イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

クロムクロ:第20話『飛んで火に入る虎の口』感想

青い地球を護るべく立ち上がったサムライたちの物語、今週は決戦宇宙鬼ヶ島。
一度膝から崩れ落ちても、20話分『戦場』で鍛え上げられタフになった由希奈がガンガン動きまわって情報を集め、ムエッタも己の真実を求めてエフィドルグと決別、剣ちゃんも『お前を守る』という約束を果たすべく全力全開。
一方その頃、ソフィーちゃんは地上で鬼のおじさんと物語の本質に関わる熱いトークを繰り広げるのであった……というお話。
フィドルグの狙いと組織概要、ゼルの正体と過去、SF的入れ替わりトリックを解くヒントと、気になっていたところがドバっと出てくる転換点でした。
お話が進んでいるのと同時に、『何が心残りなのかすらも解らない』普通の高校生だった由希奈がどれだけタフに育ったか、剣之介とお互いどれだけ思いやっているかもよく感じ取れて、充実感と今後への期待が両立するエピソードでした。

お話のおおまかなラインとしては、剣之介&ムエッタの呉越同舟連合による由希奈奪還作戦と、ソフィーちゃんの『教えて! エフィドルグ!!』が同時並列進行。
これまでちらほら見せてきた疑問にかなり直線的に答える話で、いろんな事が明らかになりました。
逆に言うと、敵の狙いが20話すぎるまで明らかにならなくても、メインキャラクターの精神的変遷を丁寧に追いかけることで、アニメは面白く見せれるってことなんだろう。

箇条書きで解ったことをまとめますと
・いま来ているエフィドルグは先遣偵察隊であり、本隊の勢力はこの1000倍以上
・要石はワープゲートのキーとなるアイテムで、これを回収することで本隊を呼び込める
・エフィドルグの狙いは地球の完全隷属、自分たちの価値観に従った世界の構築
・ゼルはエフィドルグに滅ぼされた存在の生き残り、戦う理由は復讐と反抗
辺りでしょうか。

黒部にある枢石が奪われた瞬間、敵本隊がワイプアウトして地球は制圧されるわけで、黒部を守る理由がより強化される情報開示だといえます。
逆に言うと、先遣隊さえ潰せれば、ゼル由来のオーバーテクノロジーでGAUSを強化し、本隊の襲撃に備えることも出来そうであり、お話の落とし所が明確になった感じですね。


明言されていない部分/謎が深まった部分だと
・どうやら人間3Dプリンター的な技術と記憶の焼付技術を組み合わせることで、任意の記憶や精神を持ったコピー人間を製造可能
・ムエッタは雪姫をベースにしたコピー人間であり、ミラーサに秘密通路の認識ができなかったことから考えると、レフィル以外のメンバーもコピー人間か?
・この期に及んでレフィルの兜を外さない理由
・剣之介にコピー人間技術が応用されているかは不明
・450年前の詳細
・ゼルはなぜ岳人の時計をしているのか
辺りが不透明なままの部分ですね。

レフィルがムエッタの情報開示を拒む頑なさや、作りかけの不気味な雪姫ヘッド、これまでの情報を統合的に判断すると、ムエッタ=雪姫コピーに意識情報を流しこんだコピー人間なのは間違いがなさそうです。
ミラーサが3D人間工房への通路を認識できなかったのも、真相を隠蔽するべくコピー人間には認識できないプロテクトをかけているからでしょう。
とはいえ、前回チョトっと見えたムエッタの記憶やら、序盤から引っ張ってる450年前の事件の詳細は謎のままですが。
地上に剣之介が帰ってきて、ゼルと対面して話す時が更に情報が見えてくるタイミングですかね。

もう一つ疑問なのは、ソフィーに情報を開示してくれたゼルの言葉を裏付ける証拠が一切なく、彼の告白を真実と受け取っていいか、結構不穏なところです。
外見に似合わぬ冷静さと清廉さを併せ持ったゼルは、好感のもてる良いキャラに育ったと思うので、ここで裏切られるとショックが大きいというか、『いや……それあんま嬉しくない……』って展開ではあるけど、どう使ってくるかなぁ。
敵の本拠が降りてきて、まさに最終決戦ってシチュエーションなんだけども話数は結構あるので、もう一捻りしてくるならゼルかなぁって気はすんだよね……捻らず素直に流す可能性も高いけど、このアニメだと。

しかしこんだけ科学技術で圧倒(出入り口の描写を見るだに、任意の重力制御を余裕でこなしている)しているのに、人数の少なさと人間を甘く見続ける慢心、任務よりエゴの充足を優先する浅ましさのおかげで、エフィドルグに勝つ目が見えない。
嘘ついた挙句ノータイムで殺しに来て、しかも失敗してウロウロ探しまわるムエッタの浅はかさとか、なかなか見れないブサイク加減だと思う。
フィドルグがそういう低劣種族なのか、コピー人間は程度が下がるのか、未だ仮面を外さないレフィルがなんか企んでいるのか、そこら辺が見きれないなぁ。
話数に余裕はあるので、じっくり進めていただきたいところだ。

そんな風に情報の洪水が押し寄せる中、主に女達のドラマもいろいろと進んでいました。
一回はか弱いヒロインのように『宇宙とかマジ無理……』と弱音を吐いた由希奈ですが、『戦場』に巻き込まれたり逃げ出したり向かい合ったり、色々あった日々を思い出して立ち上がり、自分の力でどうにかしていました。
第12話の特訓合宿回が直接的に生きてくるスニーキング・ミッションは、ボーデンさん好きにはありがたい展開でしたし、オペレーター稼業の経験が生きた情報収集も、強みを活かした感じがあって好き。

由希奈が『戦場』を前に逃げ出さなくなったのは、やはり『戦場』からやってきた剣之介とともに歩んできた日々あってのものだねであり、それまでさんざんアマゾネスしてたのに剣之介を見た瞬間決壊しちゃうのは、それだけ心を許した存在になってるからでしょう。
一度は拒絶した『刀』という剣之介の象徴を手にして、ミラーサのハァハァ斬りを捌いていたところは、いまどき高校生とサムライが絆を育むアニメの真骨頂とも言えるシーンでして、なんか見てて充実感があったな。
剣之介も虎口に飛び込む決意を固め、(彼の中での)雪姫と行動をともにすることで、自分がなにを手に入れたいのか、どの約束を守りたいのかハッキリした感じもあって、お互い強く求め合う関係性がキマくっていた。
時間かけて関係を構築しただけあって、盤石だよなぁ由希奈&剣之介……素晴らしい。

そんな二人に割り込める立場に一応陣取る二人の女は、しかし自分に課せられたミッションの方を優先していました。
雪姫ことムエッタは身体的アイデンティティをレフィルに問いただして裏切り者扱いされ、ソフィーちゃんはゼルと対話して情報を集め、今後の展開を左右しそうなUSB貰ってました。
これでムエッタは人類サイドに身を寄せざるを得なくなったけど、無辜の作業員さんの首折ってるからな……生存フラグ的には黄色信号だ。

先週は出されていなかったお茶を一緒に飲んでいる所は、口にするものを大事に描くこのアニメらしい、ソフィとゼルの関係性変化の象徴でしたね。
今描写されている範囲のゼルは、USBや横文字言葉などの『平和な現在』に適応した時空の旅人であり、守るために戦うサムライなわけで、剣之介と非常に似通ったキャラクターと言えます。
『高校生』という外見と社会的立場を手に入れやた剣之介が、一歩一歩間合いを詰めて『現在』に受け入れられ、カレーを食うどころか自分で作るところまで行ったのに対し、鬼の外見をしたゼルは社会の外側からひっそり見守るしかなかったのは、ちと面白い差異だと思います。
敵の本拠も攻めてきて、ゼルのUSBを活用せざるを得ない状況が迫ってますが、さてはて優しい鬼のおじさんの本性は白か黒か。
ゼル好きなんで、白だと良いなぁ……。


そんなわけで、様々な謎が解消されつつ、新しい謎もモリっと出てくるお話でした。
一回引き離されたおかげで主人公カップルの絆は深まったし、因縁の相手はこっちの岸にやってきたし、敵の本拠地は吶喊仕掛けてくるし、話も一気に進んだなぁ。
敵とされていたものが味方となり、秘密とされたものが事実に変わった後に、何がやってkるのか。
決戦の次回をどう描いてくるのか、楽しみに待ちたいと思います。