イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アクティヴレイド -機動強襲室第八係- 2nd:第8話『異邦人は風のなか』感想

やりたい放題はっちゃけポリスがロボで戦うアニメ、今週は超直球のドシリアスエピソード。
瀬名くんと犯人の重ねあわせ方、バカ話の隙間でじっくり見せてきた世界設定、情感のある小ネタの使い方。
全てが気持ち良く連動して、スマートでビターな読後感と完成度の高さを生み出す、重たく図抜けた名エピソードでした。
前回みたいなハジけた話もできれば、今回みたいな腰を落としたオーソドックスもやれるんだから、芸達者なアニメよねほんと。

今回はまるで刑事ドラマみたいな、切なく答えのない物語でして、『俺たち、こういうのもしっかりやれるよ?』という製作者の目配せを、ズドンと食らった感覚です。
キャラクターを瀬名くんと犯人に思い切り絞ることで、男二人の不器用な共感がどっしりと話の真ん中に座り、テロ事件の奥に秘められたやるせなさが重たく響く、腰のしっかりした展開でした。
やっぱこういうベッタベタな人情話は良い、凄く良い。

ベタな人情話を成立させるためには色んな技巧が必要なのですが、細かい道具の使い方がとにかく上手かったですね。
『ゴミ』『空き缶』『雨』というフェティッシュが繰り返し使用され、場面ごとに別の意味を持ってくるところもグッドだし、『空き缶の風車』という風変わりで詩情のあるアイテムで、巧くシナリオヒロインを立てたところも良かった。
こういう細かい所で情が掻き立てられるからこそ、『刑事と犯人、平和な国と戦乱の国の交流とすれ違い』というクサい本筋がわざとらしくならず、ぐっと胸に迫る仕上がりになっていました。

瀬名くんと犯人の重ねあわせ方も非常に巧くて、似たもの通しだからこそ惹かれ合い、治安協力者とテロリストに分かれていってしまう切なさを、巧く強調していました。
几帳面なエリートで情が深く、頭が良くて生真面目な正義感。
立場を超えて重なりあい、真っ直ぐにお互いを見てしまう二人の姿は、どこか似たところのあるデザインでもしっかり表現されていました。
似ているがどこか違う2つのシャドウが寄り添って離れていく物語ってのは、オーソドックスながら説得力と美しさがあって、やっぱ僕は好きだな。

『清掃会社の社長である』『社員に移民がたくさんいる』という、瀬名くんに二期になって付いた要素をしっかり活かしたのも、お話が楽しくなる妙手でした。
潔癖症が憎むべきゴミに分け入る立場になる』ってのが、清掃と移民両方にかかってるのが巧いよね……昔みたいに、理屈だけ振り回して『ゴミ』を掃除すれば良い立場には、民間の苦労を知った瀬名くんは戻れないわけだ。
これらの要素はコメディの合間に描写され、笑いを伴ってスッと視聴者に入った設定です。
それが非常にシリアスでヘヴィな今回のお話で背景として活用され、『なぜ瀬名くんは、今回の事件に入れ込んでいくのか?』を言外に説明する仕事をする。
作品全体にしてもキャラの要素にしても、『これはこういうものだ!』という思い込みが気持ち良く裏切られる瞬間というのは、物語を咀嚼する上で一番大きな楽しみの一つですね。


今回はチラホラ見せてきた世界設定を一気に回収する回でもあって、液状化現象で結構荒廃している東京の現状とか、作中日本の移民行政とか、バードのバックでもあるカルパヌバ公国であるとか、ドサッと出てきました。
トンチキポリスの大暴れコメディで楽しませつつも、このお話の背後になるSF的、刑事ドラマ的設定は相当にしっかりしたもので、それは合間合間の描写からも感じ取ることが出来ます。
しっかり作りこんだ土台を過剰に誇るのではなく、その上に様々な物語が乗っかる足場として使いこなす作品が、あえて土台自体を見せに来た感じですね。

移民行政にしても、カルパヌバとの外交にしても、警察の一部署にすぎないダイハチには手が余る、大きな問題です。
組織のフレームを超えた問題を見送るしか無い歯がゆさは、例えば二期第1話とか第6話でも強調されたテイストであり、作品に刑事ドラマらしい苦味を加えると同時に、終盤での爆発に繋がるフラストレーションを生んでもいます。
今回のお話は非常にやるせない結末を迎えましたが、バードの背後に公国がいる以上、いつかは正面から相撲を取る相手。
切なさを込めた終わり方になったことで『カルパヌバ公国』は視聴者の心に刻まれたわけで、今後上手い使い方をして欲しいなと思います。

メインは瀬名くんだったんですが、黒騎さんが非常に良い使われ方をしたのも印象的でした。
一見熱血漢とクールガイのコンビに見える二人ですが、その実クレバーで現実主義的なのは黒騎さんで、情に流されやすいのは瀬名くんだったりする。
ここら辺の対比を釘を差しに来るシーンでしっかり見せつつ、『犯人にあまり共感するなよ?』という黒騎さんの言葉が後々の展開を暗示するという、テクニカルな組み立てでした。
稲城との過去をイメージさせる意味では、ヤクザとの過去を匂わせるやり取りも巧く効いていましたね。
今回瀬名くんが体験した切ない物語を、傍観者だった黒騎さんも通過しなきゃいけない予感を巧く作ってたのは、エピソード単品としての仕上がりをシリーズ全体に活かす、見事な業前だったと思います。


と言うわけで、シリーズ全体を通しても類を見ないくらいに、笑いと息抜きの少ない重たいお話でした。
だからと言って重苦しいわけではなく、コメディで培った人間心理の描写をシリアスにも活かす、自分の武器を解った作りだったと思います。
色んな楽しみを軽妙にお出ししつつ、作品を支える土台をどっしり作りこむ。
エンターテイメントとしてのこのアニメの強さを、また一つ認識できるエピソードでした。
良い話だったなぁ、本当に。