イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

チア男子:第5話『LET’S GO BREAKERS!』感想

全力でぶつかり合い支え合う王道青春ドラマ、第一部完ッ! て感じの五話目。
学園祭ステージという目標を定め、練習して練習して、鬱屈をタメてタメて、それを主人公が突破して本番につなぐ。
『変なひねりを入れず、一番効く展開を素直にやる』というこのアニメの強さが全面に出た、七人の総決算でした。
作画力を全てチアシーンに突っ込んだ結果、これまでの努力がしっかり映像になっており、満足感のある〆でした。

前半は前回に引き続きタメる回なんですが、不安や焦燥が他人に向かず、全部自分に行くのはこのアニメらしいなと思います。
出てくる連中に根性曲がった奴がいないというか、ストレスを他人にたたきつける奴が存在しないので、みんな必死に頑張る。
頑張るんだけど結果はなかなか出ず、それがさらなる自分への焦りに変わって……と状況が煮詰まってくることが、前回カズが願っていた『全員の心のしこりをぶっ壊す』ことに繋がっていく。
オールドスクールなスポ根展開なんだけど、ストレス・コントロールに関してはわりと新し目なところがこのアニメらしいなぁと感じました。

グッツグッツと心が煮詰まっていく中で、皆自分への不安と他者への憧憬を露わにしていく。
この家庭で、普段は余裕でスカしてるイチローの泥臭い部分と、そこを支えつつ重圧を感じていたゲンがガツッとぶつかり合うシーンがあったのは、とても良かったと思います。
二キャラセットで加入させておいて、実は二人ともそれなりに複雑でややこしい内面を持っていると分かってくるのは、導入と展開がスムーズに繋がる良い見せ方。
万能選手なイチローにゲンが劣等感を抱いているってのは前回明らかになったけど、それを直接本人にぶつけているのが、お互いの心の壁が『ぶっ壊れ』て来た感じが強く出てました。

圧が最大まで高まってさぁ爆発して解決だ! という段階になって、これまで状況を主導してきたカズではなく、むしろ出来ない側だったハルが起爆剤になるのは、主人公の面目躍如という感じでとても気持ちが良かった。
このお話しはチアーの物語なので、モチベーターとしてグイグイ集団を引っ張れる奴より、花型スタートして難しい技が出来るやつより、一番心を鼓舞できるやつが主役を張るわけです。
塞ぎがちになった自分たちの気持ちを盛り上げて、明日へ道を塞ぐ壁を『ぶっ壊す』ことも出来ないチアーリーダーに観客や選手が勇気づけられるわけもない。
第1話でも暗示されていた、ポジティブな感情を恥ずかしがらず強く出して、人の気持ちを揺さぶるハルの才能が、閉塞した状況をぶち破る瞬間は、非常に良かった。
クサくて恥ずかしいハルの叫び声を、一瞬あっけにとられつつもBreakersの仲間として受け取り、チャントを大きくしていく受け止め方も、気持ちの良い素直さでした。


心理的な限界を超えたので身体的な限界も超えれるという、心身一元論的展開こそがスポ根の花。
コンプレックスも劣等感も全て出し切り、高所恐怖症を乗り越えてスタンツを成功させた後は、その勝ちムードを受けて学園祭の晴れ舞台が待っています。
ユニフォームに身を包み、髪の色も普段と変えた特別感が期待を煽っていて、良い盛り上げ方でした。

タメにタメ勝ちを約束された舞台ですが、Breakersの見ている『特別な世界』を表現するべく塗りも動きの密度も通常と大きく変え、強いインパクトが有りました。
作画力を勝負どころできっちり使ってくるのは、絵のカタルシスが強くあっていいですね。
曲と動き、表情とフォーメーションがシンクロしたチアーの気持ちよさを巧くアニメにしていて、これまで練習しまくってたBreakersの晴れ舞台として、努力が報われた感じを強く与える良いシーンだったと思います。

あの舞台は一つの結末であると同時に通過点でもあり、演技を完璧に仕上げさせない細かさもありました。
練習で指摘されているとおり、群舞パートででミゾがワンテンポ遅れてんだよね……細かいなぁほんと。
今後メンバーに加わる連中が全員ステージを見ているところといい、積み上げてきた描写をまとめ上げる気持ちよさと同時に、先につなぐ周到さも込められてて、第5話の総決算として文句なしのステージでした。
これを足場に、Breakersを見る学内の目も大きく変わって第2部開始ッ! て感じですかね。


鬱屈を見事力に変えて、一つの成果を成し遂げる良い最終回でした。
普段は地味なアニメですが、決めるとこきっちり決めることでカタルシスが強くあるのは、メリハリ聞いててとても良い。
気持ちの良い奴らの努力がちゃんと報われたのも含めて、達成感のある爽やかなエピソードだったと思います。

そんな成功を受けて第二部開始……なんだけど、来週は総集編。
今期アニメは総集編やリスケジュールが多いけど、オリンピック合わせなのか、はたまた何らかの問題が起きてんのか、どういうことなんだろうなぁ。
それは横において、王道を迷わず歩くことで仕上げた盛り上がり、二部でも活かしてほしいものですね。