イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

クロムクロ:第18話『湯煙に消える』感想

パイロットだって飯も食えば風呂にも入る生活感満載ロボアニメ、今週はご褒美温泉回。
監督自らコンテを切る気合の入れようで展開されるのは、おニューのジャケットにスパイスから作ったカレーに高校生のくだらんダベリという、クロムクロらしい地に足ついた展開でした。
いや、たっぷりやった後に温泉もちゃんと入るし、女体は柔らかそうだったし十分サービスなんだけどね……ここら辺の焦らされてるんだけど満足しちゃう感じと、その後の不意打ち全裸拉致まで含めて、面白い回だったね。

今回もロボには乗らないタメ回でして、同時に剣之介の小さな変化を見せる発表の場でもあります。
剣之介がジリジリと『平和な現代』に慣れてきている描写はしっかり積み上がっていて、侍がアマゾンで蒸気鍋を買っても、温泉でクラスメートと談笑してても、視聴者はもう不思議には思わない。
給料という社会的に認められた証を手に入れたことも、カレーという異世界の料理を自分のものにしたことも、姫のことで悩んでいた様子を捨てて呵々大笑していたことも、『ああ、剣ちゃん良かったね』と思える。
今回の温泉大宴会で見せられのは、剣之介が『平和な現代』に馴染んだ姿であると同時に、俺達視聴者が剣之助に馴染んだ姿でもあった気がしますね。

心理的距離感を身近な『衣食住』で見せてくるのはクロムクロイズムでして、自分で選んだ服を着て、自分が気に入ったカレーを作り、みんなでコテージに来て風呂に入る様子は、なんとも言えず体温のある描写でした。
特にカレーは第四話と第十一話に引き続き、このアニメ最大のフェティッシュとも言える仕事をしっかり果たしていました。
戸惑いつつも歩み寄って口に入れ、混乱が収まり一つ別の段階に関係が進んだ証として握り飯の中に入れられ、ついに自分なりのアレンジを加えつつ由希奈との共同作業で仕上げるまでに、剣之介はカレーに馴染んだわけです。
口に入れるものを使っている分、セリフで説明するより判りやすいのは、今までどおりの強みですね。

このようなフェティッシュとの距離感だけではなく、由希奈との自然で身近な間合いの近さも凄い勢いでラッシュをかけてきました。
給料は一緒にもらうし、金の使いみちは二人で考えるし、料理は共同でつくり上げるし、風呂もおんなじところに入る。
赤城もソフィーも完全に周回遅れ、追いつく隙なしの絆の強さが濃厚に描写されて、二人共好きなオッサンとしては、ニヤニヤニヤニヤしながら見てました。
そういう濃厚な絆と同時に、常に剣之介を目で追い、『なんで来たの?』と聞かれたら応える代わりに剣之介がやってくるソフィーの可憐な慕情も描いているところが、性格悪い演出で素晴らしかったですね。


ダラッダラと本筋に関係ない場面を描きつつも、同時にその下らない平和こそが『戦場』へ足を運ぶ理由である以上、楽しく見せるのは大事です。
カルロスが進んで道化役を担当してくれ、テンポの良い罵倒と滑り続ける高高校生の自意識が肴になった結果、生活感と面白みのある良いシーンに仕上がっていました。
カルロスはここ最近、キモい自意識の高さで一気にキャラ立てたなぁ……スケベな所が良いんだけども、あの『言えなかったサヨナラ』は悲劇への地ならしな気もして、少々不安。
非人間的な要素が強調されていた茅原も、まるで普通の人間みたいに振舞っていて、パイロット=『戦場』も高校生=『平和な現代』も一つに交じり合う、暖かい旅行になってました。

まぁそういう瞬間も、由希奈が道に迷って全裸でキャトられたラスト五分で、一気にひっくり返ったんですけどね。
メシと風呂で楽しい気持ちにさせておいて、よくよく考えたらサブタイトルそのままな展開をしっかりサプライズとして機能させるのは、パワーとテクニックが融合していてとても良かったです。
しゃあないんや……男の子はみんな肌色に弱いんや……。

さておき、姫じゃない奴が地上に残ったことで、剣之介が膝つき合わせて真剣10代しゃべり場せざるを得ない状況が生まれました。
そこに合わせるようにムエッタの過去回想で『父や母がいて、故郷がある存在』であると見せてきたのは、その結果がどうなるとしても対話が行なわれることの前振りでしょう。
ムエッタが地上に残り、由希奈が宇宙に上ることで、これまで伏せられてきたエフィドルグの事情が相互に公開される状況になったわけね。
キャラクターの馴染み加減もそうだけど、進展の調整上手いなぁ。

今回強調されていたように、由希奈がそばにいると剣之介はあまりに安定してしまって話が幸せな方向にしか転ばないので、物理的に切り離したのは良いチョイスだと思います。
ナノマシンによる精神寄生体だと思ってたエフィドルグですが、ムエッタの回想だと自分の体をずっと使用しているし、血縁もあるみたいなのよね……ナノマシンもムエッタの母星由来っぽいし、謎が謎を呼ぶ感じだ。
雪姫への執着だけではなく、ここら辺の謎も由希奈抜きで話し合うことで進展すんのかね。

由希奈は剣ちゃんのお嫁さん候補であるだけではなく、クロムクロのサブパイロットでもあります。
ムエッタが地上に残ったのは、『由希奈抜きでエフィドルグ襲来→クロムクロ起動不能→ムエッタサブパイロット』という流れをやるためかなぁとも思うんですが……整備の人の首も折っているし、ここにたどり着くにはムエッタの地球への好感度が薄いか。
定型化した『アツいロボアニメシチュエーション』から半歩はみ出して展開し、しかもこちらを驚かせ楽しませてくれるアニメなので、この入れ替わりをどう使いどう魅せてくるのか、非常に楽しみです。


ゆったりと剣之介たちが手に入れた/守るべき日常の暖かさを描くエピソードのラストに、対話と謎解きを促進するだろう入れ替わりを全裸で行い、話を進めつつ次回への引きも作るパワフルな展開でした。
いろいろ悩んでいた剣之介が、金や食事や休養という形で報いられ、幸せを感じている姿は見ていてありがたかったし、ゆるい笑いからムエッタとの再会、由希奈拉致へと繋ぐ緩急も非常に良かった。
肌色も見れたしな! PAの女体描写、あんま油っこくないのにエロくて俺好き!!

味方が敵の居城に、敵にして過去の因縁を背負う相手が地上にそれぞれ動いたことで、謎や感情が大きく動きそうな状況。
今回確認した平凡でくだらなくて、だからこそ掛け替えのないものが激化するだろう戦いの中でどう扱われるのかも含め、次回が非常に楽しみになるお話でした。
やっぱクロムクロのロボ出ない回はおもしれぇなぁ……ロボ出る回もおもしれえんだから、マジ無敵だな。