イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

初恋モンスター:第8話『奏電話相談室』感想

アホとバカとマジ恋の間を高速反復横跳びして進むラブコメディ、今週は追いかけて金沢。
失って初めて恋の意味を知った奏と彼を受け止め導く大人たちが、ネタまみれになりつつ愛を取り戻すために奔走するお話でした。
嵐のブレーキを取っ払ったクソ変態っぷりで笑いを取りつつも、恋を知って大人になりかけた奏をしっかり受け止める敦史が頼もしく、手応えのある展開でした。

という訳で今回は、小学生っぽいアホ力で彼女を袖にしてきた奏が、自分の本心とその対処法に気付く回。
バカガキが独りでできることではないので、バカな大人がしっかりサポートし、バカ過ぎてコースアウトしないようにしっかり導いてくれました。
こういう時、性格最悪すぎてアホギャグに混ざれない敦史の特権は、いい仕事をしてくれますね。

散々ネタをぶっこみつつも、主役たちの恋心には嘘をつかず、茶化さず、きめ細かく描いてくれるこのアニメの真面目さが、僕は好きです。
なので、これまでただの形でしかなかった『恋人』を失って始めて、寂しさや痛みを実感して大人になる奏の姿、それを助けようと蠢く優しい人達の姿、初めての感覚に戸惑う奏に道を示す敦史の姿は、非常に良いものだった。
これまでさんざん笑いを取ってきた『小学生男子のアホさ加減』が、奏の精神的成長を際立たせる差し色として機能しているのは、シリアスとコメディがハードコアに共存するこのアニメらしい表現だなと思ったね。

正直奏がアホバカ小学生すぎて、『夏歩のこと、あんま特別に思ってないのかな?』と疑問に思いもしたわけですが、それが真正面から否定されたのも良かった。
『彼氏/彼女』という関係は幾らでも仲良くなれる『友達』とは違う、特別な誰かを選びとり大切にする関係。
『お前じゃなきゃダメなんだ』という気持ちがあってこその恋愛なわけで、特別な感情を知ることで仲良し子供グループから一歩抜きでた瞬間が綺麗に描かれていたのは、恋愛モノとしてだけではなく、少年の成長モノとしても良い描写だったと思います。

奏はお母さんの思い出を大事にしながら、悪意やネガティブな感情から遠いところで生きてきました。
だから『誰か一人を特別に選ぶ』という行為をあまり良いものとしては捉えていなくて、それが夏帆の『大人』な恋愛観と軋轢を生んだ一因だと思っています。
馴染みがない感情に奏は戸惑い、実感のない聞きかじりで夏帆に接して道を踏み外しかけますが、いざ実際に分かれてみたら、『誰か一人を特別に選ぶ』感情は奏の中にちゃんとあって、『夏帆がいない世界は地獄だ』という実感を生む。
それに対処するべく、生きている大人たちはちゃんと助言をくれて、奏が自分の感情を正しい場所に位置づける導きをしてくれる。
圧倒的なネタの圧力に負けず、恋が生む精神的成長の過程をしっかり描いているのは、主人公が10歳であることを笑い以外でもしっかり活かした話運びで、とてもいいなと思います。


今回は子供らしい純粋さで常に一番大切なものを見つけてきた奏が、道に迷うお話。
夏帆が迷った時は奏が支えてきたけども、その奏が迷った時はどうすんの? という問いに対し、みんなで支えるという答えをしっかり出していたのは、人情味があって素晴らしかったです。
常に正解し続ける『天使』は物語的にありがたい存在だけど、あまりにも完璧すぎて自分自身の物語を持たないわけで、ここで答えを見失い痛みを感じることで、奏は成長の余地を残した等身大の少年足りえる。(いや背は不必要にでけーけどさ、そういう話ではなく)

夏歩がいない世界を『地獄』だと感じるのは、常に綺麗な世界の中で生きてきた少年にとって初めての経験のはずで、そういうネガティブさに伴う混乱を受け止めつつ、これから何をするべきか導いた敦史は、いい仕事した。
嵐や耕太だとどうしてもネタ方面に引っ張られていく傾向があるので、アホな騒ぎをニヒルに見つめてきた敦史が軌道修正するのは、良い配役よな。
『いい加減小学生力に引きずられすぎて、恋心から逃げるのやめろ』とツッコミを入れられるのは、あのアホバカな世界では彼だけなわけで、そういうコントロールがしっかり機能しているのは、コメディ一辺倒で胸焼けするのを防ぐ意味でも大事だと思います。
あと判りやすい男ツンデレ、俺好きですよ……。

そして言うても、ネタのアクセルベタ踏みっぷりは相変わらずなんだけどな。
今回は特に嵐がまさに嵐の如き大暴れで、『ツダケンまじ楽しそー』ッて思った。
あの人性欲と仁愛が完全に切り離されてるのが逆に生々しくて、制御出来ない性欲をそれはそれとして使いこなしてる頭の良さ、一歩間違えたら犯罪者だなって思った。
ショタに発情し続けるゴミクズ人間でありつつ、『好きなら好きってちゃんと言え、ナァナァで流さず正面から気持ちを伝えろ』という正解を教えてくれる辺り、面白いギャップのあるキャラだよね。

あとなんで弱ペダパロだったんだろう……『やりたいからやる、それだけだ』ってスタッフではあるが。
冒頭の唐突なロボットモノも、ちゃんとバリ本人を呼んでバリバリさせてたのが手抜きなくて良かったです。
笑いを取りたければ真顔でやりきんないと、やっぱダメだなぁ……そういう意味では、シリアスなロマンスをしっかりやっていればこそ、コメディ部分が映えるのだろうな。
これは逆もそうで、コメディ部分のネタ力から一気に真面目になることが、不思議な面白さを生んでいると思います。


そんなわけで、無垢な少年が己の心に気づき、大人や友人たちがそれを支え導く成長物語でした。
嵐のクソ変態っぷりとか見てるとそういう良い話オーラは一切見えないが、大筋的にはこれでオッケーなんだよ!
これまで『形』でしかなかった奏の初恋に痛みが宿って、当事者性が高まったのは非常に良かったね。

恋には障害がつきものというわけで、こっからは実家に帰った夏歩を取り戻す展開になりそう。
顔を見せていない夏歩の兄貴も、このアニメに相応しい元気なキャラ(気を使った表現)っぽいしなぁ。
北国金沢でぶつかり合う心と心、ネタとネタがどこに行くのか、非常に楽しみです。