあったのでしょう。
……死ぬほど忙しいんだからベビーシッターなりに預けてもいいのに、きっちり自分で引き受ける辺り校長責任感強いな……。

のんちゃんの叱咤激励を受けてらぁらは『母/学生/アイドル』のバランスを取り戻し、友人の支援を受けて勉学に励み、しかし目標の点数は達成しきれない。
ここら辺のシビアな流れをコミカルに勢い良く描けるのはプリパラの強みだと思いますが、『目標を達成できなかった』という事実には、それなりにシリアスに対峙していました。
校長の狙いはらぁらが背負う『母/学生/アイドル』という役割のバランスをとることであり、最初に妥協していることからも判るように、点数それ自体は目安でしかありません。
らぁら自身が真摯に問題に挑みそれなりの結果を出したこと、彼女を支える友人たちの気持ちを受け取ったことで、アイドル仲間のグロちゃんとしてではなく、教育者・大神田グローリアとしても『問題ない』と判断できたのでしょう。
こういう判断が出来る校長自身が、一年目2クール終わりまではプリパラ憎しでバランスを崩し、極端な行動を取っていたこと(そしてそれを是正したのが、当のらぁらであること)を思い出すと、なかなか感慨深い判断な気がしますね。


今回のお話しは、らぁらが『母』であることをけして否定はしません。
らぁらが95話の危機を乗り越え、同じ目線で一緒に楽しみながら子育てに熟練した様子は、しっかりと尺を使って描写されています。
あの時『どうして言う事聞いてくれないの!』と叫んでいたらぁらは、お風呂にもミルクにもすっかり慣れて、ジュルルと同じ目線で様々な楽しみを提示し、ジュルルと一緒に喜びを受け取りながら過ごしている。
三ヶ月の艱難辛苦を経て、らぁらはジュルルという『他者』の喜びをしっかり自分自身の喜びとして受け止め、無理なく子育てを楽しむメンタリティを育めたわけです。

あの幸せそうな時間をじっくり描いたことからも、今回のお話しから『母』そのものの否定を読むことは難しいし、『母』とそれ以外の役割のバランスを、どう維持し修正していくかが大切なのだという声が強く聞こえてきます。
こういう描き方をしっかりやっておくことで、『みんなトモダチ、みんなアイドル』という題目が要求する『人間の様々な側面≒個性の受容』という大きなテーマ性も表現できるし、やっぱ根本的にしっかり話だと思う、プリパラは。

『母』でありつつ『学生』でもあることは、真中らぁらのアイデンティティにとって非常に大切です。
そのためには守られるべき『弱者』であるジュルルだけではなく、ジュルルを守る『母』であるらぁらもまた、社会的・個人的な支援をしっかり受け、守られる必要と権利と義務がある。
誰かが誰かを一方的に支え、認めるのではなく、年齢や立場を乗り越えてお互いを支えあい守り合うことの豊かさこそが、『みんなトモダチ、みんなアイドル』というコピーを支えている。
今回のお話しは、強く見える『母』をどう守るのかということに、結構踏み込んだ話だった気がします。

そういう目線で見ると、『子供』の前では経済的困窮という『弱さ』を絶対に見せず、様々な祝福をしっかり維持し続けてる真中父母も凄まじく人間出来てる人たちだよなぁ……。
彼らが親としてのプライドだけで立っているのか、夫婦相互で支えあっているのか、画面に映らないところで誰かに支えられてるのか、気になるところではあるわな。
大神田校長とシュガーの距離感を見るだに、見えないところでちゃんと支えあっている感じは受けるね。


というわけで、やや『母』に寄りすぎていた真中らぁらのバランスを、色んな人の協力で取り戻すお話でした。
らぁら個人の努力や喜びをしっかり描きつつ、彼女を取り巻く様々な人の真心や影響もちゃんと切り取っていて、中々に豊かな物語だったと思います。
特にグロちゃん校長は強い所、正しい所、弱い所、面白いところ、色んな表情がたっぷり見れて、彼女のファンとしてありがたい限りでした。

らぁらとジュルルの親子関係はこのエピソードでまた一つ深まったわけですが、来週はもう一つの擬似的親子関係、ガァルマゲドンの大暴れ。
あろみか単独のパートナーシップ、ガァルルの怪獣っぷり、末っ子を可愛がるあろみかのお姉さん力、お姉ちゃん達に甘噛するガァルルなどなど、ガァルマゲドンには様々な魅力がたっぷり詰まっているわけですが、さてはて来週、どのような見せ方をしてくれるのか。
今週の仕上がりを見ていると、安心しつつ興奮し、期待を高めることが出来ますね。