イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

91Days:第6話『豚を殺しに』感想

狼は生きろ豚は死ね! 野望と激情が交錯するろくでなし達のドッグ・イート・ドッグ、今週は鮮烈なる秘策。
生き残りのために仇敵ファンゴと手を組むべく、一計を案じて彼を拉致するアヴィリオ。
窮地を救ったことでネロとの絆はさらに深まるが、演技の一貫としか思われていない復讐の意志が本物だとは、オルコもネロも気づいていないのだった……というお話。
前回激変した情勢をどう泳ぎきるのかというサスペンスの見せ方も楽しかったし、積み上げたラザニアギャグを最悪で最高に活かしたファンゴの見せ場も素晴らしかったですね。

と言うわけで、オルコの懐に食らいついて、窮地を脱するための生け贄に仕上げる今回。
ワルがワルを食い物にする悪の華の醍醐味が感じられる、見事な騙しと殺しの二重奏でしたが、詐術の構図が二重になっているのがこのアニメらしいところです。
今回の策の鍵は、オルコがアヴィリオの毒杯を飲むか否かにあるわけですが、その足場になっているのが復讐者の告白。
何しろ真実なので説得力があり、ネロを売ってオルコに河岸を変えるというアヴィリオのカードをすんなり受け取ってしまったのも、納得がいく詐術です。

アヴィリオが見せた詐術が鮮やかなのは、目の前のオルコを取るだけではなく、本命であるネロを詰めるための見事な伏線として機能しているところでしょう。
今回オルコを騙すための『嘘』として復讐者の仮面を被ったことで、ネロはアヴィリオの本性から遠ざけられ、窮地を脱する策を出した彼を『ファミリー』としてより重用するようになる。
ネロ・ファミリーの中で地位を上げれば上げるほどアヴィリオの目標達成は近づくし、ファンゴとの共同戦線も一応とはいえ形になり、合法的にヴィンセントの首を取れる立場に座ってますし、今回の詐術は一石三鳥くらいの見事な策だったわけです。
まぁアヴィリオが本当に求めているのは暖かかった家族を取り戻すことで、復讐でそれは満たされないし、そもそも向いてないってのは言いっこ無しだ。


元々食事が演出の一部に上手く組み込まれているアニメなんですが、今回は特に『口に入れるもの』を軸にお話が回っていました。
出だしからしてファンゴは『食事をとる所』に足を乗っけることで自身の異常性を強調するし、オチも散々積み上げてきたラザニア芸を巧く使った、最悪の料理でクレイジーさを強調していましたね。
そもそも『オッティモ(=ottimo:凄く美味しい)・オルコ』って名前の時点で、そこで『とっても美味しいオルコ』を食べる未来は確定していたのかもしれん……教養を悪趣味に使い倒していくスタイル、僕好きよ。
orcoは『悪魔』であると同時に、Pをつければporcoで『豚』だしな……自分自身がラザニアにされるのも、運命といえば運命。

元々オルコは『口に入れるもの』を無碍に扱うことで、その人格的荒廃を強調されているキャラではあったんですが、今回は酒瓶は割るは酒樽に穴は開けるわ、『命の水』を大事にしなさすぎ。
ロナルドとフラテの会食でも、オルコが口にしているものを二人は手すら付けずワインしか飲んでいないわけで、彼らの同盟がどれだけ不実な関係なのかは、食事に乗っけて描かれています。
アヴィリオとの『固めの杯』として口にしたのは毒杯だったし、徹底して食事に好かれていないキャラクターだったね、ドン・オルコ。
こういう目線で見ると、最悪の形で食事を侮辱したファンゴは、マフィアの仁義すら通用しない狂った男であり、今回作り上げた同盟もいつひっくり返るかしれたもんじゃない、危うい足場だってのがよく分かります。

一方ネロ・ファミリーは同じ食卓に付き、詐術の生け贄になったチキンも美味しく頂く毛並みの良さですが、その食卓に復讐者たちは同席しません。
アヴィリオが『ファミリー』になったのはあくまで復讐のためであり、オルコに対峙したロナルド&フラテのように、利害のために手は結んでいても同じ釜の飯を食うつもりがない、警戒心を込めた関係なわけです。
屋上で手紙の秘密を語り合うシーンのように、直接的にセリフで状況を整理するシーンを運営もすれば、食事に託して情景を描くことも出来る演出の幅の広さは、このアニメの強いところですね。
とりあえずのピンチを脱して落ち着いたところで、『四人目』の謎をキャラクターに確認させるのは、ミステリとしてフェアーな語り口よね。


そんなわけで、豚を生け贄にして蛇と手を結んだ、我らがネロ・ファミリー。
しかしこの小休止の先には親子や兄弟が殺しあう地獄が待っているし、パートナーのファンゴだって何をしでかすか、解ったもんじゃない。
そもそも盃を交わした親分は、いつか首を取るべき仇でもあるわけで、ロウレスの街を巡る情勢は、一切予断を許さないままです。

これまでも心地よく視聴者の『ああ、なんかオサレな復讐譚でしょ?』という余談を裏切り、僕らを楽しませてくれたこの話が、来週以降どこに行くのか。
非常に楽しみですね。
……鶏を贄に選んだのは、アヴィリオのなかの『臆病心』を殺して復讐の陰謀により深く踏み込んでいくっつー意味合いも、ちょっとあるかなぁ……。