イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

美男高校地球防衛部Love! Love!:第3話『愛するブラザーズ』感想

男の裸を大量に映しつつ結構手堅くヒーローストーリーもやってしまうアニメ、今週はお湯まみれのバンド・オブ・ブラザース。
強羅あんちゃんの愛を受けてまっすぐに成長した有基くんが、どんだけヒロイックに育ったか見せる回でした。
ゆるーっとした防衛部らしさは維持したまま、兄弟愛に奉仕の心というヒーロー物語に大事な部分はちゃんと描いていて、なかなか骨のあるお話でした。
別府兄弟が案外余裕ない所見れたり、ゆるーっと時間を使っていく展開も良いけど、今回のようにある程度の歯ごたえがあったほうが個人的に楽しいな、やっぱ。

今回は兄弟愛がメインのお話なんですが、兄弟の間で愛情が閉じずに、しっかり外側に出て行ったのがヒーロー物語として非常に良かったです。
あんちゃんの愛情の象徴として『笠地蔵ごっこ』はあるんだけど、有基くんはそれを読み聞かせ会という形で外部に還元しようとして、その情熱に防衛部の面々もウダウダ言いつつ感化されていく。
怪人の乱入で『読み聞かせ会』が『ヒーローショー』になってしまうのも、今まさに変身ヒーローやってる有基くんがどういう成長をしたのか、良く見える展開で素晴らしい。

愛の受け止め方と使い方はヒーローを題材にする上ですごく大事なところなので、あんちゃんの無償の愛を茶化さず描き、それを受け止める有基くんのピュアさもまっすぐ表現していたのは、ヒーローフィクションとして防衛部がどれくらい真面目なのか確認できてありがたかったです。
いっつもダラダラダラダラ、下らないゆるふわ感で楽しませてくれるアニメなんだけど、『そこを茶化してしまうと、ヒーロー物語が崩壊する』ってポイントではしっかり姿勢を正し、尊いもんは尊いとして描いてくれるのは、良いメリハリの付け方です。
高校生の細腕一つで弟を育てきり、愛のぬくもりをちゃんと伝えてくれたあんちゃん。
その尊さを誤解せずに受け止めきり、自分が愛を守るエネルギーに変えている有基くん。
どんだけ男の裸が大量に映っても、くだらん寝言をダラダラ吐いていても、箱根兄弟の絆を大真面目に描けていることで、ヒーロー物語としての背骨が折れずに、真面目なコメディとしてちゃんとやれていることは、凄く強いことだと思いました。


僕はこの話の大上段に構えないところというか、男子高校生の等身大、目の前三十センチの価値観を大事にしつつ進んでいくところが、結構好きです。
風呂に入りながらのダラダラトークもその一環だし、スーパーパワーを手に入れてもやることはつまんない雑用で、それに対するダルいリアクションも余さず書く。
正義と愛に燃え上がる使命感に突き動かされるのではなく、金やモテやダルさに足を取られつつも、やるべき時にはちゃんとやるっていうメリハリが効いているのもあって、ヒーロー活動に生々しさが出る良い見せ方だと思います。
今回で言えば、うぜーだりー言いつつも、有基の根源である『笠地蔵ごっこ』はバカにせず、その熱さを受け取って行動に移る誠実さを見せてくれたところとかね。

今回は『笠地蔵ごっこ』という存在感のあるエピソードを生み出したことで、有基くんがヒーロー活動に強いモチベーションを持っている理由が強く実感できました。
やっぱこういう個別のエピソードをしっかり仕上げると、お話の手触りはグッと身近になるやね。
その熱意がダルそうな仲間にちゃんと届いて、気付けば読み聞かせ会をやる方向に舵を切っている展開も、尊さが無駄にならない真心があってグッド。

自己顕示欲の塊のような敵役も、自分ではなく他人をまず第一に見る防衛部の『愛』を巧く際立たせていて、なかなか良かったです。
読み聞かせるはずなのに『まず自分』のエゴイズムで動いている敵を糾弾することで、無私の愛で有基くんを育てたあんちゃん、それを受けて他者を大事にする『ヒーロー』に育った有基くんの構図がハッキリ見えたのは、日常パートを巧くまとめるいい流れだった。
彼の嫉妬はあくまで平行線で描写されて、それがぶつかってくるのはクライマックスのステージだけってのは、なかなか面白い描き方でしたね。
日常パートでも直接ぶつかってくると、この作品の魅力の一つである『防衛部五人のダラダラとした掛け合い」が崩れるわけで、外野が勝手に嫉妬を燃やし、別府兄弟が火に油を注いで事件が起きるって構図なのは、魅力を活かすテクニックなんだろうな。

別府兄弟が防衛部と直接ぶつかることなく、勝手にライバル意識を燃やしているのも、その延長線上なのだろう。
今回は箱根兄弟の絆をしっかり描くエピソードなので、別府兄弟と交流して絆を作る話をやっていては、軸がブレるって判断かな。
別府兄弟は1クールを支える大事なキャラなので、主役たちとは早い所濃い目の絡みを見せて欲しいもんですね。
結局キャラクターが人間としてぶつかり合うことでしか、その価値観や人格は見えてこないので、クライマックスを生み出す舞台装置としてだけではなく、別府月彦・別府日彦個人として防衛部の面々と言葉をかわすシーンが、早く見たいなぁ。
とは言うものの、急に兄弟二人でイチャイチャしてアイドルソング歌ったり、存在感は充分あるんですけどね……良いキャラだからもっと見たいんだよ俺は!


というわけで、どっしりと腰を落として『普通にいい話』をやり切るエピソードでした。
直球が投げられなければ変化球でストライクは取れないわけで、ヒーローに必要な『愛』がどこから生まれどう育つのか、箱根兄弟に託してしっかり描いたこのお話が三話で来たのは、このアニメの腰の強さを巧く証明してくれたと思います。
パロディとはいえ『ヒーロー』を扱う以上、本当に大事なものを茶化さない分別があるってのは非常に重要だ。

『ヒーロー』ではないあんちゃんがあくまでアシストに徹していて、とにかく有基くんがビシっと決める足場作りを頑張ってくれていたのも、非常に良かったな。
ゆるくて良い部分と、ないがしろにせず直球で攻めるべき部分をしっかり見据え、メリハリの効いたセクシー・ヒーロー・コメディを展開してくれる信頼感は、やっぱありがたいですね。
来週以降の防衛部の活躍に期待が持てる、良く仕上がったエピソードでした。