イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

チア男子!!:第8話『絆のご来光』感想

熱い男たちの青春ゴツゴツ煮込み、今週はガチ勢VSエンジョイ勢解答編。
不満をタメにタメまくった尚史が発した『やめます』を、みんなでなんとか引き止め合宿に持ち込む回でした。
硬すぎやる気出すぎな尚史が自分を解体して歩み寄る話としては良かったんだけど、彼がストレスを感じる原因となった部分は正直彫りが浅くて、問題が解決したのかしてないのか、いまいちハッキリしない収め方になっちゃった気がします。
作品的には、なんとなく一体となったムードが出たからそれでOK……なのかな?

尚史の角のある言い回しと過剰なやる気が、チア部の空気をどんどん悪くしていく過程は前回も今回も上手く書かれていました。
マイナスポイントをハッキリさせると、それが取り除かれれば状況が改善されるというロジックを明確に組めるので、ガンガンいらんこと言ってバンバン空気を悪くするのは、前進のための第一歩。
トンやハルが受け皿になることで、尚史のやる気の悪い面が上手く抜けて、BREAKERSに新しい力が加わるって流れも前向きでいいと思います。

しかし今回の話は尚史だけが悪いわけではなく、『ムードメーカー』や『お調子者』通り越して『怠け者』にしか見えないタケルにも責任の一端がある。
尚史が自己反省を言葉にし、歩み寄る姿勢を具体的に描写されていたのに対し、タケルが今回の事件でどう変わったのか、過去の自分をどう思っていたのかはほぼ描写されませんでした。
僕には、これは片手落ちの描写にしか見えなかった。
硬すぎる尚史が柔らかくなるよう、自分を壊す努力をして場が改善したのと同じように、柔らかすぎるタケルがどこかで真面目さを見せ、己を反省するシーンが必要だったのではないかと思うのです。

明らかに非があるものとして描かれているタケルの行動を改めないまま話を進めるのは、視聴者(というか僕)の印象も悪いまま進んでしまうし、お話やキャラクターの描写をしっかりやり尽くしてくれるという作品への信頼感も弱まってしまうので、もったいないなぁと感じました。
今回の描き方だと、尚史だけが譲歩してワリを食ったように思えちゃうんだよな……それとも製作者としては、タケルの行動は改善する必要のない『善』として描いてたの?


尚史とタケルの対立は、『真面目にやりたい』と『気楽にやりたい』という2つの『楽しさ』がすれ違った結果でもあります。
それは個人の問題であると同時に、多様な人間を受け入れつつ一つの方向を目指さなければいけない組織の問題でもあって、組織を運営する側(つまり旧メンバー)の問題でもある。
尚史とタケル両方の意見を受け入れつつ、『予選突破』という目に見える目標を達成するべく、不満点がうまく流れる水路を整えられるかっていうことも、今回のエピソードで大事なところだったと思うわけです。

しかし今回お話の中心にいたのはあくまで尚史で、ハルやトンが個人的に先輩らしさを発揮する場面はあっても、BREAKERSという一つのまとまりが共通の意識を持ったと感じられる場面は、正直なかったように感じました。
個人の問題であると同時に組織の問題でもある『空気の悪さ』を、一端を背負うタケルも、空気が流れるBREAKERS自体も掘り下げることなく、尚史個人の人格的問題の解消で解決し(たことにし)てしまうのは、ちと説得力が足らない展開ではないかと、僕は思ってしまいました。

おそらく制作側の意図としては、公園で本音(?)を語り合ったシーンでタケルや組織の問題も解消させに行っているのだろうけど、足を止めてじっくり描写するシーンがないため、いつの間にか終わってしまった感じが拭えない。
これは後半合宿に繋いで話を圧縮するために、尚史とタケル周りのエピソードに使える時間が短かったのもあるんでしょうが、ちと駆け足に過ぎた感じもあります。
そういう時間の使い方をするなら、尺の短さを補うだけの作画や演出のカロリーが必要だったとは思うけど、これは無い物ねだりでしょう。

合宿自体は試練として描かれていた『スケジュール調整の難しさ』を埋めて予選突破の説得力を出す、なかなか良いイベントだと思います。
『予選突破』という明確な目標がある以上、それを乗り越える説得力を積むのは大事で、みっしりチア漬けになる時間があるのは展開的に安心できる。
解決の過程の描き方はさておき、『空気の悪さ』の解決自体はしたんだと見せる上でも、共同生活が上手くいってるシーンを見せるのは必要だしね。
しかしそこに繋げるためにはやっぱり物語の地ならしが急すぎて、『BREAKERS一丸となって合宿に挑み、実力をつけた!』という結論を素直に飲み込むには、引っかかる部分が多い話運びとなりました。


と言うわけで、ガチ勢尚史とエンジョイ勢タケルの対立は、一応の決着を見ました。
二部で増えた人数の多さ、描かなければいけない場所の広さを巧く捌けず、自ら提起した問題を掘り下げきれなかった印象です。
まだフォローアップが効く範囲だと思うので、後付でも今回の騒動でタケルが何を学び、どう変わったのかを一瞬でも描写してくれると、ビッとエピソードが〆る気が済んけど……どうなるかなぁ。