イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

美男高校地球防衛部Love! Love!:第7話『愛と奇跡のクリスマス』感想

ゆるゆる進みつつも一番大事な星を探し求めるスターシーカー・ボーイズテイル、今週は聖夜の奇跡。
唐突なクリパが煙ちゃんから発令され、これまで直接接触の少なかった別府兄弟やら、孤独な悲しみを背負った赤鼻のトナカイやら、色んな奴らがぬくもりに引き寄せられる話でした。
別府兄弟が思いの外非リアで寂しがりボーイズだと解ったり、愛の戦士として『殴る』以上の解決法を見つけたり、特別な日に相応しいしっかりした骨組みのエピソード。
『知らないやつだから』『敵だから』『怪物だから』という理由で門戸を閉じず、自分たちから歩み寄っていく箱根兄弟のあまりの天使っぷりに、俺も見ていて幸せな気持ちになったよ……。

今回のお話は別府兄弟を防衛部に寄せることと、普段とは違った開放で敵・味方の対立構造を解体すること、2つの目的があるお話です。
この中心になっているのが煙ちゃん提案のクリパでして、普段はクールで現実的な彼も、遠く離れた仲間を思うナイーブさを隠しながら、『特別な日』を暖かく演出する。
暖色系の灯りが朗らかな雰囲気を作る中で、やってくるのは『敵』ではなく『仲間になれるかもしれない連中』であり、行なわれるのは『戦い』ではなく『パーティー』。
殴り合いもしないし、必殺技も打たない『特別』な展開の結果、これまで接触がほぼなかった別府兄弟と防衛部は一応顔見知り以上の関係になり、幼い妬み嫉みばかりが目立っていた兄弟は強羅あんちゃんの温もりを分けてもらって幸せになり、トナカイ怪人とは暴力一切なしの特例展開で別れるという、色んな『普段のルール』を破るお話になっていました。

別府兄弟が非常に幼い人格の持ち主だということはこれまでも描写されていましたが、強羅あんちゃんの誘いに乗っかって、『銭湯』という防衛部の領域に足を踏み入れた今回、その内面がより細かく見えてきました。
『サンタなんていない、クリスマスに奇跡なんて起きない』という回想セリフは、それを期待すればこそ生まれる防衛策であり、温もりを夢見つつ手に入らないナイーブさは、背だけでかくなっても一切変わっていないのでしょう。
そんな彼らが唯一温もりを信じられるのが強羅あんちゃんであり、とにかくあんちゃんが好きすぎるオーラ剥き出しで、プレゼント交換を待ち構えていました。
一体過去にどういう出会いがあったかはさておき、彼らにとってあんちゃんが『ヒーロー』であったこと、そして今も『ヒーロー』を信じる気持ちがあることは間違いがないようです。
なんだかんだ言いつつ、ちゃんと交換用のプレゼントという『真心』は持ってきているしな……手編みで。

あんちゃん個人を狙っている別府兄弟は防衛部には距離を撮り続けますが、有基を筆頭に防衛部の面々は彼らを拒絶することなく、しおりを配り、同じ食事を勧め、仲間として受け入れようとします。
不思議なビームや殴る蹴るを手段としては使いつつ、リアルな男子高校生らしいダルさに溢れつつ、なんだかんだ防衛部が『ヒーロー』で在り続けるのは、名も無き花を踏みつけられない愛と優しさがあるから。
『敵』であるはずの別府兄弟の冷たい態度を訝しみつつも、何度も歩み寄ろうと努力する防衛部の素の表情こそ、僕には凄く大事なものだと思えました。

あんちゃんの誘いを受けて、ダダチャが用意していたパーティーを拒絶して別府兄弟がやってきたのは、さり気ないですがかなり大きな描写だったように思います。
三角巾が良く似合うダダチャは『悪しき母親』として、何も知らないおバカな別府兄弟を操り、支配しています。
その象徴である食卓を、あんちゃん恋しさの欲の皮だとはいえ別府兄弟が自分の意志で拒絶したことは、『母』の束縛を排除し『子供』から一歩踏み出す可能性が、別府兄弟に残っていることを示しています。
結局二人は手袋という温もりだけを貰って、暗くて冷たい場所に帰って行ってしまったわけですが、彼らがそこから出てきて、兄弟だけで繋いだ手を世界に向けて広げていく未来を想像することは、十分出来ました。
……『悪しき母親』としてのダダチャと、『良き父親』としての強羅あんちゃんの綱引きなんだな、別府兄弟をめぐる現状は。

つーか自分たちの作戦がどういう結果もたらすかもわからないし、その収束もオカン任せだし、バカでガキで可愛いあの連中は早く素直になって、愛に溢れた風呂場で魂を洗われちまえばいいんだよ!!
やっぱねー、他人を道具としてしか見れない偏狭さばっか強調されてたから、彼らが優しくて寂しいロンリーボーイだってはっきり解った今回は、彼らを好きになれる良いエピソードだった。
寂しがっている子供を助けることこそ『ヒーロー』の本懐だって爾郎先輩も言っているわけで、今後の防衛部の活躍に期待が高まります。


んで、そんな別府兄弟に巻き込まれた形のトナカイ怪人とは、一切暴力を介在せず、対話と融和によって事態を解決しました。
人を殴るより人と笑い合うほうが素晴らしいのは当然ですが、盛り上がりと手軽さからたいてい暴力で解決されてしまうヒーロー事情は、なかなかそれを許してくれません。
ひるがえって、必死に働いても報われず、誰も愛してくれない寂しさを殴り飛ばすのではなく、抱きしめることで救ってしまった今回の展開、イレギュラーですが『ヒーロー』として凄く価値の有ることをやったと思います。

『ヒーローは暴力以外に問題解決手段を持ち得ないのか』『殴って殺してハイおしまいで良いのか』という疑問は、それこそTVヒーロー黎明期からいくども語り直されている問題です。
ウルトラマンなら"故郷は地球""怪獣墓場"あたりでメインテーマになっているし、月光仮面も『憎むな、殺すな、赦しましょう』だし、アンパンマンも飯食わして解決する問題は自分の審決を分け与えつつ対応してたりします。(ここらへんを今シビアに、ノスタルジックに語り直したのが"コンクリート・レボルティオ"かも)
そういう系譜の上で考えると、今回の特例措置は非常に『ヒーロー』の定義をよく踏まえた王道展開であり、強さと優しさを不可分なものとして描く文脈にしっかり則った話運びだったと思います。

見た目が醜いものでも、心は美しい人間と同じように、もしくはそれ以上に柔らかく傷ついていて、愛されることを待っている。
普段から愛々言っているこのアニメが、特に落ち度もなく、報われない環境で心を追い込まれてしまった青年の成れの果てにどう対応するかは、かなり大事なところだったと思います。
いつものようにぶん殴って終わっても、それはそれで綺麗に浄化されていたんでしょうが、今回選択されたのは『ちょっと可愛そうで殴れないから、殴らない』というクリスマス特例。
一見『ヒーロー物』のお約束をひねったように見えて、『ヒーローはなんのために戦うのか』という真実に一番近い答えをここで出してきたのは、俺凄く良かったと思います。
普段から共感能力の高い有基だけじゃなくて、クールでマイペースな他の防衛部員も優しい気持ちで矛を収めて、プレゼントを交換して一緒に楽しんで終わったところが、すげー優しくて好き。

今回も人間として正しすぎることをしっかりやったのは強羅のあんちゃんで、別府兄弟にそうしたように、心よく異形の客を迎え、同じ飲み物を差し出し、相手の辛さを拒絶せず受け入れる姿勢を見せています。
特別な能力など必要としないけど、何よりも難しく強く優しいこの姿勢を身近で見ている有基が、最適な回答をしっかり導き出しているのは、箱根兄弟の間にある好ましい影響が強く感じられ、凄く良かったです。
あんちゃん、美男子にもキモいトナカイにも一切差別せず、自分が用意できる最大限のものを差し出してるからな……あとひと知れないところで働き続けるって意味では、あんちゃんもトナカイと同じだから痛みがわかったってことかもしれん。
どっちにしてもあんちゃんは、今クールの"聖人(エル・サント)"勲章を"orange"の須和くんと争ってるね、俺の中で。

有基は別府兄弟にも、すげー積極的に話しかけてたからなぁ……優しいし強いよ、そういう態度ゆう。
しい奴の背中を見てきたから、有基は優しく正しい選択が出来るんだなぁ。
そういう意味では、おんなじものを見てきて歪んじゃってる別府兄弟も、トナカイ怪人と同じ救いが必要ってことかね。
あんちゃんに魂を救われた兄貴分として、有基の優しさが別府兄弟に届いて、真心でつながったブラザーに別府兄弟がなる話、マジ早く観てーなーマジよー。
……別府兄弟の手編みセーターという『真心』が、有基のところに届いてたのは今後を先取りした演出ってことかねぇ。

トナカイ怪人がねじ曲がるまでの過程に結構時間を使い、彼なりの努力や周囲の無理解、愛を求める必然性がしっかり描かれていたのも、防衛部が起こした奇跡の意味を高める上で、とても大事でした。
『外見は醜いが、こいつもお前と同じ、涙も流せば愛も欲しい人間だ! さぁ殴れるかヒーロー!!』という問いかけを目に見える形でやることで、『いえ、顔は関係ないし殴れません。シャンパン飲みます?』という『ヒーロー』のひねった答えが必然性のあるものとして立ち上がってくるわけで、中居さんの熱演も報われるというものだ。
人知れず報われない働きを続けるのは、匿名無名の『ヒーロー』たる防衛部も同じだしな。
あとわりかし良い話なのに、性夜ネタを振った後執拗に赤く屹立する鼻を画面真ん中に置き続けるのは、このアニメらしいと思った。
まぁ露骨すぎるほどに男根のメタファーでしたねアレ……高松監督ホント好きだなああ言うの。
おう、俺も好きだよ!!


そんなわけで、聖夜の優しさが起こした奇跡を柔らかい笑いとともに見せる、非常に良い話でした。
聖別された暴力で殴り倒すのではなく、防衛部も別府兄弟もトナカイ怪人も強羅あんちゃんも、みんなが真心を尽くした正しい行動をした結果奇跡が起こるという〆方は、本当に素晴らしかった。
俺こういう直球の良い話に、ほんとよえーな……素晴らしかったです。

シリーズ等しての攻略対象である別府兄弟の柔らかい地金も分かってきて、なんだか話が収まる場所がどこにあるのか、うっすら見えてきた感じです。
この後もダラダラとした男子高校生ライフで楽しませてもらいながら、スカシた顔のロンリエスト・ベイビーたちとどう心を通わせていくのか。
非常に楽しみです。