イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第16話『「狩り(ハンティング)」に行こう!』感想


関川成人一人原画でお送りする、スタンドネズミ VS ジョースターの血脈な仁義なき狙撃戦。
承太郎というすでに自分の物語を終え、完成された一人の男を導き役にして、仗助の弱さと強さを見せる回でした。
お目目キラキラでセクシーな作画も非常に良かったし、人間をグロ肉に変えるおぞましい能力の見せ方、狙撃戦の緊迫感、ともに素晴らしかった。
比較的眺めの原作をタイトにまとめ上げ、見せ場を複数用意して楽しませてくれるアニメ四部イズムがギュッと詰まった、良いエピソードでした。

普段はスーパークール高校生として、バカな同級生たちを引っ張る立場にある仗助。
そんな彼も高校一年生のバカガキでして、承太郎という頼れるおじさんが隣りにいることで、普段隠している未熟さや弱さが出てくるってのが今回のお話し。
承太郎が迷わずドブに足を突っ込んでいるのに、自分は靴を大事にしてソロリソロリと歩いてしまう(そして結局靴は落とす)愚かさを強調することで、ハードな状況で鍛え上げられる魂の地金が良く見える、対比の効いた回でしたね。

仗助の軽薄なところは緊迫したお話しの圧力を抜いてくれるし、そうやって油断したところにズドンとハードな描写が刺さるわけで、やはり演出の緩急というのはとても大事。
落差の魅力はお話全体にも及んでいて、泣き言と自慢まみれだった仗助に思わず苦笑すればこそ、承太郎に命を託され、失敗すらも計算に入れて見事な『覚悟』で仕留めるシーンが冴える。
人数を絞って展開する今回の話しは、JOJOの主役として必要な『覚悟』を仗助にぶっ込む、一種の修行回でもあるのでしょう。

シビアでハードな試練だけが魂を鍛えるわけで、画面に緊迫感が宿るかどうかは今回非常に大事です。
第4部になってから冴え渡っているホラー・スプラッタ演出が生きる農家のシーンも、位置関係をパノラマでしっかり見せた狙撃戦も、緩みのないいい仕上がりで期待に答えてくれました。
最初にネズミの煮凝りを見せることで、黒塗りで規制しても『人間の煮凝り』のえぐさが想像できてしまうところとか、良く計算されていた。
冷蔵庫の『見えてはいけないものが見えてしまう』サスペンスの作り方、無敵の"スタープラチナ・ザ・ワールド"すら手玉に取る「虫食い」のクレバーな戦い。
ドラマで見せたいものに映像がしっかり応える、良いマリアージュが生まれていました。


今回は仗助に与えられた試練であると同時に、これまでそこまで目立たなかった承太郎が輝く回でもあります。
前作主人公というのは経験値と人気をたっぷり溜め込んでいるだけあって、ともすれば続編を壊しかねない危険物なのですが、第4部の承太郎は仗助たちの当事者性を奪わず、物語の種をしっかり撒き、支えるべきところはしっかり支える、かなり理想的な動きをしています。
見せ場を譲る物語的運動に、『俺は治せるけどお前は治せない。だから俺が囮でお前が狙撃手だ』というロジックがちゃんとくっついてくるのが、ジョジョの凄い所だなぁと思います。
今回の戦いは「虫食い」の能力と野生動物ゆえの油断の無さが咬み合って、すさまじい強敵として立ちふさがり続けたのは、緊張感あってよかったな。

そういう『わきまえた』動きをしている承太郎ですが、何しろ今回はアクターが少ないので、思う存分いい気になってOK。
今回は動物学者というオリジンをしっかり活かし、ネズミの生態を知り尽くして追い込むクレバーな戦い方、死闘で積み上げた『覚悟』の違いを印象づけつつ、最後の見せ場はしっかり仗助に譲る、見事な動きをしていました。
第3部で見せた高校生らしい激情が鳴りを潜め、あくまでクレバーに冷静に、培った職業知識も活かしつつ確実に詰めていくスタイルには、強い存在感があった。

仗助は行動に見返りを求め、どれだけ自分がすごいか口で言ってしまう浅はかさがあるわけですが、すでにDIOとの死闘をくぐり抜け、褒めるのほめられるのじゃあない領域で戦ってきた承太郎にとって、必要なのは結果です。
『この世に生きていてはいけない動物』であるネズミを駆除することこそこの戦いの目的であり、靴が汚れるとか腕がグロ肉になるとか、そういうことは全く関係ない。
そこら辺の『覚悟』を見せることで、仗助の未熟さ(つまり成長できる余地)をしっかり際立たせていたのも、二人芝居になる今回必要な動きを徹底的に完遂していて、上手いなぁと思います。

「虫食い」の矢が仗助を捉えた時、承太郎は時を止めて矢をえぐり飛ばし、「虫食い」を殺すのではなく仗助を守る。
承太郎の活躍が『倒す』だけではなく『守る』方面にもちゃんと発揮されているのが、ジョジョがヒーローを描く根本的な姿勢が見えて、僕は好きです。
「虫食い」が『生きてはいけない動物』なのも、彼が無差別な人殺しだからなわけで、非日常の力を使いこなし、『守る』ために『倒す』活き方を見失わないことが大事ってのは、今回の戦いの中でも徹底されてんのね。
そういう意味で、"クレイジー・ダイヤモンド"の癒やしの力が主人公にあるのはやっぱ面白いなぁ。

今回の戦いは『まぁヒーラーいるし、攻撃力上げてもなんとかなるっしょ』でエグい攻撃させすぎだがな!
いやー、マジ「虫食い」強い。
ヘタすると、承太郎最大のピンチだったんじゃなかろうか。


と言うわけで、高校生・東方仗助が飲み込むにはちとハードなディシプリンでした。
仗助が未熟な動きをしてくれるおかげで、『覚悟』満点な承太郎の凄みが目立つし、その『覚悟』を受けとって仗助も成長できる。
見せ場と楽しみどころがたっぷり詰まった楽しい話であると同時に、今後激しさを増す戦いに向けて主人公を鍛えるエピソードとしても機能していて、非常に良かったです。

来週は露伴ちゃん早速の再登場であり、登場話でみせたクソサイコっぷりが少しは薄れる……いやどうだろうか、なお話し。
露伴ちゃんがやりたい放題し放題しつつ、ちょっとずつ人間の暖かさを知っていく構成物語としても第4部は面白いので、来週非常に楽しみです。
しかしこの話に流れ着くと、ラスボスの影が見えてグッと話が動き出すからなぁ……そういう意味でも楽しみ。