イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

初恋モンスター:第9話『ひそやカニ♡ラブソング』感想

気は優しくてパワー系、奇人変人達の暴走ラブ・ロマンス・アニメ、今週は越前恋愛決戦。
出会って別れて再び出会う正統派恋愛物語っぽい展開を、バカネタとパンチの変態で和えてお出しする、いつもの初恋モンスターっぽいお話でした。
『だるまさんがころんだ』に『ピアニカ・ラブソング』と、やってることは全力でフザケてんだけど、やっぱそこには否定しきれない真心と純情と悩みがあって、笑いつつ湿った気持ちにもなれる。
相変わらずのトンチキ加減で奏の赤心を叩きつけれた夏歩は、頑なな心を緩めてラブラブに戻れるのか、来週が気になるヒキでした。
……いや「じゃあ、聞いてくれ」からの(なんかマッチっぽい曲。ピアニカ吹きつつどう歌ったかは謎)はドラマ以外の意味でもインパクト十分だったけどね……やっぱ真顔でやり切るのは、笑いにおいては大事だなぁ・

今週一番目立っていたのは、やはりエピソードゲストである超絶シスコン汚物・大谷。
いちいち生々しい変態描写とこけしを交えつつ、奏の恋心を試す障壁としての仕事をしっかり果たしてくれました。
唾液が付着したアイテムを集めるところまでは、まぁ百歩譲ってよくいる二次元変態描写でいいんだが、夏歩の出汁を2リットルペットで大量に確保するところと、ピンセットで陰毛収集するところが生々しいエグさだった。
他の連中も強烈なので、こんくらいキャラ立てないと埋もれるからな……緑川さんの怪演も相まって、立ち過ぎなくらい立ってた。

恋には試練がつきものというのは、立ちはだかる障壁を乗り越えることでキャラクターの本気っぷりを見せるというか、試されないモノに真実味は宿らないというか、そういう創作的意味合いがあります。
そこで出てくるのがド変態シスコン兄貴であり、『だるまさんがころんだ』であり、『ピアニカ・ラブソング』なのがこのアニメのセンスであり独特の味付けなんだけど、試練としての機能とそこに込められている感情自体には、嘘がない。
壁役からの問いかけ、恋人同士の問いかけをしっかりキャッチボールすることで、キャラクターの心情に分け入って問題点を探し、その解決策を模索するやり取りを怠けないのは、このアニメの強みだなと思いました。
トンチキなことをしながら重要な気持ちをやり取りするのは、ちょっと"少女革命ウテナ"っぽいアヴァンギャルドさを感じて、個人的な感性にもピピっと来ましたし。


壁役という意味では敦史は本当にいい仕事をしていて、『10歳でイケメン』という奏の根本的キャラ設定を壊すことなく、物語上必要な行動を選ばせ、本心と真心を表面化させる良いトスを上げています。
『母親の言いなりである』『なんでもネタ重視で押し流してしまう』『感情からではなく、形式から恋愛ごっこをしている』などなど、憎まれ役だからこそ可能なシャープなツッコミをしっかり入れることで、奏が抱えている問題点は顕在化し、それを乗り越えることで成長も果たしてきた。
バカ過ぎて自分では正解を選びきれない奏を補佐し、ラブ・ロマンスに真剣味を与える上で絶対必要な真実にちゃんとたどり着かせ、二人が出会ったあとも核心を突く問いかけで感情を掘り下げる。
最初ただの意地悪ドSキャラかと思っていた敦史は、今や彼がいないと物語が成立しない、立派な進行役になってくれています。

そんな彼が夏歩に度を超えた意地悪するのが、可愛い子ほどいじめちゃう小学生マインドの発露だってことも分かりましたが、まぁそうだよね。
敦史もオカンにこじれた感情抱いた結果夏歩に引き寄せられたので、マザコン小学生を引き寄せるあま~い匂いが夏帆から出てるんだろうな。
悪人を演じつつ、敦史が弟分たる奏を本気で思いやってくれてる姿も描写されてきたけども、ここでヨリが戻ったあとに兄弟分で恋愛最終決戦すんのかね。
俺は敦史と奏でのトンチキで暖かい関係が好きなので、修復不可能なくらい真正面からぶつけるのは勘弁って感じですけども……まぁメインカップルが気持ちを確かめ合うために、急に歌うアニメだからそこら辺は大丈夫か。

三人の男(全員難アリ)に愛されすぎて参っちゃう夏歩ですが、信じたい愛したいでも信じ切れない、まるで王道ラブコメの主役みたいな悩ましい心境を奏と共有してました。
アホみたいな理由ですれ違い、フラフープ失敗で別れたバカな二人がよりを戻すのが、『だるまさんがころんだ』という『遊び』なのは、個人的には凄く良かった。
あの時は小学生らしく絶対のものだった『遊び』が、敦史や友人とグダグダ色々やった結果不可侵のものではなく、それより大事にしたい気持ちにたどり着いていると見せる上で、あの頭弱い試練は大事なのだ。
『奏にとって死んだママンが神聖化されすぎ問題』をもう一度ツッコむ所含めて、ネタまみれながらも物語要素の捌き方が的確で、感情を揺らして戻すお話として堅牢なのが強いよね、このアニメ。


長くてアホな旅路の果てに、アホな試練を乗り越えて心を確かめ合った二人。
もともと好き合っていたので収まるべきところに収まったとも言えますが、まぁアホはアホなんで更に引っ張る可能性もないわけじゃあない。
バカ小学生とアホ高校生のカップルが好きな身としては、そろそろすれ違いをやめてお互いの真実に素直になってくれると嬉しいですけど、来週が気になるヒキでした。

こうして考えてみると、『素敵な彼氏と形式的には恋人にはなって、でも個性のすれ違いがあって信じられなくなって、お互い距離をおいて心を確かめ合い、再び出会い直して本心からの恋を手に入れる』っていうストーリーライン自体は、むっちゃくちゃオーソドックスで固い作るなんだよなー。
恋を磨き上げる上でどれだけ試練が重要か把握しているアニメが、いい感じに収まりつつあるロマンスにどういう波風を用意してくるか。
ネタの火力だけではなく、そういう方面でも来週の放送が楽しみです。