イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

あまんちゅ:第1話『少女と海のコト』感想

伊豆半島が引力を発揮して可愛い娘を引き寄せる系アニメ第二弾、堂々の第一話です。
沼津の方は音楽頑張ってますが、こっちはダイビングとゆるっとした日常、そして女体。
ちょっと鬱々とした黒髪ロング美少女が、短髪元気っ子と運命の出会いを果たし、色々めんどくさい青春の扉を開くまでのお話でした。
原作の魅力を活かしつつ、アニメーションにしか出来ない表現をたっぷり盛り込み、お話の基本的な構造を暗示しつつ、ゆるやかに滑りだす。
控えめに言って完璧なアニメ化第一話だったと思います。


兎にも角にも、まず絵が綺麗!
やや淡い感じなんだけどぼやけ過ぎない色彩を活かし、こずえ先生の世界を見事にアニメにしていました。
現実の伊東の三倍くらいキラキラしたファンタジー伊東も輝きまくっていて、『なんだか素敵なことが起こるぞ!』という気配が画面からほとばしっていました。
この話は日常の分解能を極限まで上げて、そこに潜んでいる不思議や素敵に頭からぶっ込んでいく一種の幻想譚なので、絵と色合いというアニメの基本パーツがそういう気配に満ち満ちていることは、凄く良いことだと思います。

そして女体に迸るフェティシズムも、しっかりアニメになってました。
『この制服を着る限り、余計な脂肪をつけることは絶対許さん!!』と言わんばかりの、ボディライン丸出しのスケべ服が画面に映り続けていて、最高にフェティッシュだった。
その描写から感じる発情も『ぐへへー、乳尻太ももー!!』という脂ぎった感じより、『なぁ……腰からヒップにかけての柔らかな曲線は……良いだろう(浪川声)』みたいな、一見落ち着いているけどよりカルマの濃いこだわりにあふれていて、清潔でスケベで凄く良かったです。
漫画の段階でスーパースケベタイムだったけど、アニメになって色と動きがつくとボディラインへのこだわりがさらに強調されて、すさまじい圧を生み出してましたね。
森薫といい、一部の女流は男の六倍(当社調べ)くらい女体好きだからなぁ……女体って言うより、自然の中にある優美でエロティックな造形それ自体が好きなんだろうなぁ……。

パーツへのこだわりは何もまろやかな曲線だけに発揮されているのではなく、海や豚汁、学校マップや黒板の絵、たらいから湧き上がる泡に至るまで、世界を構築する様々なアイテムに適応されています。
特別なアイテムを目ざとく見つけ、なんでもないはずのそれを特別に描き切ることで、アイテムが埋まっている日常自体を特別化していく。
ともすれば『綺麗なモノを描きたい』だけで終わってしまうパーツへのこだわりですが、実は日常系というジャンルが要求する表現と密接に関わっていて、例えば"のんのんびより"や"ゆるゆり(特に三期)""ふらいんぐうぃっち"などが達成してきた演出ラインに乗っかった、必然性のあるこだわりだと思います。
(どんだけキラキラが強化されているとはいえ)現実と地続きの伊東を舞台とし、等身大の高校生を主役に据えたうえで、どれだけファンタジックな特別性を引っ張り出せるかが勝負どころなので、描画の肌理がとにかく細かいのは良いことだ。

あとGONTITIの劇伴がむっちゃアルファ波出る最高の仕上がりで、BGMだけで既に勝っている感じすらあった。
色合いにしてもキャラデザにしても、激しさを秘めつつ自然に滑りこんでいくスタイルを貫いているので、穏やかに語りかけるようなGONTITIの音楽を使いこなしているのは、非常に良い。
今回は上がり調子の明るいシーンが連続しましたが、下げ調子になった時どういう感じでBGM使ってくれるかも、期待大なポイントですね。

芝居の付け方も非常に細かくて、『豚汁かき回す動きに、そんなに枚数使わなくても良いんじゃねぇかな……』と正直思わなくもない。
第1話だから気合と予算をぶっ込んだってのはもちろんあるんでしょうが、情報量のある芝居を常時つけ続けることで『この普通に見える光景は、なんか特別だぞ!』というサインを濃厚に出すっていう作りは、やっぱり日常系に必要な演出戦略をしっかり踏まえている。
ぴかりがエキセントリックな子なんで、その性格を反映して芝居が大きくなってるってのもあるけど、てこの内にこもった演技にもしっかり枚数使ってたからな。
とにかく、アニメの作り方自体が『なんてことない真いに血の中に、不思議や素敵が溢れているんだ』という作品の、そしてジャンルのメッセージをしっかり体現しているかみ合わせは、物語が加速する良い足場になると思います。


お話の方は非常に素直な青春ガール・ミーツ・ガールでして、伊豆に出会い、海に出会い、新しい学校に出会い、運命の女の子に出会うという、作品に出会う第1話に相応しい出会いの物語。
物語の端緒となる出会いを連発しつつも、これからの展開をしっかり暗示しガイドラインを引いているのが巧妙なところでして、携帯電話の狭い世界に閉じこもったままのてこの現状と、それを打ち破って世界を広げてくれる色んな素敵が既に示されています。
今回見せた出会いが一体何を生むのかってのは、光の祖母と先生が既に述べてしまっていて、それはつまり『顔を上げて、新しい環境を受け入れて自分を変えていこう』という、オーソドックスな成長の物語です。
つまり子供が自分の足で立って世界の広さを知る話なんですが、そういう物語に絶対必要な『大人の頼もしさ』が第1話の段階でしっかりあるのは、作品を信頼できて良いわな。

成長物語を成り立たせるためには、キャラクターを低い所から高いところに引っ張り上げる必要があるので、過去の写真で埋まった携帯電話を睨み続けて、いまいちファンシー伊豆になじめない主人公を常時写していたのは、とても良かったな。
基本的にはこの話、てこの閉じて狭い世界が開放されていくことでお話が転がっていくわけで、物語の開始段階でてこの世界がどれだけ閉じて後ろ向きなのか、しっかり見せるのは大事だ。
その閉鎖性の描き方も世の中すねて呪っている陰鬱な感じではなく、あくまで等身大の内気さに収まっているというか、ちょっと勇気を出せば世界が変わりそうな期待が持てる程度に調整されている。
あんま激烈にマイナスを描くと、キャラクターのこと好きになる前にお話嫌いになっちゃうからねぇ……『うじうじしてるけど、他人の優しさには気づける子です』っていう部分をしっかり描いたのは、チャーミングな見せ方だったと思います。

うじうじ根暗人間大木双葉を引っ張るもう一人の主人公が、短髪元気野郎こと小日向光。
後ろに下がろうとするてこの手をぴかりが引っ張り、心の垣根を大股で越えて勝手に外の世界に引っ張りだすっていうのがこの話の基本構図なので、彼女のパワーが元気よく描かれていたのはグッドナイスだ。
他人のパーソナルエリアに一気に入り込む強引さ(僕は"縮地"と呼んでいます)がお話を引っ張っていくので、あまりに近すぎる(そして乱れる黒髪の描写がフェティッシュすぎる)あだ名つけのシーンが鮮烈に描かれていたの、非常に良かったです。
アニメになって音がつくと、笛をピーピー鳴らし続けるエキセントリックさが強調されすぎるきらいがあるけど、チャック空いてて赤面する場面とか可愛く描いてくれたんで、ただの鈍感天然ガールではないことも伝わっただろう。
エキセントリックさ一辺倒ではなく、それを強調しつつ恥じらいをスパイスとして混ぜて、『あ、天才キチガイに見えるこいつも、血が通ってんだ』と視聴者に思わせるやり方、巧妙ね。

出会いが灰色の世界を変えていく物語は、その出会いがどれだけ鮮烈だったか的確に表現することが大事だと思います。
教室であだ名を付けるシーンは、無遠慮に心に踏み込んでくるのにそれが不快じゃない不思議な距離感と、そんな女の子にドキドキするてこの心拍が伝わってくるような鋭い演出がされていて、非常に良かったです。
やっぱなー、ガール・ミーツ・ガールは良い……っていうか、あらゆる物語は空から降ってきた女の子にしろ、地下に隠された秘密のロボットにしても、命の危機を救ってくれた運命の師匠にしても『出会う』ことからはじまるわけで、出会った時の衝撃がちゃんと切り取れているかどうかって、物語最初にして最大の勝負どころよね。

今回の話しでは様々な出会いを果たしつつも、ぴかりと個人的な話はしないし、ダイビングという素敵な体験もまだまだやりません。
でも今後お話がどう言う方向に進むのか、うじうじ人間がどんな素敵に出会っていくのかはしっかり示せたと思うので、いい具合に期待が高まります。
溢れる作画力をしっかり海の描写に突っ込んで、『ここです……このきらめく水の中でこの子は自分の人生を変えてしまう強烈な体験を果たし! 青春の季節を友と一緒に走りぬけ!! 人生の主体が自分自身であるシンプルな真実にたどり着いて、勇気を持って歩き始めることができるようになるんです!!! 判るだろ判れ!!!』というメッセージをぶんぶん唸らせていたのは、非常にグッド。
"Free!"もそうだったんだけど、俺水が気持ちよさそうなアニメはそれだけで点数上がるね。


と言うわけで、穏やかな出会いの中に『俺たちはこれから、こういうアニメをやるぜ!』という意気込みをたっぷり盛り込んだ第一話でした。
作画、芝居、劇伴に演出……アニメを構成する諸要素全てがハイ・クオリティであり、これから展開されるだろう『日常に秘められた素敵発見伝』に目を輝かせることが出来る、良い出だし。
女の子の描き方もチャーミングかつ美麗で、天野先生の『綺麗で可愛い』感じを的確にアニメにしてくれていて、原作ファンとしてはありがたい限り。

スクールアイドルの全国大会に出るとか、能力を磨き上げて怪物を倒すとか言う、わかりやすい目標はこのアニメにはありません。
今後展開されるのはなんてことない毎日の中に秘められている、素敵な魔法や優しい勇気に気づいて、人生を前に進めていく少女達のお話。
それを彩る学校生活や、ダイビングや、女の子たちの素敵な関係がしっかり詰まった、文句なしのスタートダッシュだったと思います。
いやー凄い、素晴らしいねアニメあまんちゅ!