イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

あまんちゅ!:第7話『雨のおわりのコト/夏のはじまりのコト』感想

日常ときどきダイビングときどき面倒くさい思春期のウダウダ、折り返しの第7話は先生視点でお送りします。
梅雨のあじさい、真夏の遊戯といった、日常の中の他愛のない輝きを見つけ出し、価値を再発掘するお話でした。
時間も場所もバラバラな話なんだけど、先生という語り部、『本気で遊べ』というメッセージが共通していることで、緩やかなまとまりが生まれてる話でしたね。

つうわけで、『黒髪めんどくさ女の、自意識コンバットログ』として続いてきた前半戦は一旦お休みし、語り部役を順に回していく群像劇にシフトしたアニメあまんちゅ!
主観を担当するキャラクターが変われば世界の見方が変わり、つまり物語自体が変わるわけですが、今回のメインは火鳥先生。
これまでも見せていた成熟した人格と、ポエジー溢れる素敵マニアっぷりが相まって、てことは違ったテイストの切り口が生まれていました。

今まさに成長真っ最中、面倒くさい自意識育成中のてこに対し、そういう面倒くさいのは一応"浪漫倶楽部"で終わらせたのが先生。
成熟した人格で子どもたちを導く立場にいるわけですが、しかしそれは、感受性が乾燥しきって発見や変化がない、ということを意味はしない。
不思議で美しいもの、子どもたちが教えてくれる新たな世界に対して常に目を見開き、柔らかな喜びを常に言葉にするフレッシュな感性は、火鳥真斗の中で今でも生きています。
そういう瑞々しさをエピソードの中で活写できていればこそ、『大人だって学べる』というメッセージには血が通い、死んだ言葉ではなく活きた描写として機能するわけです。

今回語り部を先生に移し、モノローグ含めた内面の描写、行動を導き出す価値観の描写を濃い目にやれたのは、一応本筋と言える『てこの成長物語』を分厚くする意味でも、大きな意味があります。
キャラクターは物語的・社会的役目を背負うと同時に、独自の行動原理を持った人格でもあるわけで、行動を生み出す内面に踏み込むことは、『この人はこういう考えを持っているから、この行動を取ったんだ』と納得がいく。
元々ナイーブな作品なので、てこの視点から展開している時にも各キャラクターの内的原理はしっかり感じ取れたわけですが、視点を動かして直接的に描くことで、よりはっきり、より強く見えてくるものがある、ということですね。


そうして見えてきた火鳥真斗は、なんでもない日常の中に輝きを積極的に見つけ、それを他人と共有することに熱心な人物でした。
梅雨と真夏、2つのエピソード両方を貫いているのは『本気で遊べ』『楽しいを積極的に共有しろ』という意識でして、これは主題である『ダイビング』にも関係する視点です。
『ダイビング』にしても『だるまさんがころんだ』にしても、わざわざ生活圏から離れてあじさいを見に行く行為にしろ、ただルーチーンを生きていく上では必ずしも必要とはいえない、『遊び』です。

しかし『遊び』には、不必要だから片手間で良いという態度では味わい尽くせない人生の妙味が詰まっていて、そこに本気になることでどれだけ人生が潤っていくかを描くのが、このお話の真ん中にはある。
これまではてこがぴかりと出会い、おずおずと『遊び』に本気になっていく様子を主に描いていたわけだけど、今回はそんなてこを『遊び』に導く側がどういう考えと価値観を以って、『遊び』を捉えているかを描く回だったと思います。
無邪気に『遊び』を楽しむ子どもたちに比べ、『遊び』の楽しさを拡散し、それに本気でのめり込む結果として生まれてくるものを見据えているところが、火鳥先生が『教師』たる所以かな。

『遊び』それ自体の価値を高く捉え、人生を潤す効果は本気で取り組んだ後の結果と考えているのも、『遊び』と『人生』を切り離さない、良い見方だと思います。
どれだけ真剣に『遊』んだとしても、腹も膨れず金も儲けず、目に見える形での利益は出ません。
しかしその無目的性・非生産性(に見えるもの)にこそ『遊び』の楽しさがあったりするし、そういう目的性から距離をおいているからこそ『遊び』は楽しいとも言える。
『遊び』の結果何が生まれるかを見極める『大人』の分別と、自分も本気で『遊』べてしまう『子供』っぽさを併せ持った火鳥先生を主役に据えることで、『遊び』をめぐる物語を切り取るアングルが増えて、立体感が出た感じがします。

てこの整理しきれていないエゴと戦い続けたお話に比べると、今回のお話はスッキリした印象を受けました。
ジメジメした梅雨やうだる熱さの夏が舞台なのに爽快感があるのは、年齢と経験を積み重ね、自意識との格闘戦を一応勝利した『大人』が主役だったからでしょう。
逆に言うと、あのジメジメ女がどれだけ作品の湿度を上げているかって話なんだけど、主役からは外れつつ、『オープン・ウォーター・ダイビング』というクライマックスに向けてじっくり練習を重ねる姿も、抜け目なく描写されていました。
前回の構成から考えても、アニメはてこがみんなと海に潜るシーンで最大の達成感を与えるよう組まれていると思うので、そこに向けて説得力を積んでいくのは大事よね。
しかしスク水のてこは丸いなぁ……服着てる他の女の人達も、みんな見事なRを有してるけどさ。


と言うわけで、主役の青春肉弾戦を一旦お休みし、『大人』でもあり『子供』でもある火鳥先生を主役に据えたお話でした。
人生の一コマをサラッとスケッチする筆、前向きなメンタリティ、強い目的意識。
主役が変われば当然移り変わる物語の色を強く打ち出し、あまんちゅ! の魅力をまた別の角度から映し出すエピソードだったと思います。

火鳥先生に続いての語り部は、どうやら姉ちゃん先輩のようで。
捌けた態度とパワフルな牽引力が魅力の元気娘が、一体どんな事を考え、何を理由に行動しているのか。
話のバリエーションを増やすだけではなく、そういう部分にも切り込んでいけるので、この後半のオムニバス形式、結構良いと思いますね。