イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アクティヴレイド -機動強襲室第八係- 2nd:第5話『利するは誰か』感想

人間性を限界まですり減らした警察官と人間性をすり減らし切った犯罪者が対峙するメタル治安アクション、今週は地下アイドル地獄変
軽犯罪を繰り返す狡猾な犯罪集団を相手に、ダイハチ……っていうか瀬名くんが過酷な労働を強いられ、一線を越えた過剰な正義を叩きつける話でした。
変則型のテロリズムに利用されてたアイドルが、タフさを身に付けて利用し返す話でもあったかな。
でも最大の仕事は、目の前の事件と関係者を利用して、お話のこれからを透かし彫りに仕上げることだった気がする。

今回のお話しは現象と象徴が、同時に進行するお話でした。
ダイハチが向かい合わなければいけない目の前の事件を追いかけることで、第2シーズン全体の構図を暗示したりリンクさせたり、視聴者に今後の展開を予感させる作りになってましたね。
結構唐突に都知事と黒騎さんの因縁が語られ、冷静でエグい制裁を悪に対してぶっ込む瀬名くんと、ヤンキーにサミングしてた若き都知事が重なるのは、まぁそういうことでしょう。

現象としては同時多発軽犯罪によってダイハチを過剰稼働に追い込み、警察の権威を攻撃する犯罪と戦っていました。
いかにもな学生運動こじらせ系都市テロリストが相手なんだけど、やってる事自体は軽犯罪の連発だから刑事罰が軽いとか、リクルートの入り口として強まりきった地下アイドルを使うとか、味付けはこのアニメ独自のものでした。
こういう『地味だけどありそうだし、やられると厄介な未来犯罪』をしっかり作れているのは、治安フィクションとしての強みよね。

ダイハチの手の届く範囲が犯人に完全に見切られた結果、対応は後手後手になり、法整備の隙間をぬって瀬名くんに過剰な圧がかかる形に。
司令塔が内部事情に詳しすぎたのは、現場を見張る黒い鳥(≒バード)からの情報提供なのかなぁ。
事件に利用されただけのアイドルを白い鳥に象徴させて、事件が終わった後人脈を利用するタフさを手に入れた時には灰色の鳥になっているのは、なかなか面白い象徴だった。
このアニメクッションかけたメタファーはあんま使わんので、『鳥』で状況を暗示していく今回の演出は、エッジが立っててよかったな。

都市型テロルを志しつつもやってることは軽犯罪な司令塔も、アイドル目指してエセサバト
アイドルちゃんも、どっちも微妙に情けないというか、アクティヴレイド的というか。
そういうへなちょこ人間でも実害は出るし、利用されたとしても自己実現を目指して立ち上がるのだ! というタフな描き方も引っくるめて、王道を踏まえつつちょっと外すスタイルがイキイキしてた印象。
ステージ演出として裸体の男たちを踏みにじり、フェイク・ハラキリぶちかます地下アイドルの極限っぷりは笑って良いのか嘆けば良いのか、いい具合にトホホだったね。
取り締まる側のダイハチ……つうか瀬名くんも、極限状態まで行使され、自分の一番大事な『ゴミ』を犯罪に利用され、警告無しで射撃するところまで追い込まれてたしなぁ……。


そんなトホホな人たちを前景として、話の奥に投影されてるのが今後の展望なわけでして。
黒騎さんの回想シーンは露骨に都知事にマーカーを付けて、『こいつ中心に今後回りますんで! 今回の司令塔と瀬名くんみたいな、歪んだ正義感を暴走させたやつですんで!』というメッセージを届けるシーンだったと思う。
迷いなく折るしサミング行くからなぁ……都知事という立場と、ウェアという超常の力を手に入れてどう暴走するかは、今後気になるところです。

セカンド・シーズンで結構勝手できるようになったとはいえ、ダイハチが横紙破りな組織であるのには代わりがなく、都知事のバックアップがないと今回みたいに窮屈な立ち回りを余儀なくされます。
もし都知事が治安の敵対者だとすると、彼の政治力に多くを借りているダイハチは一気に苦しい状況に追い込まれ、ギャグで住んでた今回の比ではないピンチになりそう。
そういう予想を視聴者の中に導きつつ、テロリストに育成されたアイドルと、都知事に育てられた黒騎さんを重ねあわせて、二期でブーストかかってる黒騎さんの主人公力をさらに加速させる話だった気がする。
クソみたいなサバト路線に振り回されつつ、テロリストが用意したファン基盤を根こそぎ奪い去ったアイドルちゃんのタフさは、今後のダイハチと黒騎さんに必要なものとしても描かれていたのかな。

都知事と関係が深いのは黒騎さんだけではなく、ボスも政治的同志と恋愛関係の入り混じった、ちょっと複雑な間柄です。
妹もバードに利用され、姉が好きになった人もなんだか危うくて、ほんと男運のない姉妹だな……。
都知事が悪堕ちしてると決まったわけじゃないが、『黒い鳥』の見せ方含めて今回の話しが予言的なエピソーであるのは間違いなく、そこで意味深に語られた危うい過去を考えると……ボス、ご愁傷さまですって感じだな。


というわけで、トホホな未来世界のトホホな犯罪を超暴力で制圧しつつ、少女のタフさが一抹の救い……救い? になるお話でした。
地下サバトアイドルのゲンナリ感がマジで凄くて、『ヴァーチャルなパラ宿で小学生がやってると美談なのに、リアルな秋葉原で高校中退少女がやらされてると悲劇だな……』と思わざるを得なかった。
今回事件に覆い焼きで描かれた都知事とダイハチの関係性が、今度どういうつながり方をするかも含めて、色々楽しいエピソードだったと思います。
結構過剰に先を読んでしまった感じですが、さてはて当たるか外れるか。
なかなかいい速度で展開しているアクティヴレイド二期、今後も楽しみです。