イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第109話『サパンナからSOS』感想

少女が織りなす感情の三角形は一旦横においておいて、ヴァーチャルアイドル黙示録今回の舞台はサバンナ。
『アフリカ=未開』という旧世代のイメージを最前線に押し出した、エドワード・サイード辺りが見たら激烈な抗議論文を叩きつけそうなネタチョイスはさておき、話としては番外編的なゆるい感じ。
文明未達の処女地に降り立ったアイドルたちが教宣団よろしくプリパラを開拓する中、どっかで見た顔の現地民たちが小さな一歩を踏み出す話でした。
堂々とステージの魅力を信じて舞台を整え、しっかりプリパラの光を暗黒大陸に届けるらぁらたちを見ると『ああ……トップアイドルになっちまったんだなぁ……』って感じがした。
あと動物ネタが細かいのが良かった……ワオキツネザルとか。

今回のお話はアイドルサイドとパナナサイドに完全に別れつつ、ステージが持っている表現力や魅力が二つの岸に橋をかける構造。
長年経験を蓄えた三年目のらぁら達は、もはやアイドルの魅力を見つけていく挑戦者ではなく、アイドルの魅力を観客に伝える側に育ったわけで、ちょっと感慨深い展開でした。
まぁやってることは、動物と動物並み人間相手のアホな立ち回りだがな!
テーマ性をしっかり見据えつつ、ネタ方面の火力も忘れないプリパライズムが健全なのは、なかなか安心できる所。

あとサパンナの困窮に一番最初に共感し、一番深く寄り添っていたのが主人公・らぁらなのも、大事なところをしっかり抑えた描写で非常に良かったです。
たとえひびきの人格を変え得なかったとしても、彼女の幼さとそれ故の純粋な理想は大事なことだし、そういう子がお話の真ん中にいることで、色々カオスな要素を詰め込みつつお話の形が整えられるわけで。
らぁらが優しいやつであり続けることは、それへのカウンターとしてらぁらの世界に踏み込めない人がいること含めて、やっぱプリパラにとっては大事だ。

とは言うものの、アフリカ暗黒大陸そのまんまな描写や、特にシステム共の『人間の形をしているが、人間未満』な描写のヤバさは、あんまり笑えない方向のエッジの効き方だった。
性差別関係においてはあそこまでナイーブな描写を重ねて笑いを作ってるのに、地域・人種差別に関しては際どい所踏み込むなぁと思ったが、まぁステレオタイプな海外描写で押し込むのはプラジルあたりからずっとそうで、今に始まったことではなかった……セレ4とかプラジルとか。
笑いを劣化せずに届けるために、わかりやすさ重点で取り回した感じか、もしくは『白いのも黒いのも黄色いのも、みーんなクソみたいなステロイメージの内側に閉じ込められてるんだよ!!』という過激な暴力性を秘めた描写か、はたまた考え過ぎか。


さておき、アイドルサイドで目立っていたのは、出番が無い間に姫力を高めたふわり。
周りの連中が全員立つ中、超当然の顔で一つしかない椅子に座り、とにかく『他者に愛される
』描写が積み上がる辺り、彼女のキャラクター性へのプロテクトを強く感じます。
暴走する動物の前に立つシーンは、例えばドロシーとかなら容赦なく轢き殺されて一笑生み出してるところだけど、綺麗に躾けてるもんな。
美少女だろうが強キャラだろうが容赦なく汚すことでキャラへの敷居を下げ、身近さを生み出しているこのアニメで、暴力や失敗から守られていることが恵まれているとは、一概に言えなかったりするけど。

一旦プリパリに引き上げてから間が空いて、今後トリコロールとしてクローズアップされるふわりのキャラを思い出させるってのが、今回の話しの大きな目的の一つだったと思います。
今回強調されてた彼女のキャラクターは『周りが何でもやってくれるくらいの、愛されるプリンセス』だったと思うのだけども、同時に彼女はパルプスの野生児でもあって、そこら辺を動物との親和性で見せてた感じか。

そこがアイドルとしての緑風ふわりの強みであり、他人を拒絶するひびきの懐にも、スルッと入り込んでしまう一種のズルさも描かれてました。
女の弱さ(という強さ)を前面に押し出しつつも、まほちゃんとのアレコレで鍛えられた芯の強さも感じられる、なかなか良い立ち回りだったと思います。
個人的には裸足の野生児ふわりも好きなので、ガンッガン野良仕事してくれても良かったが、そこら辺はオモシロ愉快芸人軍団が担当する回だったのだろう、シオンとか。
今回強調された愛され&清楚な姫アイドル・緑風ふわりをどう活かしていくかは、今後の展開を見ないとわかんない所ですな。


そんなアイドルたちの努力を信じて、心が離れた親友とのリスタート物語を頑張ったのがパナナちゃん。
引っ込み思案な彼女がSOSを届け、アイドルたちの努力に発奮し、新しい絆を作ってアイドルの輝きを広げていく。
オーソドックスながら素直な友情と成長お話をしっかりやっていて、爽やかに楽しいストーリーでした。

アイドルに憧れつつアイドルではないパナナがエピソードの起因になることで、らぁら達トップアイドルに何が出来て、彼女たちがステージに上ることで何が生まれるのか、クリアに見えたのはとても良いと思う。
パナナのケアはわりと投げっぱというか、『作業する背中を見て『アイドルの凄み』を理解れッ!!』っていう昭和口下手親父スタイルだったが、パナナが勇気と賢さのある子供で助かった。
まぁ小さな勇気を後押しして、『みんなトモダチ』の理想をファンにも届けるって形を作るためには、箸の上げ下げから主役たちが面倒見るより、アイドルの勇姿を見ることでパナナが頑張る今回の形式が良かったと思うけどね。

パナナの相手役は雨宮くん……に似た女の子を、粕谷雄太さんが頑張って演じていました。
わりとストロングスタイルの少女漫画友情型ツンデレであり、パナなの背負ったオーソドックスな物語をしっかり受け止める良いヒロインでしたが、アーキタイプが気持ち悪すぎた結果、惚れたみれぃにドン引きされてたのは可哀想。
つーか、雨宮のキモ行為は筒抜けだったのか……そらまぁキモいわな。

ただ友情が修復されておしまい、ではなく、パナナとアミヤ以外の女の子もプリパラに引きこまれ、パラ宿以外の場所でも『みんなトモダチ、みんなアイドル』の理想が育っていくという終わり方は、発展性があって凄く好きです。
実はキャラの絡みとしてはアイドル組とパナナ組ってかなり距離があるんだけど、ステージを準備しアクトを見せることで、どれだけ距離があっても想いは伝わって、未来が変わる。
メッセージを届けるアイドル側も、受け取る観客側にも爽やかな喜びと可能性を感じられて、凄く良かったな。


そんなわけで、お盆休みの箸休め的なエピソードでした……が、勘所をきっちり抑えたいいお話だったと思います。
約二年間の物語を背負って、天井を見上げる側から、天井から恩恵を授ける側に変わった主役たちの立場が、良く分かるエピソードだったなぁ。
それを受け取るパナナ達の物語も素直に爽やかで、ネタを織り交ぜつつ骨格が太い、プリパラらしい話だった。
あと三期のふわりが『女の弱さ』を全アイドル中最高効率で利用できる、マネキン●な女であることが判明したことは、個人的な好みにバッチで嬉しい話。(N◎VAラー以外には通じにくい例え)

本筋がなかなか進まない夏休みシフトは継続で、来週は水着回!
予告の段階で懐かしい顔が続々出てきて、ワイワイ賑やかな回になりそうですが、何しろプリパラ前回の水着回は、友情の重たさをこれでもかと描写した第8話ですからね……。
どういう捌き方をして何を見せてくれるのか、期待が高まりますな。